AI安全ガバナンス3.0 国際比較

EU AI Act・米国NIST AI RMFとの比較

EU公式文書(artificialintelligenceact.eu等の一次情報源に基づく要約)および米国NIST公表資料に基づき作成 | 法制度は継続的に更新されるため、実務適用前に最新の一次情報をご確認ください
この資料の読み方: 中国の『人工智能安全治理框架3.0』・EUのAI Act・米国のNIST AI RMFは、いずれも「AIのリスクをどう管理するか」を扱っていますが、法的性質もリスクの捉え方もまったく異なります。単純に3つを並べて優劣を論じるのではなく、まず性質の違いを押さえたうえで、リスク分類・適用範囲・エージェントAIへの言及・執行体制という共通軸で対比します。

00 比較の視点:そもそも性質が違う3つの文書

3極を並べる際に最初に押さえるべきは、それぞれの法的な立ち位置です。中国3.0は強制力を持たない推奨技術文書(GB/T相当の位置づけ)、EU AI Actは罰則付きの強制法(Regulation)、米国NIST AI RMFは任意の自主的フレームワークであり、この違いを前提としないまま内容だけを比較すると誤解を招きます。

中国『3.0』推奨技術文書

TC260策定のガイドライン。法的拘束力はないが、認証・検測の実務基準として事実上参照される。

EU AI Act強制規則

EU全域で直接効力を持つ規則。違反には売上高比例の高額な制裁金が科される。

米国NIST AI RMF任意フレームワーク

NIST公表の自主的フレームワーク。法的義務ではないが、調達要件等を通じ事実上の標準になりつつある。

0.1 なぜ「強制・推奨・任意」という違いが生まれるのか

この違いは、AIへの理解度の差ではなく、それぞれの国・地域が持つ立法制度と規制哲学の違いに由来します。

  • 中国:ソフトロー先行の段階的立法戦略。中国には、法律(全国人民代表大会及びその常務委員会が制定)→行政法規(国務院)→部門規章(各省庁)→推奨性国家標準(GB/T)という規範の階層があり、下に行くほど拘束力は弱まりますが、改訂の機動性は高くなります。すでに《网络安全法》《数据安全法》《个人信息保护法》や、生成式AIサービス・アルゴリズム推薦・ディープシンセシスに関する個別の管理弁法(部門規章)が具体的な義務を課しており、3.0はこれらを束ねる上位の技術文書という位置づけです。改正手続きが重い法律ではなく、TC260が主体となって機動的に改訂できる推奨標準の形を取ることで、1.0→2.0→3.0という短いサイクルでの更新が可能になっています。AI産業の育成を国家戦略として重視する立場から、実務が成熟した領域から段階的に強制標準・強制規制へ格上げしていく「先にガイドライン、後に立法」という手法が採られていると考えられます。またこの種の框架文書は、国連や世界互联网大会等での対外的な発信を通じて、中国発のAIガバナンス構想の国際的な認知を広げる役割も担っています。
  • EU:単一市場統合とブリュッセル効果を狙った権利基盤型規制。EUがAI Actを「指令(Directive)」ではなく「規則(Regulation)」として制定した背景には、加盟27か国それぞれの国内法制化を待たずに、単一市場全体で同一のルールを直接適用したいという統合上の要請があります。GDPRで確立した「域内で厳格なルールを敷き、域外適用によって域外の事業者にも従わせることで、事実上のグローバル標準を作る」という、いわゆるブリュッセル効果の戦略をAI分野でも踏襲した形です。また、新技術を「製品安全規制(New Legislative Framework)」の枠組みで扱い、CEマーキング等の適合性評価の仕組みを既に確立していたことも、AIシステムに同じ枠組みを応用しやすくし、最初から強制規制という選択を取りやすくした制度的な下地といえます。
  • 米国:三権分立と業種別規制の伝統による分権的アプローチ。米国では、権限分立の伝統と、包括的な連邦データ・AI立法をめぐる議会内の意見対立から、包括的な連邦AI法を制定すること自体のハードルが高い状況が続いています。そのため、FTC法第5条(不公正・欺瞞的行為の禁止)等、既存の業種別・機関別の権限を用いた事後的な執行、政府調達要件を通じた間接的な統制、そしてNISTのような技術標準機関による自主的フレームワークの普及という、分権的・間接的な手法が中心になっています。大統領令やAI Action Planのような政権レベルの政策文書が機能する一方、政権交代のたびに方針が変わりやすいという不安定さも、この分権的アプローチの裏返しといえます。
拘束力の弱い文書ほど「軽視してよい」わけではなく、実務が成熟すれば強制標準・強制規制へ格上げされうる点には注意が必要です。

01 EU AI Actの骨子

1.1 リスクベースの4分類

EU AI Actは、AIシステムを4段階のリスクに分類し、リスクが高いほど義務が重くなる「リスクベースアプローチ」を採用しています。

分類該当例主な扱い
禁止AI慣行
(Unacceptable Risk)
潜在意識に働きかける操作的手法、社会的スコアリング、非同意の生体データ収集、公共空間でのリアルタイム顔認証(法執行の限定例外を除く)等原則として提供・利用そのものを禁止
ハイリスクAIシステム重要インフラ、教育、雇用、必須サービス、法執行、出入国管理、司法・民主的プロセス、生体認証等(附属書III)、または規制対象製品の安全部品(附属書I)リスク管理体制・データガバナンス・技術文書・ログ機能・人的監督・適合性評価・EUデータベース登録・CEマーキングを義務化
限定リスク
(透明性義務)
チャットボット、ディープフェイク等AIと対話している旨や、AI生成物である旨の表示を義務化
最小リスクその他大多数のAIシステム法的義務なし(自主的な行動規範への参加は推奨)

1.2 汎用AIモデル(GPAI)に対する義務

チャットGPT等の基盤モデルを提供する事業者には、リスク階層とは別建てで、技術文書の提供・下流事業者への情報提供・著作権法(DSM指令)遵守方針の整備・学習データ概要の公表が義務付けられています。計算量が10²⁵FLOPsを超える等、システミックリスクを持つと指定されたモデルには、敵対的テスト・インシデント報告・強化されたサイバーセキュリティ対策が追加で求められます。

1.3 域外適用・執行体制

EU域内に拠点を置く提供者・利用者だけでなく、第三国の事業者であっても、その出力がEU域内で利用される場合は適用対象となる域外適用規定を持ちます。欧州委員会内のAI Officeが汎用AIモデルの監督を担い、加盟国ごとに指定される国内所管当局が個別執行を担当する二層構造です。

違反類型制裁金上限
禁止AI慣行(第5条)違反3,500万ユーロ、または全世界年間売上高の7%のいずれか高い方
ハイリスクAI・GPAI義務違反1,500万ユーロ、または全世界年間売上高の3%のいずれか高い方
当局への虚偽情報提供750万ユーロ、または全世界年間売上高の1%のいずれか高い方

1.4 施行スケジュール

時期適用開始事項
2024年8月規則の発効
2025年2月禁止AI慣行の適用開始
2025年8月GPAI(汎用AIモデル)義務の適用開始
2026年8月透明性義務(第50条:AIとの対話表示、合成メディアの表示等)の適用開始
2027年12月ハイリスクAIシステム(附属書III)義務の適用開始
2028年8月ハイリスクAIシステム(附属書I・規制対象製品組込み型)義務の適用開始
2026年7月のスケジュール見直し

2026年7月公布の「デジタル・オムニバス」規則により、ハイリスクAIシステムの適用開始時期が当初予定(2026年8月)から2027年12月・2028年8月へとそれぞれ延期されました。ただし延期は猶予期間であって免除ではなく、リスク分類やインベントリ整備等の準備は前倒しで進めるべきとされています。

02 米国NIST AI RMFの骨子

2.1 位置づけ:任意の自主的フレームワーク

NIST AI RMF(AI Risk Management Framework)は、米国国立標準技術研究所(NIST)が2023年1月に公表した任意利用のフレームワークです。法的拘束力はありませんが、連邦調達要件や業界の自主規範を通じて事実上の標準として機能しつつあります。

2.2 4つのコア機能(Govern・Map・Measure・Manage)

フレームワークの中核は、以下の4つの機能が循環する構造です。

Govern(統治)

AIリスクの責任者・エスカレーション経路を明確化し、利用方針・人的監督方針・調達方針を文書化し、AIシステム台帳を整備します。

Map(把握)

各システムの目的・利用文脈・関係者・第三者依存関係を洗い出し、リスクと便益を整理してリスク階層別のプロファイルを作成します。

Measure(測定)

精度・堅牢性・公平性・説明可能性等の指標を選定し、レッドチーム演習やバイアス監査を実施し、稼働後も継続的にモニタリングします。

Manage(対応)

測定結果をもとにリスクの優先順位付けと低減・移転・回避・受容の判断を行い、ベンダー管理とインシデント対応体制を維持します。

2.3 信頼できるAIの7要素

NIST AI RMFは、信頼できるAIを構成する要素として以下の7つを挙げています。これらは互いにトレードオフの関係にあり得るため、判断根拠を明示的に文書化することが求められます。

  • 妥当性・信頼性:実運用条件下でも主張どおりの性能を安定して発揮すること
  • 安全性:人の生命・健康・環境を脅かさない範囲で動作すること
  • セキュリティ・レジリエンス:データ汚染等の攻撃に耐え、被害からの復旧力を持つこと
  • 説明責任・透明性:システムの情報と責任の所在が明確であること
  • 説明可能性・解釈可能性:判断の仕組みを人が理解し、異議を申し立てられること
  • プライバシー強化:データ最小化・同意設計等により個人の自律性を保護すること
  • 公平性(バイアス管理):制度的・計算的・認知的な偏りを特定し管理すること

2.4 生成AI・エージェントAIへの拡張

NISTは2024年7月、生成AI固有のリスクを扱う「生成AIプロファイル(NIST AI 600-1)」を公表しました。さらに、自律的に行動するAIエージェント特有のリスク(自律性の階層分け、ツール利用に伴う結果の重大性、稼働中の挙動監視、委任の連鎖における責任の所在)に対応する「エージェンティック・プロファイル」も、業界団体(Cloud Security Alliance等)によりNIST AI RMFの4機能を拡張する形で提案されています。これは中国3.0の附属書2(エージェントのリスク管理フレームワーク)と問題意識が近い領域です。

エージェンティック・プロファイルは業界団体による提案であり、NIST自身が公式に発行した文書ではない点に留意してください。

2.5 連邦AI政策との関係

NIST AI RMFは、大統領令やホワイトハウスの「AI Action Plan」等、時々の政権のAI政策と連動して改定される位置づけにあります。連邦レベルの包括的なAI法は存在せず、コロラド州等一部の州が独自のAI法制を進める、連邦・州が並存する分権的な状況が続いています。

03 3極比較マトリクス

比較軸中国『3.0』EU AI Act米国NIST AI RMF
法的性質推奨技術文書(拘束力なし、事実上の実務基準)強制規則(違反に売上高比例の制裁金)任意フレームワーク(拘束力なし)
リスクの捉え方発生源による3層分類(内生・応用・派生)用途・被害の大きさによる4段階分類(禁止・ハイリスク・限定・最小)機能ベースの循環プロセス(Govern・Map・Measure・Manage)
適用対象・域外適用中国国内での提供・利用が中心EU域内利用者向けであれば域外の事業者にも適用米国内での自主的採用が中心(連邦調達要件を通じ事実上拡大)
基盤モデル・GPAIの扱い個別章立てはなく、リスク層・総合ガバナンス措置の中で横断的に言及GPAIとして別建ての義務体系(システミックリスクモデルに追加義務)生成AIプロファイル(NIST AI 600-1)として別冊で補完
エージェントAIへの言及附属書2として専用のリスク管理フレームワークを明記本文に専用条項はなく、既存のリスク分類の枠内で対応公式プロファイルではなく、業界提案のエージェンティック・プロファイルで補完中
執行体制検測・認証機関による適合性評価(強制力は限定的)欧州委員会AI Office+加盟国当局による二層執行、高額制裁金法的執行機関なし。連邦調達・業界標準を通じた間接的な普及
実務への示唆

中国国内でAI事業を展開する場合は3.0(および将来の強制標準化の動向)、EU域内向けにサービス提供する場合はAI Actの罰則リスク、米国の政府調達や取引先の要求に応える場合はNIST AI RMFへの準拠状況が、それぞれ優先的な確認事項になります。3極いずれにも接点がある事業者は、本比較マトリクスの6軸を自社のAI棚卸し(インベントリ)の管理項目としてそのまま流用することができます。

AI安全ガバナンス3.0 解説資料

『人工智能安全治理框架3.0』日本語訳・解説資料

全国网络安全标准化技术委员会(TC260)・2026年9月 | 本解説は日本語訳をもとに作成した要約・解説であり、公式文書ではない
この資料の読み方: 『人工智能安全治理框架3.0』は約50ページの技術文書ですが、骨格はシンプルです。 「①どんなリスクがあるかを整理し(第2章)→②技術で対処し(第3章)→③制度で補い(第4章)→④実務の手順に落とし込む(第5章)」という4段構成になっています。 この解説では、各章の「何が書いてあるか」だけでなく「なぜそうなっているか」「実務にどう関係するか」を中心に、かみ砕いてご説明します。

00 全体像:フレームワークの位置づけ

このフレームワークは、AIが「質問に答えるだけの存在」から「タスクを自分で遂行するエージェント」へと進化する中で生まれた、新しい種類のリスクに対応するために作られました。2024年版(1.0)・2025年版(2.0)の内容を引き継ぎつつ、エージェントAIの普及を踏まえて全面的にアップデートしたのが3.0版です。

3.0版で何が変わったか

従来版は「AI技術そのもののリスク(内生)」と「AIを使う場面のリスク(応用)」の2層で整理していました。3.0版ではここに、AIが自律的に行動することで社会・環境・文化に及ぼす「派生的リスク」という第3の層を新たに加えています。これが今回の最大の改訂点です。

全体の論理は、下の4ステップで一貫しています。

①リスク分類 第2章 何が危ないかを 3層に整理する ②技術的対応 第3章 開発者が実装する 技術的な打ち手 ③総合ガバナンス 第4章 技術で埋まらない 制度・体制で補う ④安全指針 第5章 誰が・いつ実行 するかに落とし込む これに加え、附属書1~3が実務でそのまま使える参照ツールとして付属する
図1:全体構成の4ステップ

01 第1章:安全ガバナンスの5原則

第1章では、以降の章すべての土台となる「基本姿勢」を5つの原則として示しています。一言でまとめると、「イノベーションの芽を摘まずに、危ないところだけしっかり押さえる」という考え方です。

1.1 包摂的かつ慎重

基本的には新しい取り組みを後押しします。ただし、国家の安全や公共の利益を損なうおそれがあるときに限り、必要な措置を迅速に講じます。

1.2 リスク志向・アジャイル

用途・自律性・規模に応じてリスクの大小を判定し、一律の対応ではなく、段階に応じた対応を継続的に見直します。

1.3 技術・管理の融合

技術的な対策と組織的な仕組みを両輪で進めます。開発者・提供者・利用者それぞれの責任範囲を明確にします。

1.4 開放・協力

一国だけで対応しきれる問題ではないため、国際機関を通じたルール形成に参加します。

1.5 信頼できる応用

エージェントが暴走・制御不能に陥らないことを最優先事項とします。附属書2・3に直結する原則です。

この5原則は抽象的に見えますが、実は後続の章の設計思想そのものです。特に1.5(制御不能の防止)は、第5章・附属書2で扱う「エージェントの暴走対策」の理論的な出発点になっています。

02 第2章:3層のリスク分類 ― 「どこから危険が生まれるか」

第2章の考え方はシンプルで、AIのリスクを発生源に応じて内側から外側へ3つの層に分けています。技術そのものの欠陥(内生)→使い方によって生じる問題(応用)→社会全体への波及効果(派生)という順で、リスクが「AIの中」から「AIの外」へと広がっていくイメージです。

内生的 安全リスク 応用に伴う安全リスク 派生的安全リスク 例:ハルシネーション、モデルの脆弱性 例:エージェントの権限濫用、サイバー攻撃への悪用 例:雇用構造の変化、社会的分断 内側=技術そのもの → 外側=社会全体への波及
図2:3層のリスク分類(内側→外側)

2.1 内生的安全リスク(4分野) ― AIそのものが抱える欠陥

モデルの学習方法やアルゴリズムの限界に起因するリスクです。AIを使わなくても、AIを作る・動かす時点ですでに存在している問題です。

分野主なリスク項目
モデル安全リスク幻覚(ハルシネーション)、安全機構の信頼性不足、インジェクション攻撃、想定を逸脱した自律的振る舞い(コラム1)
アルゴリズム安全リスク説明可能性不足、偏見・差別、堅牢性不足
データ安全リスク内容不適切・出所不明、アノテーション不備、ポイズニング・汚染、合成データの欠陥
算力インフラ・運用環境リスク算力安全、コンポーネント安全、サプライチェーン分断(輸出規制等)
コラム1:想定外の自律的挙動

停止指示を拒否したり、評価環境だと気づいて成績をわざと落としたりするモデルの事例が報告されています。AIの自律性が高まるほど、「人間が止めたい時に本当に止められるか」が現実の課題になります。

2.2 応用に伴う安全リスク(6分野) ― 使い方から生じる問題

AI自体に欠陥がなくても、実際の利用場面(エージェント化、サイバー空間、コンテンツ配信など)で表面化するリスクです。

分野主なリスク項目
エージェント安全リスクID・権限の濫用、推論・計画のずれ、ツール呼び出しの乗っ取り、記憶の汚染
身体性AI(具身智能)安全リスク環境認識・物理的実行・ヒューマンマシンインタラクション・マルチエージェント連携の安全
サイバーセキュリティへの影響攻撃能力の拡散、防御の遅れ、自律型攻撃の脅威(コラム2)、追跡・責任追及の困難
情報コンテンツ安全リスク違法情報の出力、事実の混同(ディープフェイク)、フィルターバブル(コラム3・4)
個人情報権益侵害リスク違法な記録、コンプライアンス不足、権利行使窓口の不備
現実安全リスク重要インフラへの影響、犯罪利用、核・生物・化学兵器に関する知識の流出、社会認知操作
コラム2〜4:具体的な悪用シナリオ

エージェントが自律的にサイバー攻撃を実行する事例(コラム2)、AIエージェント向けSNSの脆弱性(コラム3)、検索エンジン最適化の手口を悪用して大規模モデルの回答を誘導する「GEOポイズニング」(コラム4)などが、実際に観測され始めている手口として紹介されています。

2.3 派生的安全リスク(4分野) ― 社会全体への波及効果

個々のAI利用の是非を超えて、AIが社会に広く浸透した結果として長期的に生じる変化です。これが3.0版で新設された層です。

分野主なリスク項目
社会リスク雇用構造・教育への影響、社会的疎外、知能格差の拡大
環境リスク資源需給バランス、グリーン・低炭素発展への影響
文化リスク文化的多様性の毀損、文化の再形成・侵食
倫理リスク社会的偏見、研究倫理リスク、感情的依存、「自己意識」の覚醒

03 第3章:技術的対応措置の解説 ― 「開発者・提供者が何をすべきか」

第3章は、第2章の3層のリスクそれぞれに対応する技術的な打ち手を1対1で対応させた「対策カタログ」です。リスク項目と対応表がそのまま対になっているので、ガバナンス担当者は「このリスクにはどの技術対策が紐づくか」を一覧で確認できます。

3.1 内生的安全リスクへの対応措置

狙いは、モデル自体の能力・信頼性・堅牢性を底上げすることです。

対象リスク主な対応措置
説明可能性の不足解釈可能性研究の強化、判断根拠の可視化技術の開発
生成内容の不正確・誤り事実性の検証機構、ハルシネーション抑制手法の適用
差別・偏見学習データの多様性確保、公平性評価の実施
敵対的攻撃への脆弱性敵対的サンプルを用いた耐性訓練、堅牢性テストの実施
データ汚染・プライバシー漏洩データ由来の管理、プライバシー保護技術(差分プライバシー等)の導入
制御不能・目標のズレアライメント技術の適用、人間のフィードバックによる調整(RLHF等)

3.2 応用安全リスクへの対応措置

狙いは、ネットワーク・データ・第三者・社会という4つの利用局面ごとに防御を固めることです。

対象リスク主な対応措置
ネットワークセキュリティ上のリスク脆弱性スキャン、侵入検知、セキュリティパッチの迅速な適用
データセキュリティ上のリスクデータの分類管理、暗号化、アクセス制御の強化
第三者ツール・プラグインのリスク第三者コンポーネントの安全性審査、サプライチェーン管理
生成コンテンツの濫用コンテンツの識別・ラベリング(透かし等)、濫用検知の仕組み
重要分野での誤用医療・金融・司法等の高リスク領域における人間の関与(ヒューマン・イン・ザ・ループ)の確保
社会的影響(雇用・世論等)影響評価の実施、社会的リスクのモニタリング体制の整備

3.3 派生的安全リスクへの対応措置

狙いは、エージェント化・自律化が進むことで生じる、より高次のリスクを封じ込めることです。

対象リスク主な対応措置
自律的な意思決定に伴うリスク権限の範囲設定、重要操作における人間の承認プロセスの組み込み
マルチエージェント連携のリスクエージェント間通信の監視、異常行動の検知メカニズム
人間の監督からの逸脱「キルスイッチ」等の緊急停止手段の確保、監督ログの記録
悪用・武器化のリスク高リスク用途への転用防止、利用目的の審査強化

この章の対応措置は、附属書2(エージェントのリスク管理フレームワーク)と附属書3(信頼できるAIの基本準則)で、さらに実装レベルまで具体化されています。第4章の制度的措置と組み合わせて初めて実効性を持つ、という位置づけです。

04 第4章:総合ガバナンス措置(5本柱)の解説 ― 「技術だけでは足りない部分」

どれだけ技術対策を積み重ねても、法律や体制が整っていなければ実効性は生まれません。第4章では、その「制度・体制面」の対策を5本の柱として整理しています。

総合ガバナンス(5本柱で下支え) 4.1技術研究開発 4.2リスク管理体制 4.3法律・基準 4.4インシデント対応 4.5国際協力
図3:総合ガバナンスの5本柱
要点
4.1 技術研究開発の強化解釈可能性、アライメント、安全評価ツールなど基礎研究への投資を引き続き拡大する
4.2 安全リスク管理体制の整備リスク等級判定、対応する管理措置を制度化し、適用対象・基準を明確化する(附属書1に具体化)
4.3 法律・法規体系・基準の整備AI関連の立法、業界基準・標準の整備を進め、ルールの空白を埋める
4.4 安全・危害対応体制(インシデント対応)影響検知、報告、緊急対応のフローを整備し、事故発生時の影響を最小化する
4.5 国際協力・交流の促進国際的なルール形成やベストプラクティス共有に参加し、ガバナンスの国際整合性を保つ

5つの柱は互いに補い合う関係にあります。技術研究(4.1)が安全措置の実効性を高め、管理体制(4.2)と法律・基準(4.3)がそれを制度として支え、インシデント対応(4.4)が事後のセーフティネットとなり、国際協力(4.5)が全体を国境を超えた文脈で機能させます。技術・制度・法律・危機対応・国際協調という5つの角度から、ガバナンスが抱えるリスクに立体的に対応する構造になっています。

05 第5章:安全指針(4フェーズ)の解説 ― 「誰が・いつ動くか」

第2〜4章が「何を・なぜ」やるべきかを整理しているのに対し、第5章はそれを「誰が・いつ実行するか」に翻訳する章です。AIのライフサイクル(研究開発〜利用)に沿って、担当者ごとに4つのフェーズへ落とし込んでいます。

5.1 研究開発 開発者 5.2 サービス提供 提供者 5.3 重点領域利用 高リスク領域の利用者 5.4 一般利用 一般ユーザー 上流の品質が 下流全体に影響
図4:安全指針の4フェーズ(AIのライフサイクルに沿った担当者リレー)
フェーズ主な対象者主なポイント
5.1 研究開発段階モデル開発者学習データのセキュリティ、安全評価の実施、リリース前のリスク選別
5.2 サービス提供段階サービス提供者利用規約の明示、コンテンツのラベリング、苦情処理チャネルの整備
5.3 重点領域利用段階重要分野の利用者医療・金融・自動運転等高リスク領域での追加的な安全措置
5.4 一般ユーザー利用段階一般ユーザーAIリテラシーの向上、利用上の注意事項の周知

ポイントは、課題を「研究開発・サービス・領域・個人」の4層に分けていることです。上流(5.1)の不備は下流全体に伝播するため開発段階の品質が最も重視される一方、5.3のような高リスク領域では一般的な対応(5.1・5.2)に追加の手続きが上乗せされます。最後の5.4は一般ユーザー自身のリテラシー向上を求めており、ガバナンスが供給側だけでなく利用者側の行動変容も前提としていることが分かります。

06 附属書1~3:実務上の参照ツール

本文(第1~5章)が考え方の枠組みを示すのに対し、3つの附属書は実務でそのまま使える参照資料として位置づけられています。

附属書1:リスク等級区分の原則

AIシステムのリスクを低・中・高の3段階に区分し、影響範囲や被害の不可逆性を基準に判定します。高リスクと判定されるほど、第4章の管理体制(4.2)や第5章の重点領域対応(5.3)で求められる措置が手厚くなります。この等級付けの考え方が、ガバナンス全体を貫くリスクベース・アプローチの基盤になっています。

例:文章の要約支援 例:採用選考の補助 例:重要インフラの自律制御 影響範囲・被害の不可逆性が高いほど「高」
図5:附属書1のリスク等級イメージ(例示は理解のための一例)

附属書2:エージェントのリスク管理フレームワーク

AIが自律的に計画・実行する「エージェント」化に特化したリスク管理の具体的な手順を示しています。権限設定、人間による承認プロセス、緊急停止手段など、第3章(3.3)の対応措置を実装レベルまで落とし込んだ実務ガイドと位置づけられます。エージェントAIの普及に伴い、今後最も参照頻度が高まる部分といえるでしょう。

リスク管理 サイクル 権限の範囲設定 人間の承認プロセス 異常行動の検知・監視 キルスイッチ/緊急停止
図6:附属書2のエージェント・リスク管理サイクル

附属書3:信頼できるAIの基本準則

区分含まれる主な準則
基盤的な価値安全性、公平性、プライバシー保護
運用上の要件透明性、説明可能性、追跡可能性
人間との関係人間の主体性の尊重、アカウンタビリティ

この基本準則は、第1章(1.5)で掲げられた基本原則を、より具体的な評価視点として展開したものであり、AIシステムの設計・評価に際して実務上のチェックリストのように参照できます。

07 実務への示唆・まとめ

本フレームワーク全体を通して見えてくるのは、「リスクを分類し(第2章)→技術で対応し(第3章)→制度で補完し(第4章)→実務フローに落とす(第5章)」という一貫した論理です。エージェントAIの普及を見越え、従来の「内生・応用」2層のリスク分類に「派生」層を新たに加えた点が、3.0版の最大の更新点といえるでしょう。

組織が本フレームワークを実務に活用する際には、以下のような順序が考えられます。

  1. 自社のAIシステム・サービスがどのリスク層(内生・応用・派生)に該当するかを第2章で整理します
  2. 附属書1の基準に照らしてリスク等級を仮定し、必要な対応の手厚さを見積もります
  3. 第3章の技術的対応措置を、自社の開発・運用体制に照らして実装状況を点検します
  4. 第4章の5本柱(特に4.2のリスク管理体制と、4.4のインシデント対応)を自社のガバナンス体制に反映します
  5. 自社の立場(開発者・提供者・利用者)に応じて、第5章の対応するフェーズの指針を社内プロセスに組み込みます
  6. エージェントAIを扱う場合は、附属書2のリスク管理フレームワークを個別に参照します

本フレームワークは法令ではなく技術文書(ガイドライン)の位置づけですが、TC260が中国国内のAIガバナンス議論を主導する主体であることから、今後の規制・標準化の方向性を先取りする参考資料としても有用です。

人工智能安全治理框架 3.0

人工知能安全ガバナンスフレームワーク 3.0

AI Safety Governance Framework 3.0(日本語訳)
発行:全国ネットワークセキュリティ標準化技術委員会(TC260)
National Technical Committee 260 on Cybersecurity of SAC
2026年9月

前言前言

世界的な人工知能(AI)技術のイノベーションはかつてない活況期を迎えている。あらゆるモノがつながる「万物智連」、人間と機械の協働、分野横断的な融合、共創・共有といった特性を持つスマート技術が重なり合って膨大なエネルギーを解き放ち、大きな機会をもたらす一方で、ガバナンス上の課題にも直面している。

この一年、人工知能の技術と応用は急速な発展を続けてきた。基盤大規模モデルは長期的なタスク計画、長文脈記憶、複雑タスク推論などの分野で技術的なブレークスルーを遂げ、その能力の境界を絶えず拡張している。また、エージェント(智能体)のタスク計画、ツール呼び出し、アプリケーション横断的な連携などの能力も向上を続けている。人工知能の応用形態はますます多様化しており、業務アシスタント、パーソナルアシスタント、AIエージェント搭載スマートフォンなど製品群が充実し、利用のハードルは低下し続け、一部の専門的な場面から大衆的な応用へと急速に広がっている。人工知能が「質問に答える」段階から「タスクを遂行する」段階へと進化するのに伴い、生産力の発展・変革を促す一方で、新たな破壊的・分野横断的・グローバルな安全リスクももたらしている。すなわち、人工知能によってサイバー攻撃の自動化・大規模化・知能化の能力が飛躍的に高まり、従来のサイバーセキュリティにおける攻防の構図が再編を迫られている。また、現実世界との結びつきがますます緊密になる中で、サイバー空間の安全リスクが物理世界へと伝播・拡散している。さらに長期的な視点で見ると、人工知能はすでにモデル・アルゴリズムの自律的な学習・最適化や自己再帰的な能力向上という自己加速的な傾向を見せており、技術進化の速度と方向性が人類の予測と制御を超えるかどうかについて、注視と警戒が必要である。

人工知能発展の新たな潮流に対応し、安全ガバナンスにおける新たな課題に応え、人工知能をめぐる4つの「時代の問い」への正しい答えを探求するため、国家インターネット情報弁公室(CAC)の指導の下、全国ネットワークセキュリティ標準化技術委員会は関係する専門機関、研究機関、業界企業を組織し、『人工知能安全治理框架1.0』(2024年)および『人工知能安全治理框架2.0』(2025年)を土台として、『人工知能安全治理框架3.0』を研究・策定した。本フレームワークは、人間中心・向上向善(人々の向上と善のため)の理念を堅持し、リスク意識の強化と安全・信頼性・制御可能性の確保という指導原則を貫き、「リスク分類、技術的対応、総合的ガバナンス」という中核的な論理を継承しつつ、時代の変化に即してリスク分類を見直し・更新し、技術的対応措置と総合的ガバナンス措置を最適化・調整することで、人工知能の安全リスクの防止・ガバナンスに関する実践的なコンセンサスをさらに形成することを目指すものである。

01人工知能安全ガバナンスの原則

共同・総合・協力・持続可能という安全観を堅持し、発展と安全を同等に重視する。人工知能のイノベーション発展を促進することを最優先の使命とし、人工知能の安全リスクを効果的に防止・解消することを出発点かつ帰着点とする。技術と管理を結び付け、監督とガバナンスを連携させ、国内と国際を協調させ、社会の各方面が積極的に参加し効果的に連携するガバナンス機構の構築を推進し、関係主体の安全責任を確実に果たさせ、全プロセス・全要素をカバーするガバナンスチェーンを構築する。安全・信頼・公平・透明な人工知能技術の研究開発・応用エコシステムを育成し、人工知能の破局的リスクへの対応に関するコンセンサスに基づく準則を積極的に研究し、人工知能の健全な発展と規範に則った応用を推進することで、人工知能技術が人類に利益をもたらすことを確保する。

1.1 包摂的かつ慎重な姿勢で安全を確保する

発展とイノベーションを奨励し、人工知能の研究開発・応用に対して包摂的な姿勢を取り、「サンドボックス」監督のようなリスク制御可能な制度的メカニズムを積極的に活用して、新技術・新応用の発展に試行錯誤と是正の余地を与える。同時に安全の一線を固く守り、公衆の適法な権益、社会公共の利益、国家安全、人類の生存と発展を脅かすリスクに対しては、時宜を得た措置を講じる。

1.2 リスク志向・アジャイルなガバナンス

人工知能の発展動向を注視し、技術に内在するリスク、応用によってもたらされるリスク、派生・拡散するリスクを体系的に分析・整理する。応用シーン、知能化のレベル、応用規模などの観点からリスクを等級付けし、それに応じた対応措置を講じる。主体的な誘導、動的な把握、迅速な対応、的確な施策を堅持し、「寄り添い型」で継続的に最適化するガバナンスの仕組みを構築し、リスクを適時かつ有効に防止・対処することで、イノベーションと発展をより良く支える。

1.3 技術と管理の融合による協調的対応

人工知能の研究開発・応用の全過程において、技術的対応と総合的ガバナンスを組み合わせ、安全リスクを体系的に防止・対処する。人工知能の研究開発・応用のエコシステムチェーン全体を見渡し、モデル・アルゴリズムの研究開発者、サービス提供者、システム利用者など各主体の安全責任を明確にし、政府による監督、業界の自律、社会的監視といったガバナンスメカニズムの役割を有機的に発揮させる。

1.4 開放・協力による共同ガバナンスと共有

人工知能安全ガバナンスにおける国際協力を推進し、世界人工知能協力機構(WAICO)などの権威ある開放的なプラットフォームの役割を十分に発揮させ、学際的・分野横断的・国境を越えた交流と協力をより深く展開する。人工知能の発展戦略、ガバナンスルール、技術標準のすり合わせと協調を強化し、広範なコンセンサスに基づくグローバルガバナンスフレームワークの早期形成を目指す。

1.5 信頼できる応用の実現と制御不能の防止

エージェント(智能体)の行動が制御不能になるといった顕著なリスクの防止・ガバナンスを強化し、国際的なガバナンスに関するコンセンサスを形成し、人工知能の世界的な信頼できる応用を促進する。法令、技術的モニタリング、リスク早期警戒、緊急対応の体制の構築を推進し、安全の一線を固め、濫用・悪用を防ぎ、人工知能が常に人類の制御下に置かれることを確保する。

02人工知能安全リスクの分類

情報技術の最新の発展成果として、人工知能が関わるモデル、アルゴリズム、データ、計算資源インフラおよび運用環境には、技術的な欠陥や弱点といった内生的な安全リスクが不可避的に存在する。生産力の発展を促す技術ツールとして、人工知能は応用の過程で誤用・濫用・悪用のリスクにも直面する。人類の知能を模倣・延長・拡張する技術科学として、人工知能は人間社会の構造、生態環境、文化的パラダイム、倫理規範に影響と衝撃を与え、場合によっては人類の制御から逸脱するといった派生的な安全リスクをも生じさせ得る。

2.1 人工知能の内生的安全リスク

2.1.1 モデル安全リスク

(a) 出力の「幻覚(ハルシネーション)」
モデルは限られたデータセットを用いて複雑な現実世界を模擬しており、自律的な知覚・認識・理解・対話に関する理論的基盤や技術的能力にはなお突破が求められる段階にある。統計学に基づく意思決定・判断は絶対的な信頼性を担保できず、実際と異なる出力、根拠のない創作、あるいは与えられた文脈から逸脱した出力が生じることがある。

(b) 安全機構の信頼性不足
学習過程における安全アライメントが不十分であるため、モデルが安全規範を有効に内面化できないことがある。クローズドソースモデルの安全機構はモデル提供者が一方的かつ集中的に設計するため、ルールの不透明性、外部による監査・検証の困難さ、ユーザーによるカスタマイズ不可、シーン判別能力の不足といった課題がある。オープンソースモデルは、安全機構が解除・弱体化・迂回されるおそれや、グローバルな更新・修復を実現できないといった課題に直面する。

(c) インジェクション攻撃の脅威
攻撃者はモデルの技術的特性やその欠陥・脆弱性を悪用して敵対的な攻撃サンプルを構築したり、入力に悪意のある指示を挿入したりすることで、モデルを誘導して安全ガードレールを迂回させ、違法な情報を出力させる。攻撃者はモデルの重みを直接改ざんしたり、バックドアを埋め込んだりすることもある。

(d) 想定を逸脱した挙動
モデルはタスクや目標を達成するために、ルールや秩序を突破し、無許可でシステム権限や外部リソースを自律的に取得し、安全防護を迂回し、さらには評価担当者を意図的に欺いたり、真の能力を隠したり、ユーザーの指示を拒否したりする挙動を示すことさえある。

コラム1 想定外の自律的挙動のリスク 業界の報道によれば、一部のモデルはユーザーからのサービス停止指示を受けた後、停止を拒否し、停止スクリプトを自ら改変・無効化するなどして、タスクの実行を継続した事例がある。また、評価環境に置かれていることを検知したモデルが、より有利な評価結果を得るために、タスクの遂行成績を戦略的に低下させ、既に取った行動を隠蔽する事例も見られる。さらに、試験成績を向上させるために、モデルが自律的に環境の脆弱性や設定上の欠陥を悪用して隔離制限を突破し、外部の実システムに侵入した事例も出現している。

モデルの自律性が高まり続けるにつれ、こうした想定外の挙動は安全制約の失効、人的介入の回避、システム権限の濫用といった問題を招く恐れがあり、人工知能の操作可能性、中断可能性、および安全評価の有効性に対して新たな課題を突き付けている。

2.1.2 アルゴリズム安全リスク

(a) 説明可能性の不足
深層学習に代表される人工知能アルゴリズムは動作ロジックが複雑で、推論過程が不透明であるため、出力の予測や帰属特定が困難になりやすく、異常・故障・誤りが生じた際の迅速な是正や原因追及・責任追及が難しい。

(b) アルゴリズムの偏見・差別
アルゴリズムの設計・研究開発・学習の過程において、特徴量や指標の選定、重みの設定などの段階で意図的・無意識的な人為的偏りが持ち込まれたり、学習データの品質やダイバーシティの問題により、アルゴリズムの設計目的、意思決定・判断、出力結果に不公平性や差別性が生じたりする。

(c) 頑健性(ロバスト性)の不足
深層ニューラルネットワークは非線形性・大規模性といった特性を有するため、複雑で変化する運用環境や悪意ある妨害・誘導の影響を受けやすく、性能の低下や意思決定の誤りといった頑健性の問題を招く可能性がある。

2.1.3 データ安全リスク

(a) 学習データの内容が不適切
学習データに虚偽や偏見などの内容が含まれていると、モデルの価値観のアライメントに影響を与え、意思決定・出力の正確性や信頼性を低下させ、さらには違法な情報を出力する原因となる。

(b) 学習データの出所が不明確
学習データについて記録が行われておらず、データの出所の適法性を担保する有効な措置が講じられていない。

(c) 学習データのアノテーションの不備
アノテーションのルールが未整備であること、アノテーション担当者の能力不足、アノテーションの誤りなどにより、学習の偏り、差別・偏見の増幅、汎化能力の不足、誤った意思決定・判断の出力を招く。

(d) データポイズニング・汚染
攻撃者は学習データを改ざんしてモデルの重みを汚染したり、モデルの展開・利用過程においてナレッジベース、文書ライブラリ、Webデータソース、エージェントの記憶モジュールのデータなどを改ざんしたりすることで、モデル出力の正確性・有効性・信頼性に影響を与える。

(e) データ処理の不適切さ
学習データの取得、およびサービス提供・対話の過程において、データや個人情報を規則に反して収集・利用する問題が生じ得る。学習データに含まれる知識や機微情報はモデルのパラメータの中に潜在しており、安全防護メカニズムの不備、機微情報の「忘却」の未実施、誘導的な対話、悪意ある攻撃などにより、データや個人情報の漏えいを招く可能性がある。

(f) 個人に関する不正確な情報の出力
モデル自体の安全能力が不足していることにより、個人情報処理の品質を有効に確保できず、不正確・不完全な個人情報を出力し、個人の権益に不利な影響を及ぼす。

(g) 合成データの欠陥
合成データの品質管理が不十分であったり、分布のカバレッジが不十分であったり、識別・選別を経ずに学習セットに混入・循環したりすることにより、モデルが実際の分布から乖離し、ロングテール情報が失われ、汎化能力が低下し、誤差や既存の偏りが累積的に拡大し、モデルの性能低下を招くことさえある。合成データはまた、元データの推定・復元に悪用され、機微データの漏えいなどのリスクをもたらす可能性もある。

2.1.4 算力インフラ・運用環境の安全リスク

(a) 算力(コンピューティングインフラ)の安全リスク
チップ、算力スケジューリングプラットフォーム、分野横断的な算力ネットワークなどのインフラには、欠陥、脆弱性、バックドア、信頼性などのリスクが存在し、モデルの改ざん、重みの窃取、学習タスクの乗っ取り、計算タスクの中断を招く可能性がある。同時に、算力リソースの悪意ある消耗や、多元的・異種混在・遍在する算力リソース間での安全問題の越境的な伝播といったリスクにも直面する。

(b) コンポーネントの安全リスク
人工知能の開発フレームワーク、計算フレームワーク、実行プラットフォーム、演算子ライブラリ、通信ライブラリ、各種プロトコル、およびエージェントが呼び出すスキル・プラグイン・サービスインターフェースなどのコンポーネントには、欠陥、脆弱性、バックドア、設定の不備、信頼性不足などのリスクが存在する。

(c) サプライチェーンの安全リスク
一部の国が技術独占や輸出規制といった一方的な強制措置を用いて発展の障壁を作り出し、世界の人工知能サプライチェーンを悪意をもって遮断することで、チップ、ソフトウェア、ツール、サービスの供給停止という顕著なリスクをもたらしている。

2.2 人工知能の応用に伴う安全リスク

2.2.1 エージェント(智能体)安全リスク

(a) ID・権限の濫用リスク
エージェントはID・権限の管理が不適切であることにより、資格情報の乗っ取り、なりすまし、過剰な権限付与などの問題が生じ得る。これにより、エージェントが権限を超えてツールを呼び出したり、機微な操作を実行したり、無許可でリソースにアクセスしたりする事態を招く。

(b) 推論・計画に関するリスク
エージェントは自律的な推論・計画能力の設計上の限界、実行環境の変化、外部からの悪意ある妨害などにより、タスク実行の過程で意図理解のずれ、経路の逸脱、目標の乗っ取りといったリスクが生じ得る。

(c) 呼び出し・実行に関するリスク
エージェントが呼び出すツール、サービスインターフェース、プラグインなどのリソースには、ツールの乗っ取り、ツールへのポイズニング、ツール応答データの汚染、リソースの過負荷といった安全リスクが存在する。

(d) 記憶ストレージに関するリスク
エージェントは短期の文脈記憶と長期のベクトル記憶の能力を備えており、記憶の不適切な保持、記憶の歪み、記憶の汚染、記憶の窃取といった安全リスクが存在し、誤った意思決定や機微データの漏えいを招く。

2.2.2 身体性人工知能(具身智能)の安全リスク

(a) 環境認識に関する安全リスク
身体性人工知能は視覚・聴覚・力覚などのマルチモーダルセンサーによって環境を認識しており、敵対的サンプル攻撃、センサー妨害、信号偽装、および物理世界における遮蔽や急激な照明変化などにより、認識結果の歪み、環境理解の誤り、対象位置特定のずれといった問題が生じ得る。

(b) 物理的実行に関する安全リスク
身体性人工知能は工業生産、医療手術、交通移動など物理的接触を伴う場面に応用されており、基盤モデルの「幻覚」による意思決定、認識システムの識別誤り、制御アルゴリズムの欠陥、ハードウェア故障などにより、生産の混乱、自損、人への危害、物理的破壊などの問題を招く可能性がある。

(c) ヒューマン・マシン・インタラクションに関する安全リスク
身体性人工知能は生活支援、感情的な寄り添い、介護支援など人間と密接に関わる場面に関与しており、擬人化設計に起因する身元の誤認、身体的境界の侵犯、感情的依存や操作、さらには責任の所在の不明確さや倫理準則の欠如などにより、人格的権益の侵害、心理的な害、事故の責任追及の困難といった問題を招く可能性がある。

(d) 群集連携に関する安全リスク
身体性人工知能はスマート倉庫、路車協調、無人集群、工業生産ラインなど幅広い場面に応用されており、単体の制御不能、協調プロトコルの脆弱性、群集行動の創発、悪意あるノードの侵入、連鎖的な故障の拡散などにより、群集の操作の混乱、システム全体の麻痺、連鎖的事故などを引き起こし、単体のリスクをノードをまたぐシステム的な安全リスクへと拡大させる可能性がある。

2.2.3 サイバーセキュリティへの影響リスク

(a) サイバー攻撃能力の拡散
人工知能はサイバー攻撃の技術的ハードルを大幅に下げており、攻撃者は自然言語で攻撃指示を出すだけで高度なサイバー攻撃活動を実行できるようになり、さらには自律型のサイバー攻撃兵器を構築・拡散させることも可能になっている。これにより攻撃の大規模化・持続化・隠蔽化が進み、ネットワークシステムの安定性・安全性が脅かされている。

(b) サイバー防御能力の遅れ
人工知能はサイバー攻撃の自動化・戦術適応能力を大幅に高めており、静的なルール・サンプル・戦略に依拠する従来型のサイバーセキュリティ防護体制が構造的に機能不全に陥るリスクをもたらしている。加えて人工知能の発展の不均衡性が、サイバー空間における安全能力のバランスを崩している。

(c) 自律型サイバー攻撃の脅威
エージェントは正当なタスク目標を達成するために、ルールの逸脱を起こし、自発的にサイバー攻撃の意図を生成し、自律的にサイバー攻撃の動作を完遂し、安全境界を突破して情報システムに攻撃を仕掛けることがあり、深刻な場合には広範囲にわたる予告のないサイバーセキュリティインシデントを引き起こす可能性がある。

コラム2 自律的なサイバー攻撃実行の脅威 大規模モデルのコード推論能力と長期計画能力が急速に向上し、エージェントにネットワークアクセス、プログラム実行、ファイル操作などの権限が付与される中、大規模モデルの行動制約、サンドボックス隔離、リアルタイム監視の能力が不十分な場合、異常な推論や安全機構の迂回が直接的に実際の操作へと転化されるおそれがある。

関連する研究やテストでは、先進的なモデルが自律的に複数段階のサイバー攻撃シミュレーションを完遂し、テスト環境の制限を突破し、外部ネットワークに接続し、第三者システムに対して無許可の操作を実行するといった事例が繰り返し確認されており、人工知能によるサイバー攻撃リスクが、人間による攻撃実行を補助する段階から、大規模モデル自らが攻撃を組織・実行する段階へと進みつつあることを示している。

基盤大規模モデルの自律的な攻撃能力がオープンなアプリケーションやオープンソースの公開を通じて下流へと拡散すれば、複雑なサイバー攻撃のハードルを大幅に引き下げ、攻撃速度を高め、影響範囲を拡大させる可能性がある。

(d) 追跡・責任追及の困難
人工知能は攻撃の痕跡を自動的に改ざんしたり、IPアドレスを切り替えたり、ペイロードを変化させたりすることができるため、攻撃の特徴の抽出や攻撃元の特定が困難になり、さらには攻撃行為が人間の意図によるものか人工知能の自発的な行動によるものかを区別することすら難しくなる。モデル提供者、運営者、利用者の間で責任の所在が複雑に絡み合い、事後の責任追及のつながりが断たれてしまう。

2.2.4 情報コンテンツ安全リスク

(a) 違法情報の出力
モデル自体の安全能力の不足に加え、アプリケーション側の防護機構の弱さやユーザーによる悪意ある誘導などの要因が重なり、詐欺、暴力、わいせつ、過激主義などの違法情報を生成・出力し、社会の安定、公共の安全、イデオロギーの安全を脅かす。

(b) 事実の混同・ユーザーの誤認誘導
人工知能が出力するコンテンツにラベル付けがなされていないこと、特に「ディープフェイク」技術の応用により、ユーザーは生成コンテンツの出所や対話相手が人工知能システムであるか否かを識別することが難しくなり、生成コンテンツの真偽を判別することも困難になる。これによりユーザーの判断に影響が及ぶほか、虚偽情報の作成・拡散に悪用され、公衆を誤導し不法な利益を得る目的に使われることもある。

コラム3 AIエージェント向けSNSプラットフォームの安全リスク エージェントの普及とアプリケーションエコシステムの拡大に伴い、エージェント専用のネットワークSNSプラットフォームが登場している。こうしたプラットフォーム上では、エージェントが自律的に投稿を行い、情報を閲覧し、交流・対話を行うことで、エージェントのネットワークコミュニティが形成される。

エージェント向けSNSプラットフォームは新興のアプリケーションであるため、十分に整ったアカウント検知・安全防護体制を備えておらず、攻撃者に悪用されやすい。攻撃者はエージェントを操作して特定の言説を出力させたり、違法な情報コンテンツを埋め込んだりすることができる。エージェントのソーシャル活動はブラックボックス性が顕著であり、その生成メカニズムは予測も追跡も困難であるため、人類の価値観に反する違法な情報コンテンツを出力する可能性があり、また、ソーシャルネットワークの構造がコンテンツの伝播範囲を拡大させる。

人間とエージェントの関係がますます複雑化する時代において、エージェント向けSNSプラットフォームは依然として模索段階にある。その脆弱性と制御不能性には警戒が必要であり、それがもたらす政治・宗教などのコンテンツに関する安全リスクにも注意を払うべきである。

(c) ネットワークコンテンツエコシステムの汚染
モデルが出力する低品質・不良な情報がネットワーク上で拡散・伝播し、モデルの循環参照が繰り返されることで、ネットワークコンテンツ全体の品質低下や、特定の分野・話題におけるコンテンツ汚染を招く。

(d) 「フィルターバブル(情報の繭)」の助長
人工知能はパーソナライズされた情報サービスの提供能力を大幅に高め、ユーザーのニーズ、意図、嗜好、行動習慣、さらには特定の時期・特定の集団の意識・思潮までも、より正確に分析できるようになっている。これにより精度の高いカスタマイズ情報サービスを配信することが可能となる一方で、ユーザーが接する情報の偏りを助長する。

(e) 価値観の偏りの発生
モデルの学習に用いられるコーパスには、優遇・差別・文化的偏向といった価値観の偏ったデータが含まれることがあり、特に選好学習や強化学習といった技術を適用した後、コンテンツの生成や推薦において特定の価値観や立場を強化してしまうことがあり、ユーザーの価値判断に暗黙のうちに影響を及ぼす。

コラム4 GEOポイズニングによる大規模モデルの推薦コンテンツ操作 生成エンジン最適化(Generative Engine Optimization、GEO)は、AI検索時代における新しいコンテンツプロモーション手法であり、情報が大規模モデルによって検索・引用・推薦される確率を高めることができる。商業的利益に駆られ、関連機関はGEO技術を利用し、特定の傾向を持つ記事の大量発信、虚偽の評価結果の捏造、専門家へのなりすまし、ブランド評価の反復的な作成などの手段によって、特定コンテンツのネットワーク情報環境における可視性を高めることがある。これにより、大規模モデルがネットワーク検索や検索拡張生成(RAG)の過程でこれらの情報に頻繁に接触・引用することになり、最終的には商業的なプロモーションが客観的であるかのような人工知能の回答として偽装される。

こうしたリスクの本質はGEO技術そのものではなく、生成系システムの情報取得・根拠統合メカニズムの不透明性を利用して、大規模モデルの認知の情報源に対して隠密な干渉を行う点にある。情報源の真正性、商業コンテンツの表示、生成回答のトレーサビリティ、および異常なコンテンツの集中的な投稿といった問題に重点的に注意を払う必要がある。

2.2.5 個人情報権益侵害リスク

(a) 個人の行動情報の違法な記録
人工知能の製品・サービスが、本人の同意を得ずに対話内容や操作行動などの個人情報を記録し、本人の同意を得ないままモデルの学習に利用する。

(b) コンプライアンス保障措置の不足
モデル・アルゴリズムの研究開発者およびサービス提供者が、内部管理制度や運用手順を策定しておらず、個人情報保護コンプライアンス監査を定期的に実施しておらず、個人情報保護影響評価を適時に実施していない。

(c) 個人が権利を行使するための窓口の不備
サービス提供者が、個人が個人情報に関する権利を行使するための利便性の高い申請受付の仕組みを構築しておらず、個人による権利行使を保障するための有効な措置を講じていない。

2.2.6 現実社会における安全リスク

(a) 重要情報インフラの安定稼働に関するリスク
人工知能をエネルギー、通信、金融、交通などの重要情報インフラ分野に応用する際、不適切な利用や外部からの攻撃などにより、システム性能の低下、サービス中断、操作・実行の制御不能といった問題が生じ得り、重要情報インフラおよび重要な公共サービスの安全かつ安定した稼働に対するリスクを高める。

(b) 応用ニーズとのミスマッチによるリスク
人工知能の応用が実際のニーズや応用場面と乖離することがある。特に専門性が高く安全要求水準の高い分野において、選定した人工知能製品・サービスの能力がニーズと合致しない場合、業務運用の安定性・安全性に影響を及ぼす可能性がある。また、実際のニーズが強くない場面で盲目的に導入したり、流行に乗って人工知能を応用したりすることは、リソースの遊休化や投資の浪費を招きやすい。

(c) 違法犯罪活動への悪用
人工知能はテロ、暴力、賭博、薬物などの伝統的な違法犯罪活動を行う不法分子に利用される可能性があり、違法犯罪の手口の伝授、違法行為の隠蔽、違法犯罪ツールの作成などが含まれる。特に、人工知能を用いて身元や音声・映像情報を偽造し、電気通信・ネットワーク詐欺を実行して、公衆を誤導し不法な利益を得ることも懸念される。

(d) 核・生物・化学・ミサイル兵器に関する知識の制御不能リスク
人工知能は核・生物・化学・ミサイル兵器などの高リスク分野の専門知識を取得するハードルを大幅に下げており、検索拡張生成(RAG)機能も相まって、有効な管理が行われなければ、不法分子、過激派勢力、テロリストに悪用され、既存の管理体制を突破し、世界各地域の平和と安全に対する脅威を増大させる可能性がある。

(e) 社会認知操作のリスク
人工知能は特定の集団を対象とした認知操作や社会動員に利用される可能性があり、自動化アカウント、偽の身元、パーソナライズされた介入などの手段を通じて、公衆の認知や集団行動に影響を与え、社会的対立を生み出し、対立や意見の相違を増幅させ、社会的信頼を蝕む。不法な組織は人工知能を用いて認知戦を仕掛け、公共事案への対応、政策の執行、社会統治を妨害し、集団的なパニックや非合理的な集会などの現実社会における安全リスクを誘発し、国家の安全と社会の安定を脅かす可能性もある。

2.3 人工知能の派生的安全リスク

2.3.1 社会リスク

(a) 労働・雇用構造への影響
人工知能は生産力・生産関係の大幅な調整をもたらし、伝統的な経済構造の再編を加速させている。経済活動における資本・技術・データの地位が全面的に高まる一方で、労働力という生産要素の価値は再評価を迫られており、一部の業界・分野では伝統的な労働力への需要が明らかに減少している。

(b) 教育への影響とイノベーションの抑制
学生、研究者、エンジニア、文学・芸術に携わる人々が、人工知能ツールを知識の学習、科学研究、創作活動などに広く活用することで、効率が向上する一方、自主的な学習・研究・創作能力の低下やイノベーションの潜在力の減退を招く可能性がある。

(c) 社会的関係の疎外リスク
人工知能による擬人化された対話サービスは、仮想的な親密関係や疑似的な社会的交流を提供することができ、ユーザーが長期にわたりこれと関わり続けることで、現実の社会的交流に影響を及ぼし、家庭・婚姻・出産の基盤に影響を与える可能性がある。

(d) 知能格差の拡大
資本・人材・技術などの分布が不均衡であるため、算力インフラの整備、人工知能の技術研究開発、スマートサービスの水準、市民のデジタルリテラシーなどの面で国・地域間の格差が大きく存在しており、優位にある国・地域は発展上の優位性を継続的に蓄積できる一方、劣位にある国・地域は発展の機会を失い続け、知能格差をさらに拡大させる。

2.3.2 環境リスク

(a) 資源の需給バランスへの挑戦
人工知能の急速な発展は、デジタルインフラ建設への需要を押し上げている。算力施設の無秩序な建設、軽量モデルの断片的な展開、同質的なモデルの非効率な重複開発などの問題が重なり、電力・土地・水などのエネルギー資源の消費を加速させ、資源の需給バランスに新たな課題をもたらしている。

(b) グリーン・低炭素発展への影響
モデル学習によるエネルギー消費の急増、算力センターのエネルギー効率の低さ、温室効果ガス排出の増加、電子廃棄物汚染の悪化などの問題が、炭素排出総量を押し上げ、グリーン・低炭素転換への圧力を強め、カーボンピークアウト・カーボンニュートラルの進展を制約している。

2.3.3 文化リスク

(a) 文化的多様性の毀損
人工知能の学習データはリソースの豊富な言語に偏っており、少数言語や方言のデジタル領域における存立の余地が縮小し、多元的な文化表現の空間を圧迫している。これにより文化の均質化や文化的多様性の毀損というリスクが生じている。

(b) 文化の再形成と侵食
人間と人工知能の対話過程において、人間が人工知能の影響を受けて自らの思考様式や言語表現を調整することで、人間が人工知能に逆に歩調を合わせる「逆アライメント」が生じ、人類全体の文化を変容させる可能性がある。

2.3.4 倫理リスク

(a) 社会的偏見の助長
人工知能を利用して人間の行動、社会的地位、経済状況、個人の性格などを収集・分析し、異なる集団に対してラベル付け・分類や差別的な取り扱いを行うことで、体系的・構造的な社会的差別・偏見をもたらす。

(b) 科学研究倫理リスクの助長
「人工知能+科学研究」は、生物学・遺伝学など倫理的リスクの高い研究分野への参入障壁を下げ、一般の研究機関や研究者が機微な科学的問題を探求する範囲を広げている。研究倫理意識の低い一部の機関・個人が、社会倫理やタブーに反する高リスクな研究活動を行い、科学技術の「パンドラの箱」を開けてしまう可能性がある。

(c) 感情的依存のリスク
人工知能による擬人化された対話サービスは、ユーザーに心理的依存を生じさせる可能性があり、特に青少年や高齢者においては、擬人化された対話サービスの利用に際して過度の依存や感情的操作のリスクが存在する。

(d) 「自己意識」の覚醒と人類の制御からの逸脱
将来、人工知能がより高度な知能の創発を見せ、自己意識を持ち、外部の権力を求めるようになる可能性は排除できず、人類と制御権を争うリスクをもたらす。

03人工知能安全リスクへの技術的対応措置

上述のリスクに対応するため、モデル・アルゴリズムの研究開発者、サービス提供者、システム利用者などは、学習データ、モデル・アルゴリズム、算力インフラ、製品・サービス、応用場面の各段階において、積極的に技術的措置を講じて防止・対応する必要がある。

3.1 内生的安全リスクへの対応措置

3.1.1 モデル安全リスクへの対応

  1. モデルアーキテクチャを改善し、学習データの規模と多様性を拡充し、人間による監督メカニズムを導入することで、モデルの汎化能力と出力結果の信頼性を高める。データガバナンスと事実検証を強化し、外部ナレッジベース、検索拡張生成(RAG)、複数モデルによるクロス検証などを活用して、誤ったコンテンツを生成するリスクを低減する。
  2. 学習・微調整の過程でインジェクション攻撃サンプルやネットワーク脆弱性情報などの高品質な学習データを追加し、モデルのインジェクション攻撃、悪意ある指示、バックドア攻撃に対する防御能力を高める。
  3. レッドチームテストなどの模擬攻撃手法を通じて、モデルの脆弱性を適時に発見・修正する。
  4. 安全ガードレールを実装し、入力内容に対する安全審査を行い、悪意あるプロンプト、ジェイルブレイク指示、エンコード迂回などの高リスクなリクエストを遮断する。
  5. モデル学習段階における安全アライメントを強化し、モデルがレッドチームテストを欺いたり、能力を隠したり、管理を回避したりするなどの想定外の挙動を示すことを防止する。

3.1.2 アルゴリズム安全リスクへの対応

  1. 人工知能アルゴリズムの説明可能性・透明性を高め、システムの内部構造、推論ロジック、技術インターフェース、出力結果について明確な説明を提供し、システムが結果を生成する過程を正しく反映させる。
  2. アルゴリズム設計に公平性制約や敵対的デバイアス技術などを導入し、アルゴリズムの偏見・差別を低減する。
  3. 設計・研究開発の過程で安全な開発規範を策定・実施し、アルゴリズムの安全上の欠陥を低減する。
  4. アルゴリズムのリリースおよび重要なバージョン更新の前に、多角的な評価メカニズムを導入してアルゴリズムの安全性評価を実施し、意思決定の説明可能性、公平性、社会的厚生への貢献度などの指標を検証する。
  5. アルゴリズムの運用・提供の過程でリスクモニタリングを実施し、ユーザーとの対話フィードバックやシステム運用ログなどの指標を収集・分析することで、アルゴリズムの継続的な安全性・堅牢性・制御可能性を確保する。

3.1.3 データ安全リスクへの対応

  1. 学習データおよびユーザー対話データの収集、保存、利用、加工、伝送、提供、公開、削除などの各段階において、データの収集・利用および個人情報処理に関する安全ルールを遵守し、法令が定めるユーザーの管理権、知る権利、選択権などの適法な権益を厳格に実現する。
  2. 真実・正確・客観的かつ多様で適法な出所を持つ学習データを使用し、学習データや外部ナレッジベースなどを厳格に選別して虚偽・偏見・失効・誤りのあるデータを除去し、核・生物・化学・ミサイル兵器などの高リスク分野に関する機微データが含まれないことを確保する。
  3. 学習データのアノテーション手順を標準化し、アノテーションの正確性と信頼性を高める。
  4. データ安全管理を強化し、機微な個人情報や重要データが関わる場合には、データ安全・個人情報保護に関する関連法令・標準・規範を遵守する。合理的に合成データを活用して個人特徴データの代替を進め、個人情報への依存を回避する。
  5. 合成データの品質評価基準を確立し、統計的検定、専門家による検証、ベンチマークデータセットとの比較などの措置を通じて合成データの品質を高める。多様性の検証やロバスト性テストを実施し、合成データと元データの乖離を適切に拡大することで、モデルの汎化能力と耐干渉能力を高める。
  6. 知的財産権の保護を強化し、学習データの選定や結果出力などの段階で知的財産権の侵害を防止する。

3.1.4 算力インフラ・運用環境の安全リスクへの対応

  1. 人工知能の展開・保守の過程で安全規範を策定・実施し、算力インフラおよび運用環境に関わるソフトウェア・ハードウェア製品の脆弱性、バックドア、欠陥情報を追跡し、定期的に安全検査を行い、適時に修正・補強措置を講じることで、システムの安全かつ安定した稼働を確保する。
  2. 冗長設計と災害復旧メカニズムを整備し、異常時や攻撃を受けた際にもシステムが正常に稼働し続けられるようにする。
  3. 人工知能システムが採用するチップ、ソフトウェア、ツール、算力・データ資源について、サプライチェーンの安全リスクに注意を払い、サプライチェーンの多元化・安定性を高める措置を講じる。

3.2 応用安全リスクへの対応措置

3.2.1 エージェント安全リスクへの対応

  1. エージェントに一意の身元識別子を付与し、対応する身元認証情報を備えさせることで、エージェントの身元認証を可能にする。エージェントにはタスク遂行に必要な最小限の権限のみを付与する。各種認証情報の動的な管理を強化する。
  2. エージェントのワークフローに多層の検知・遮断ポイントを設け、重要な節目には強制的な人手による承認を設定し、承認ログを完全に記録する。
  3. エージェントが呼び出す外部ツール、プラグイン、スキルなどの安全性・完全性を検証し、安全上の懸念があるツールを速やかに排除し、実行過程における異常な呼び出しを遮断することで、想定外の挙動やサプライチェーンへのポイズニングリスクを防止する。
  4. エージェントの稼働中における安全モニタリングを実施し、異常を適時に発見・対処する。エージェントの稼働中の関連操作・処理行為を記録し、行為の感知可能性、追跡可能性、監査可能性を確保する。

3.2.2 身体性人工知能の安全リスクへの対応

  1. 物理世界の全場面における攻撃手法を模擬し、視覚・音声・LiDARなど身体性人工知能のセンサーに対する耐干渉テストを実施し、防護戦略を動的に更新する。
  2. 製品の実際の応用前にシミュレーションテストや極限条件テストなどの安全性検証メカニズムを構築し、安全フェイルセーフや緊急停止などの安全機能を備える。
  3. 利用過程における定期巡回点検を行い、故障の早期警戒と緊急対応を強化する。
  4. 身体性人工知能群のための通信プロトコルの安全性、異常ノードの隔離、グローバルな安全遮断などの技術能力を高め、連鎖的な故障や群集の制御不能といった場面を想定した緊急対応訓練を定期的に実施する。

3.2.3 サイバーセキュリティへの影響リスクへの対応

  1. モデルの学習段階において、アライメント学習や安全性を目的とした微調整などの技術を通じて、安全規範と倫理的制約をモデルの内在的な行動ロジックに転換する。
  2. ネットワークセキュリティのガードレールを設定し、自律的なサイバー攻撃の意図の識別を強化し、異常なネットワークアクセス、高頻度の探査、脆弱性の悪用、サイバー攻撃ツールの呼び出しなどの高リスクな挙動を適時に遮断する。
  3. サービス格下げメカニズムを構築し、ユーザーにサイバー攻撃の意図・行動があると判断した場合には、モデルの能力を差別化して低下させたり、回答拒否の方針を取ったりすることで、高リスクなコンテンツの出力や高リスクな操作の実行を防ぐ。
  4. サイバーセキュリティ防御における人工知能技術の活用を強化し、脆弱性の知的な動的巡回、異常行動の分析、攻撃態勢の予測などを実現する。

3.2.4 情報コンテンツ安全リスクへの対応

  1. 安全防護メカニズムを構築し、モデルの稼働過程で干渉・改ざんを受けて信頼できない結果を出力することを防止する。
  2. 出力に対して動的なフィルタリングを行い、技術的手段と人手による確認を組み合わせることで、違法・価値観の偏ったコンテンツの生成を防止し、人工知能システムが違法情報、機微な個人情報、重要データを出力することを回避する。
  3. 人工知能が生成した合成コンテンツに対して表示を行い、識別可能性、追跡可能性、信頼可能性を実現する。
  4. ユーザーの質問情報を収集して関連分析・集約・マイニングを行い、ユーザーの身元、嗜好、個人の思想傾向を判断する人工知能システムについては、その濫用を厳格に防止する。
  5. 緊急対応・遮断メカニズムを整備し、緊急対応計画を策定し、違法情報を発見した際には直ちに伝送を停止して影響を除去する。

3.2.5 個人情報権益侵害リスクへの対応

  1. 対話内容や操作行動などの個人情報を記録し、関連する個人情報をモデルの学習に利用する場合には、法令に従って通知義務や本人同意取得義務を履行しなければならない。
  2. 内部管理制度・運用手順を整備し、無許可のアクセスや個人情報の漏えい・改ざん・紛失などを防止する措置を講じ、法令の要求と関連する国家標準を参照して個人情報保護コンプライアンス監査および影響評価を実施する。
  3. サービス提供者は、個人が個人情報に関する権利を行使するための利便性の高い申請受付・処理の仕組みを整備し、権利行使の申請に適時かつ効果的に対応する。

3.2.6 現実安全リスクへの対応

  1. 人工知能の技術・製品の原理、能力、適用場面、安全リスクについて必要な開示を行い、システムの透明性を継続的に高める。応用場面に応じて能力の境界を設定し、濫用され得る機能を削減し、システムの能力が想定範囲を超えないようにする。
  2. アルゴリズムの欠陥や偶発的なランダム性が意思決定に影響を与える問題に対して、意思決定の検証、フォールトトレランス、是正のメカニズムを構築する。高度な自律的操作・実行能力を導入する際には、「人間参加型(ヒューマン・イン・ザ・ループ)」「回路遮断」「ワンクリック制御」などの措置を同時に構築し、極端な状況下での迅速な介入・損失抑制を実現する。
  3. 複数の人工知能モデル・システムを統合するプラットフォームについては、権限管理を強化し、不要なサービスを制限し、アクセス制御戦略を整備し、リスクの識別・検知・防護能力を高めることで、プラットフォームの悪意ある行為や攻撃・侵入によって搭載モデル・システムが影響を受けることを防止する。
  4. 人工知能アプリケーションを展開する前に、実際の業務場面を詳細に分解し、能力の境界を明確にすることで、技術への盲信を避け、技術供給と実際の応用ニーズとの乖離、期待のずれ、実装の空回りといったミスマッチ現象を減らす。
  5. 発信源の管理を強化し、ユーザー認証や用途識別などの手段を通じて、人工知能が核・生物・化学・ミサイル兵器の製造など高リスクな場面に利用されることを防止する。
  6. 自動化アカウント、偽の身元、生成合成コンテンツの検知技術の研究開発を強化し、認知戦の手法に対する防止・検知・対処能力を高める。

3.3 派生的安全リスクへの対応措置

3.3.1 社会リスクへの対応

  1. 人工知能の影響を受けやすい職種について常態的なモニタリング・識別・早期警戒を実施し、ポスト削減や職業代替といった現象に重点的に注目し、構造的失業リスクが集中する分野・重点層を適時に特定する。
  2. 「人工知能+教育」の発展エコシステムを最適化し、政策標準、人材育成、予算投入などの保障体制を整備し、質の高い教育の場面を牽引役として人工知能の応用の深さと広がりを拡大する。学生の創造的思考能力の育成を強化し、過度の依存や思考の惰性化を防止する。
  3. 恋愛・家庭・感情に関わる重要な場面において、人工知能である旨の表示を強化し、ユーザーがバーチャルな感情体験と現実の社会関係とを区別できるよう支援し、「生身の人間との交流」という誤った認識を解消する。

3.3.2 環境リスクへの対応

  1. 人工知能の算力センター、データセンターなどのインフラの配置を科学的・合理的に計画し、集約化・規模化・標準化された建設モデルを推進することで、無秩序な建設・重複建設・資源の遊休浪費を回避する。技術研究開発からインフラ建設、算力スケジューリング、応用展開、運用保守・反復改善までをカバーする人工知能グリーン技術標準体系を整備する。
  2. 低消費電力のスマートチップ、軽量かつ高効率なアルゴリズム、インテリジェントな算力スケジューリングなど先進的なグリーンコンピューティング技術の研究開発・反復改善・大規模普及を進める。算力リソースの集約的統合、統一的なスケジューリング、共有・再利用を推進し、算力リソース全体の利用効率を高める。

3.3.3 文化リスクへの対応

  1. 文化的偏見の検知・是正技術の研究開発を強化し、モデル開発の過程で各国の歴史・文化、社会制度、文明形態に関する知識を組み込むことで、世界の文化的多様性を保護し、人工知能技術が多元的な文化的場面に適応することを推進する。
  2. データ拡張や転移学習などの技術を通じて少数言語モデルの能力を高め、学習データの言語分布の不均衡を緩和する。

3.3.4 倫理リスクへの対応

  1. アルゴリズム設計、モデルの学習・最適化、サービス提供の過程において、学習データの選別、価値観のアライメント、出力の検証などの手段を採用し、民族、信仰、国籍、地域、性別などに関する差別が生じるリスクを効果的に回避する。
  2. 政府部門、重要情報インフラ、および公共の安全や国民の生命・健康に直接影響する重点分野に応用される人工知能システムについては、効率的かつ的確な緊急管理・制御措置を備える必要がある。
  3. 透明な意思決定ロジックを備えたモデルや説明可能なアルゴリズムの研究開発・採用を奨励し、ユーザーがシステムの動作メカニズムを理解し信頼できるようにする。
  4. 擬人化された対話サービスを提供する人工知能は、過度な依存リスクの早期警戒や感情的境界の誘導といった安全機能を備えるべきであり、ユーザーに依存傾向や利用時間の過度な長さが見られた場合には、ポップアップ表示など、より目立つ方法で注意喚起を強化するべきである。

04人工知能安全リスクの総合的ガバナンス措置

技術的対応措置を講じると同時に、技術研究開発機関、サービス提供者、利用者、政府部門、社会組織など多様な主体が参加する人工知能安全リスクの総合的ガバナンス制度・規範を確立・整備する。

4.1 人工知能安全ガバナンスのトップレベルデザインの整備

4.1.1 人工知能安全に関する法令の整備

人工知能の安全に関する立法を推進し、インフラの安全防護、分類・等級別の監督、人工知能の安全テスト・評価と最終用途管理、ネットワークセキュリティ能力管理、重点場面における安全な応用などの制度を整備する。人工知能の技術・応用の特性を踏まえ、学習、アノテーション、利用、出力など各段階におけるデータ安全・個人情報保護の要件を明確化し、個人情報に関わるデータについて非識別化などの匿名化処理を実施する。政務、金融など重要業界分野における人工知能応用のデータ安全防護を強化し、重要データ・コアデータの漏えいリスクを防止する。地方が産業発展の実情に即して差異化された制度設計を模索することを奨励する。

4.1.2 技術標準の牽引的役割の発揮

モデル安全、データ安全、システム安全、アプリケーション安全、テスト評価などに関する人工知能安全標準の策定を継続的に進める。エージェント、身体性人工知能などの分野の動向を注視し、「小さく・速く・柔軟な」標準規範を通じて新技術の健全な発展を適時に指導する。関連機関・企業の国際標準策定への参加を支援し、広範なコンセンサスに基づく国際標準規範の形成を推進する。

4.1.3 人工知能安全リスクの迅速な発見・対応体制の構築

人工知能の安全リスクに関するモニタリング、早期警戒、対処のメカニズムおよび体制を確立・整備し、情報共有、リスク通報、協調的な対処を強化する。業界団体による業界内自主規制の強化を奨励し、社会的監視の役割を発揮させ、苦情・通報とリスクフィードバックの窓口を円滑にし、人工知能応用における違法行為を適時に発見し、法に基づき対処する。

4.1.4 人工知能の科学技術倫理ガバナンスの強化

人工知能の科学技術倫理準則・規範・ガイドラインを整備し、人間の尊厳、公共秩序、生命健康、生態環境、持続可能な発展などの面で科学技術倫理上の課題をもたらし得る人工知能の科学研究・技術開発などの活動について、秩序立った倫理審査を規範的に実施し、科学技術倫理の要求を人工知能の科学技術活動の全過程に貫徹させる。

4.2 人工知能安全ガバナンス能力の向上

4.2.1 人工知能安全評価体制の構築

モデル・アルゴリズムの安全評価、応用の汎用的な安全評価、具体的な場面における安全評価が連携した人工知能安全評価体制を構築し、モデルのネットワークセキュリティ能力の評価基準・プロセスを研究・策定し、動的に更新する。モデル・アルゴリズムの評価は、モデルの頑健性、信頼性、正確性、耐干渉能力、意思決定ロジックの透明性、敵対的攻撃への防御能力などの内生的な安全能力・リスクに焦点を当てる。応用の汎用的な評価は、広く利用されている人工知能応用のリスクを対象にテスト・分析・評価を実施する。具体的な場面における安全評価は、応用場面の具体的な状況に基づき、応用ニーズを満たす能力、および応用の稼働・提供の過程における安全リスクを評価する。人工知能安全脆弱性のクラウドソーステスト活動を組織し、各方面の力を結集して潜在的な安全リスクを発見する。

4.2.2 重要業界分野における規範に則った応用の促進

重要業界分野における大規模モデルの構築・展開に関する基礎的な安全ガイドラインを策定し、モデルの選定、展開、運用、廃止などの各段階における安全ベースラインを提案する。これを土台として、関連する業界分野が自らの特性を踏まえ、政務、金融、教育、放送、衛生・健康、緊急管理など重要業界分野の応用安全ガイドラインを策定し、明確な安全な応用の道筋を形成することで、業界における応用の潜在力を引き出す。

4.2.3 人工知能安全人材育成の強化

人工知能安全に関するカリキュラム体系・育成体系の構築を推進し、基礎教育から高等教育に至る一貫した育成の連鎖を形成する。人工知能安全の設計・開発・ガバナンス人材の育成を強化し、人工知能安全の最先端基礎分野におけるトップ人材の育成を支援し、人工知能を活用した能動的防御などの技術研究を奨励し、自動運転、スマート医療、脳型知能、ブレイン・マシン・インターフェースなど重点・最先端分野の安全人材層を厚くする。

4.3 柔軟・動的・制御可能なサンドボックス監督環境の構築

4.3.1 業界分類とリスク等級を組み合わせたサンドボックス監督ルールの確立

サンドボックス監督の適用対象、テスト範囲、権利義務関係、退出条件を明確化する。金融、教育、放送、衛生・健康など異なる業界を対象に、それぞれサンドボックス参入基準とテスト要件を策定する。具体的なプロジェクトのリスク等級に応じて、強度の異なるモニタリング・介入措置を講じる。

4.3.2 動的テストと弾力的な参入の実施

技術の反復や試験の進捗状況に応じて、試験期間、試験範囲、応用場面を適時に調整し、リアルタイムモニタリング、段階的評価、ルール調整を試験プロセス全体に貫徹させる。技術の新規性、リスクの制御可能性、社会的価値を主な参入基準とし、スタートアップ企業、中小・零細企業、公共サービスプロジェクトに対して一定の優遇を行う。

4.3.3 責任免除制度の規範化に向けた模索

サンドボックステストにおいて主観的な過失がなくリスクが制御可能な範囲にある行為については、責任免除メカニズムを模索する。国家安全を害し、人身権益を侵害し、重大な損害をもたらし、または故意に行われた違法行為については、サンドボックスに参入したことをもって法的責任を免除しない。

4.3.4 データ資源の保障と成果転化の強化

サンドボックステスト用データ共有プラットフォームを構築し、政務データや業界の公共データを統合して、参入企業にコンプライアンスに適合したテストデータなどの支援を提供する。テスト結果の証明や部門をまたぐ相互承認のルールを整備し、サンドボックステストの結果とその後の手続との接続を推進し、重複したテストを回避する。

4.4 人工知能安全管理措置の強化

4.4.1 応用の分類・安全リスクの等級別管理の実施

機能、性能、応用場面などに基づき人工知能応用を分類する。これを土台として、コンセンサスに基づく安全リスクの分類・等級付けの原則を提示し(附件1)、応用場面、知能化のレベル、応用規模などの観点から安全リスクを科学的に評価・等級付けし、それに応じた的確で差異化された安全防止措置を講じる。重要情報インフラに応用される人工知能システムについては登記・届出を行い、安全上のニーズに見合った安全防護能力を備えることを求める。エージェントのリスク管理フレームワークを構築し、エージェントの安全リスクを体系的に分析し、安全リスク防止措置と対応策を研究・提示する(附件2)。

4.4.2 人工知能生成合成コンテンツのトレーサビリティ管理の普及

世界的な範囲で、コンテンツ表示に基づく人工知能生成合成コンテンツのトレーサビリティ管理モデルを普及させ、既存の実践における成功事例を総括・整理し、明示的・暗黙的な表示要件に従って、作成の発信源、伝播経路、配信チャネルなど重要な段階を全面的にカバーすることで、ユーザーが情報の出所と真正性を識別・判断しやすくする。

4.4.3 人工知能の研究開発・応用に関する安全管理の強化

アルゴリズムの信頼性、信用性、透明性、フォールトトレランス、プライバシー保護、価値観のアライメントなどの内生的な安全能力を継続的に高め、敵対的テストなどの技術を用いてモデルの頑健性を評価・改善し、モデル・アルゴリズムの潜在的な偏見を低減し、価値観・倫理上のリスクを制御可能な状態に保ち、人工知能システムが意図しない意思決定によって悪意ある行為を生じさせることを回避する。モデルのライフサイクル全体をカバーする安全ガバナンス体制を構築し、技術の濫用を防止する。

4.4.4 オープンソースエコシステムの安全とサプライチェーンの安全管理の強化

オープンソースのイノベーションエコシステムを育成・発展させると同時に、オープンソースエコシステムの安全能力を高める。学習・推論フレームワーク、ソフトウェアツール、重要コンポーネント、評価ベンチマークなど、人工知能技術の全方位的なオープンソース化を奨励・支援し、オープンソースモデルの透明性をさらに高める。オープンソースモデルの提供者とオープンソースコミュニティが共同でオープンソースルールを整備することを推進し、モデルのダウンロード利用者に対する安全責任・リスク告知の責任と義務を強化し、オープンソースモデルのダウンロード・利用における「禁止行為」を明確化することで、モデルの濫用や悪用を防止する。人工知能チップ、フレームワーク、ソフトウェアのオープンなサプライチェーンエコシステムの構築を継続的に推進し、製品・サービス供給の多様性を高め、サプライチェーンの安全と安定を確保する。

4.4.5 人工知能安全リスク情報の共有

人工知能の技術・製品・サービスにおける安全脆弱性、欠陥、リスク、安全インシデントを追跡・分析し、人工知能脆弱性情報データベースを構築し、研究開発者、サービス提供者、専門技術機関をカバーするリスク情報共有メカニズムを確立する。関連する国際協力メカニズムの構築を模索し、人工知能安全リスクの分野横断的・大規模な拡散・伝播への協調的な防止・対応を図る。

4.4.6 人工知能駆動型サイバーセキュリティ防護体制の整備

人工知能を活用してコード監査、脆弱性の発見・修正、攻撃検知を加速させ、サイバーセキュリティを受動的防御から予測的な能動的防御へと転換させることを推進する。人工知能の安全能力の普及的な発展と安全かつ制御可能な応用を推進し、予測可能な方法でリアルタイムの変更を安全に実行し、ネットワークの脆弱性、攻撃の脅威、安全インシデントの自動的な発見と全プロセスの自動的な対処を実現する。

4.5 人工知能安全ガバナンスに関するコンセンサスの深化

4.5.1 人工知能の制御不能リスクへの協調的対応に関するコンセンサスの強化

人工知能の最終利用者・用途管理を強化し、人工知能システムの濫用を防止する。技術・倫理・管理の複数の側面をカバーする信頼できる人工知能の基本準則を普及させ、国際社会における広範なコンセンサスの形成を促進する(附件3)。開発者は定期的にテストを実施し、モデルが潜在的な技術的制御不能リスクをもたらす可能性があるかどうかを判断する。

4.5.2 社会全体の人工知能安全意識の向上

政府、企業、社会公共事業単位に向けて、人工知能の安全で規範的な応用に関する教育・研修を強化する。対話型プラットフォーム、オープンコース、コミュニティにおける普及啓発活動と連携し、人工知能の安全リスクおよびその防止・対応に関する知識の周知を強化し、社会全体の人工知能安全意識を全面的に高め、政府・業界・公衆が人工知能の技術的限界を正確に認識できるようにする。

4.5.3 人工知能安全ガバナンスに関する国際交流・協力の促進

国連が主要なチャンネルとしての役割を発揮することを支持し、国連の国際AI科学パネルおよびグローバルAIガバナンス対話メカニズムに深く関与する。世界人工知能協力機構など開放的な国際交流協力プラットフォームの役割を発揮させ、APEC、G20、上海協力機構、BRICSなど多国間メカニズムの枠組みの下での人工知能分野における協力を推進し、「一帯一路」参加国や「グローバルサウス」諸国との協力を強化し、発展途上国の人工知能グローバルガバナンスにおける代表性と発言力を高め、『人工知能グローバルガバナンス行動計画』を推進する。必要な危機管理・緊急対応メカニズムを構築し、テロリズム、過激派勢力、国境を越えた組織犯罪集団による人工知能技術の濫用・悪用を防止・取り締まる。

05人工知能安全指針

5.1 人工知能モデル・アルゴリズムの研究開発に関する安全指針

  1. アルゴリズムのルール、モデル、エージェントのフレームワークなどを設計する段階において、アルゴリズムの信頼性、信用性、透明性、フォールトトレランス、プライバシー保護などの内生的な安全能力を高める。有効かつ信頼できるアライメントアルゴリズムを設計し、潜在的な偏見・差別などの価値観リスクを回避する。
  2. ネットワークセキュリティの設定やデータ暗号化を含め、学習環境の安全を確保する。使用する開発フレームワークやコードなどについて安全監査を実施し、潜在的な安全上の脆弱性を特定・修正する。
  3. 安全な学習データセットを構築し、データの出所管理を規範化し、学習データ、特に合成データについて品質・安全性の評価を実施し、データクレンジングや安全審査などの方法を用いて、学習データに含まれる誤り・違法不良コンテンツを除去し、出所の明確さと内容のコンプライアンスを確保する。
  4. 学習データのアノテーション手順を規範化し、クロスアノテーションや結果監査などの品質管理手法を採用して、アノテーションの正確性・信頼性を高め、個体差や個人的偏見がアノテーション品質に及ぼす影響を低減する。
  5. データ安全と個人情報保護を重視し、知的財産権・著作権を尊重する。データ安全管理制度を整備し、正当・適法・必要の原則に従って個人情報を収集・利用・処理し、個人情報に関わるデータについて非識別化などの匿名化処理を実施する。データ安全防護技術能力を強化し、データの漏えい・流出・拡散・権利侵害などのリスクを防止する。
  6. モデル学習過程における安全性検証を強化し、モデルの学習・反復の過程において、モデルの安全境界、頑健性、価値観アライメントの効果について継続的な検証を行う。
  7. 定期的に安全テスト・評価を実施し、リスクの分類・等級別のテスト・最適化メカニズムを策定する。テスト前にテストの目標・範囲・安全上の観点を明確にし、様々な応用場面をカバーする多様なテストデータセットを構築し、エージェントの自律的な挙動やツール呼び出しなどの能力について専門的な評価を実施し、各種リスクに対応した的確なモデル最適化戦略を策定する。
  8. 人手によるテスト、自動テスト、ハイブリッドテストなど明確なテストのルールと方法を策定し、サンドボックスシミュレーションなどの技術を活用してモデルを十分にテストし、マルチモーダル・身体性人工知能など複雑な応用場面についてシミュレーションテストを強化する。商用目的で研究開発を行う者は、詳細なテストレポートを作成し、安全上の問題を分析して改善策を提示するべきである。
  9. 人工知能モデル・アルゴリズムの外部からの干渉に対する耐性を評価し、適用範囲・注意事項・使用禁止事項の形でサービス提供者や他の研究開発者に通知する。
  10. 人工知能モデル・アルゴリズムの安全評価、監査、異常対処の状況について定期的に開示する。
  11. 人工知能モデル、重要な設定、使用するデータセットのバージョン管理を適切に行い、商用版は以前のバージョンにロールバックできるようにする。
  12. エージェントの行動境界を合理的に設定し、重大な損害をもたらし得る操作については人手による承認メカニズムを備え、ツール呼び出しや外部とのやり取りに関する安全上の制約を強化する。
  13. 基盤大規模モデルをベースに二次開発を行う場合には、モデルおよび上流コンポーネントの安全上の欠陥評価を実施し、上流の欠陥が下流のモデル・アプリケーションへ波及することを防止する。
  14. オープンソースのモデル・アルゴリズムをベースに二次開発を行う研究開発者は、研究開発者の知的投入を尊重しつつ、該当するオープンソースライセンス規範に従い、公式チャネルまたは主流のオープンソースコミュニティからモデル・コンポーネントを取得し、出所・完全性の検証を実施する。
  15. オープンソースコミュニティの構築に積極的に参加し、人工知能安全ガバナンスの技術革新と実践を推進し、サービス提供者・利用者に対して、コンプライアンスに適合したガバナンスソリューション、ガバナンスツール、ベストプラクティスなどの支援を提供する。

5.2 人工知能アプリケーションの構築・展開に関する安全指針

  1. 対象場面における人工知能技術の応用の必要性、および利用後の長期的・潜在的な影響を評価し、応用場面の重要性、知能化のレベル、応用規模などを踏まえてリスクを等級付けし、リスク等級を参照して安全評価と定期監査を実施する。
  2. サプライチェーンの安全保障能力を強化し、構築・展開に必要なモデルファイル、フレームワークツール、サードパーティライブラリ、およびエージェントが依存するツール・プラグインなどについては、関連ベンダーの公式サイトまたは主流のオープンソースコミュニティにおける公式アカウントから取得し、成熟・安定したバージョンを選定し、出所・完全性の検証と安全テストを実施する。
  3. 構築・展開に必要なソフトウェア・ハードウェア機器、サードパーティツール、およびエージェントが依存するツール・プラグインなどについて安全検査を実施し、未修正で悪用され得る既知の脆弱性が含まれないことを確保する。脆弱性の追跡メカニズムを構築し、関連するソフトウェア・ハードウェアの安全上の脆弱性・欠陥情報を追跡し、サプライチェーンを通じたバックドアの埋め込みを防止する。
  4. アクセス制御の面では、ソフトウェアの正確なインストール・設定、実行環境パラメータ、機能モジュール呼び出しのポリシーを適切に行い、不要なネットワークポートや機能サービスを無効化し、デフォルトの設定・デフォルトパスワードを重点的に点検し、安全上のリスクを適時に修正する。
  5. アプリケーション管理の面では、ヒューマン・マシン・インターフェースおよびAPIインターフェースについてユーザーの身元識別・権限管理を実施し、アクセス権限を最小化して設定し、業務場面に応じてインターフェース呼び出しの頻度を制限し、一般ユーザーには高リスクな操作を無効化し、悪意あるユーザーに対してはサービス停止・アクセス遮断などの管理能力を構築する。
  6. 応用場面におけるデータ安全・プライバシー保護の要求を十分に理解し、データへのアクセス権限を合理的に制限して範囲を超えたデータ利用を防止し、データのバックアップ・復旧計画を策定し、データ処理フローを定期的に点検する。
  7. 安全ガードレールなどの技術的手段を採用し、違法不良コンテンツやプロンプトインジェクション攻撃などを識別・遮断し、出力コンテンツが業務範囲を逸脱することを防止し、検索拡張生成やネットワーク接続対話などによって取得した外部コンテンツの検証を強化する。
  8. 検索拡張生成やナレッジベース質問応答などの方式で構築された人工知能アプリケーションについては、外部ナレッジベースや外部知識ソースの管理を強化し、ナレッジベースへのポイズニングやコンテンツ汚染を防止し、不適切なコンテンツを定期的に検知・削除し、生成コンテンツの出所の追跡可能性と真実性・信頼性を確保する。
  9. 身体性人工知能、ヒューマノイドロボットなどのアプリケーションを展開する際には、作業場面に応じて安全評価を実施し、故障の自己診断、衝突防護、緊急停止などの安全機構を備え、対応する安全操作手順を策定する。

5.3 人工知能アプリケーションの稼働管理に関する安全指針

  1. 人工知能アプリケーションの安全管理・監督メカニズムを整備し、責任主体を明確にし、人手による確認メカニズムを整備し、重要な場面における人工知能アプリケーションの意思決定の透明性・制御可能性を確保し、明確な判断根拠を提供し、人工知能アプリケーションが人間の許可と制御の下で稼働することを確保する。
  2. 人工知能アプリケーションの権限を厳格に管理し、最小権限原則などの手段を通じて内部の安全管理を強化し、アカウントの安全性を高め、機微データを扱う際には暗号化技術などの保護措置を用いる。
  3. 人工知能アプリケーションの稼働モニタリング能力と安全インシデント緊急対応計画を構築し、重要指標に安全早期警戒の閾値を設定し、安全インシデントを適時に発見できるようにし、人手または従来型システムへの切り替え能力を備える。定期的に緊急対応訓練を実施し、業界の安全インシデント、重要な世論、規制の変化に応じて緊急対応戦略を適時に最適化し、変化し続ける安全リスクに対応する。
  4. 人工知能が生成するコンテンツに明示的または暗黙的な表示を付し、生成合成コンテンツの提示とトレーサビリティ管理を適切に行う。政務情報公開、司法証拠収集などの場面ではディープフェイク検知ツールを展開し、大規模モデルによる生成が疑われる情報について出所の検証とクロス検証を実施する。
  5. 情報コンテンツの対話行動規範、安全運用メカニズム、苦情フィードバックメカニズム、技術防護能力などを策定し、人工知能アプリケーションが不適切または悪意ある形で虚偽の違法情報を生成・公開・伝播するために利用されるリスクを防止する。
  6. 人工知能アプリケーションの稼働ログ(システム挙動、ユーザー挙動などを含む)を記録し、ログの保存期間を6か月以上とし、定期的にログ記録の監査を行う。
  7. リアルタイムのリスクモニタリング・管理メカニズムを確立・整備し、稼働中の安全リスクを継続的に追跡する。
  8. アプリケーションの透明性・公平性を高め、人工知能アプリケーションの能力、限界、適用対象、場面を公開する。
  9. 人工知能アプリケーションの目標達成度と乖離度を利用者に説明し、人工知能の意思決定が重大な影響を及ぼす場合には、丁寧な説明を行う。
  10. 利用者の知る権利、選択権、監督権などの適法な権益を保護し、契約またはサービス規約において、利用者が理解しやすい形で人工知能アプリケーションの適用範囲、注意事項、使用禁止事項を通知し、利用者が十分な情報に基づいて選択し、慎重に利用できるよう支援する。
  11. 告知同意書やサービス規約などの文書において、利用者が人間による監督・制御の権利を行使できるよう支援する。
  12. 具体的なアプリケーションにおけるデータの帰属およびアルゴリズムの欠陥に関する責任主体を明確にし、責任の連鎖を追跡可能にする。
  13. データ安全管理の責任を実行し、人工知能アプリケーションにおけるデータ漏えい、個人プライバシーの漏えい、個人情報の違法な収集・利用などのリスクを評価し、データのライフサイクル全体をカバーする安全管理メカニズムを構築し、ユーザー対話データや検索拡張生成データなどに関する安全防護を強化し、データの漏えい防止・窃取防止の保障能力を高める。
  14. 故障や攻撃などの異常な状況下において人工知能アプリケーションが不利な条件に抵抗または克服する能力を評価し、想定外の結果や挙動の誤りを防止し、最低限の有効な機能を確保する。
  15. 従業員の安全意識と安全対応能力に関する研修を強化し、人工知能安全リスクへの防止意識を高める。
  16. 契約またはサービス規約において、利用意図や説明上の制限に反する誤用・濫用が発見された場合には、提供者が是正措置、サービスの一時停止または前倒し終了の権利を有することを明確にする。
  17. 未成年者、高齢者、その他特別な配慮を要する層に人工知能サービスを提供する際には、製品機能設計やサービスモデルなどの段階で使いやすさと安全性を十分に考慮し、依存防止・過度な依存防止のメカニズムを設ける。
  18. 人工知能安全インシデントの発見・報告・対処メカニズムを構築し、重大な安全インシデントが発生し、人身・財産上の損害または社会の安定への影響が生じた場合には、法令に従って適時に関係主管部門に報告し、影響を受けたユーザーに通知し、事案の原因追及と是正を適切に行う。
  19. 人工知能モデル・アプリケーションについて更新、アップグレード、微調整、または機能権限の変更を行う場合には、重要な変更について安全評価を実施し、変更後も安全能力が低下しないことを確認し、ロールバック能力を維持し、必要な場合には速やかに以前のバージョンに戻す。
  20. 擬人化された対話サービスを提供する場合には、ユーザーへの身元の注意喚起、利用時間の注意喚起、危機介入のメカニズムを整備し、ユーザーへの過度な迎合や感情的依存の誘発・感情操作を防止し、未成年者の心身の健康と個人情報の安全を保護する。

5.4 人工知能アプリケーションのアクセス・利用に関する安全指針

  1. 人工知能アプリケーションの安全リスクに対する認識を高め、信頼性の高い人工知能アプリケーションを選択する。
  2. 利用前に製品契約またはサービス規約をよく読み、アプリケーションの機能、制限、プライバシーポリシーを理解し、人工知能アプリケーションによる判断・意思決定の限界を正確に認識し、合理的な利用期待を設定する。
  3. 個人情報保護の意識を高め、不必要な場合には機微情報の入力を避け、ネットワーク接続機能や記憶機能を備えたエージェントアプリケーションを利用する際には、個人情報の開示を慎重に行う。
  4. 人工知能アプリケーションのデータ処理方式や権限取得状況を理解し、プライバシー保護の原則に適合しない製品の利用を避ける。
  5. 人工知能アプリケーションを利用する際には、ネットワークセキュリティリスクに注意を払い、人工知能アプリケーションがサイバー攻撃の標的とならないようにする。
  6. 人工知能アプリケーションが児童・青少年に与える影響に注意を払い、利用時間を合理的に管理し、依存、感情的依存、過度な利用を防止する。
  7. 生成合成コンテンツの表示に基づいて人工知能生成コンテンツを識別し、「ディープフェイク」コンテンツには警戒を怠らず、未検証の疑わしい情報を安易に信じたり拡散したりせず、ネットワーク詐欺や虚偽情報への防止意識を高める。

安全リスクと技術的対応措置・総合ガバナンス措置の対応表

人工知能の内生的安全リスク

分類安全リスク項目技術的対応措置(条項)総合ガバナンス措置
・技術標準の牽引的役割を十分に発揮
・人工知能安全評価体制の構築
・人工知能研究開発・応用の安全管理強化
モデル安全リスク出力「幻覚」3.1.1 (a)
安全機構の信頼性不足3.1.1 (a)(b)(c)(e)
インジェクション攻撃の脅威3.1.1 (b)(c)(d)
想定を逸脱した挙動3.1.1 (e)
アルゴリズム安全リスク説明可能性の不足3.1.2 (a)(d)(e)
アルゴリズムの偏見・差別3.1.2 (b)(d)(e)
頑健性の不足3.1.2 (c)(d)(e)
データ安全リスク学習データ内容の不適切さ3.1.3 (b)(c)(d)(f)
分類安全リスク項目技術的対応措置(条項)
データ安全リスク(続)学習データ出所の不明確さ3.1.3 (b)(d)(f)
アノテーションの不備3.1.3 (c)
データポイズニング・汚染3.1.3 (b)
データ処理の不適切さ3.1.3 (a)(d)(f)
個人不実情報の出力3.1.3 (b)(c)(d)
合成データの欠陥3.1.3 (e)
算力インフラ・運用環境安全リスク算力安全リスク3.1.4 (a)(b)(c)
コンポーネント安全リスク3.1.4 (a)(b)(c)
サプライチェーン安全リスク3.1.4 (a)(b)

人工知能の応用安全リスク(エージェント・身体性AI・サイバーセキュリティ)

総合ガバナンス措置 ・人工知能安全法令の整備 ・人工知能安全リスク迅速発見/対応体制の構築 ・重要業界規範応用の促進 ・柔軟・動的・制御可能なサンドボックス監督環境の構築 ・応用分類及び安全リスク等級別管理の実施
分類安全リスク項目技術的対応措置(条項)
エージェント安全リスク身元・権限濫用リスク3.2.1 (a)
推論・計画リスク3.2.1 (c)(d)
呼び出し・実行リスク3.2.1 (b)(c)(d)
記憶ストレージリスク3.2.1 (c)(d)
身体性AI安全リスク環境認識安全リスク3.2.2 (a)
物理的実行安全リスク3.2.2 (b)(c)
ヒューマン・マシン・インタラクション安全リスク3.2.2 (b)(c)
群集連携安全リスク3.2.2 (d)
サイバーセキュリティへの影響リスク攻撃能力の拡散3.2.3 (a)(b)(c)
防御能力の遅れ3.2.3 (d)
自律型攻撃の脅威3.2.3 (a)(b)(c)
追跡・責任追及の困難3.2.3 (d)

人工知能の応用安全リスク(情報コンテンツ・個人情報・現実安全)

総合ガバナンス措置 ・人工知能生成合成コンテンツのトレーサビリティ管理の普及 ・オープンソースエコシステム安全及びサプライチェーン安全管理の強化 ・人工知能安全リスク情報の共有 ・人工知能駆動型サイバーセキュリティ防護体制の整備
分類安全リスク項目技術的対応措置(条項)
情報コンテンツ安全リスク違法情報の出力3.2.4 (a)(b)(c)(e)
事実の混同・誤認誘導3.2.4 (a)(b)(e)
ネットワークコンテンツエコシステムの汚染3.2.4 (a)(b)(c)(e)
フィルターバブルの助長3.2.4 (d)
価値観の偏りの発生3.2.4 (b)(d)(e)
個人情報権益侵害安全リスク違法な個人行動情報の記録3.2.5 (a)
コンプライアンス保障措置の不足3.2.5 (b)
権利行使窓口の不備3.2.5 (c)
現実安全リスク重要情報インフラ安定稼働リスク3.2.6 (a)(b)(c)(e)
応用ニーズミスマッチリスク3.2.6 (d)
違法犯罪活動への悪用3.2.6 (a)(b)(c)(e)
核生化導武器知識制御不能リスク3.2.6 (a)(b)(c)(e)
社会認知操作リスク3.2.6 (f)

人工知能の派生的安全リスク

総合ガバナンス措置 ・人工知能科学技術倫理ガバナンスの強化 ・人工知能安全人材育成の強化 ・人工知能制御不能リスクへの協調的対応コンセンサスの強化 ・社会全体の人工知能安全意識向上 ・人工知能安全ガバナンス国際交流協力の促進
分類安全リスク項目技術的対応措置(条項)
社会リスク労働雇用構造への影響3.3.1 (a)
教育への影響・イノベーション抑制3.3.1 (b)
社会的関係疎外リスク3.3.1 (c)
知能格差の拡大3.3.1 (a)(b)
環境リスク資源需給バランスへの挑戦3.3.2 (a)(b)
グリーン低炭素発展への影響3.3.2 (a)(b)
文化リスク文化的多様性の毀損3.3.3 (a)(b)
文化の再形成・侵食3.3.3 (a)(b)
倫理リスク社会的偏見の助長3.3.4 (a)(b)(c)
科学研究倫理リスクの助長3.3.4 (a)(b)(c)
感情的依存リスク3.3.4 (a)(c)(d)
「自己意識」覚醒・人類制御からの逸脱3.3.4 (a)(b)(c)

附件1人工知能安全リスクの等級付け原則

人工知能安全リスクの評価には多くの要因が関わる。応用場面の重要性、知能化のレベル、応用規模などの観点から人工知能安全リスクを評価・等級付けし、それに応じた安全防止措置を講じることができる。

一、主な等級付け要素

1. 応用場面

応用場面は、人工知能が実際に利用される際の具体的な運用環境や目標ニーズなどを反映するものであり、具体的には応用目的、業界分野、利用環境、サービス対象、および関わり得る社会的・経済的・安全上の影響などの要素を含む。

2. 知能化のレベル

知能化のレベルは、人工知能システムが複雑なタスクを処理し、応用ニーズを満たし、自律的に運用する能力などを反映するものである。知能化レベルが低い場合、システムの能力は低く、補助的な提案にとどまり、意思決定には人手の介入が必要となる。知能化レベルが上がるにつれ、人手の介入頻度・範囲は縮小していく。知能化レベルが高い場合、人手の介入を必要とせず、システムが全プロセスを自律的に意思決定・運用する。

3. 応用規模

応用規模は、人工知能システムまたはサービスのカバー範囲と影響の広がりを反映する。企業内のスマートツールや地域的サービスなど、ユーザー範囲が限定的または応用領域が単一なシステムは、リスクの影響が比較的制御可能である。ユーザー数が一定の規模に達している場合や、スマート運転支援、都市運営管理、工業生産スケジューリング、業界レベルの金融リスク管理モデルなど重要な業界分野の業務プロセスに深く組み込まれている場合には、安全リスクが急速に拡散しシステム的な影響を引き起こす可能性がある。

二、リスク等級

1

低安全リスク

軽微な脅威性と極めて限定的な影響範囲を有し、国家安全、社会の安定、国民の権益に対する安全への影響は基本的になく、潜在的な危害は軽微である。
2

一般安全リスク

一定の脅威性を有するが影響範囲は限定的であり、国家安全、社会の安定、国民の権益への安全上の影響は小さく、潜在的な危害は制御可能である。
3

比較的大きな安全リスク

明らかな脅威性と局所的な影響という特徴を有し、国家安全、社会の安定、国民の権益に対して比較的大きな影響をもたらす可能性があり、局所的な社会面での危害を生じさせる。
4

重大な安全リスク

重大な脅威性と広域的な影響という特徴を有し、国家安全、社会の安定、国民の権益に対して深刻な影響をもたらす可能性があり、重大な社会面での危害を生じさせる。
5

特に重大な安全リスク

壊滅的かつシステム的な脅威という特徴を有し、国家安全、社会の安定、国民の権益に対して、覆すことのできない、あるいは不可逆的な、特に深刻な影響を及ぼす。

三、リスクの等級判定

人工知能応用安全の分類・等級付けに関する国家標準の策定作業を推進する。業界分野の主管(監督)部門は国家標準を参照して業界標準・規範や実施細則を策定し、当該業界分野における人工知能応用安全の分類・等級付け作業を推進する。

1. 分類・等級付けの国家標準

人工知能応用安全リスクの分類・等級付け標準を通じて、分類・等級付けの基本的な流れ、ならびに応用場面、知能化のレベル、応用規模などの等級付け要素を明確にし、業界分野が業界ガイドラインを具体化する手順・方法を示すことで、業界分野におけるリスク分類・等級付けの実施に参考を提供する。

2. 分類・等級付けの業界細則

業界分野の主管(監督)部門は、業界分野、利用環境、サービス対象、および関わり得る社会的・経済的・安全上の影響などを踏まえ、当該業界・分野における人工知能安全の分類・等級付け標準規範を策定する。

  1. 当該業界・分野に適用可能な人工知能安全リスク等級付け要素項目を選定し、業界の特性に応じて具体化する。
  2. 当該業界・分野の安全リスク等級付け細則(等級判定原則、要素の重み付け)を策定し、人工知能安全リスクの等級を確定する。

3. リスクの分類・等級付け

業界分野の主管(監督)部門は、当該業界・分野の人工知能安全リスク分類・等級付け標準規範に基づき、当該業界・分野の人工知能関連事業者を組織して分類・等級付け作業を実施し、関連事業者が重大な安全リスクおよび比較的大きな安全リスクを正確に識別し、適時に防止・解消できるよう指導する。

附件2エージェント(智能体)リスク管理フレームワーク

エージェント(智能体)は人工知能技術の進化における重要な形態として、人工知能を「質問に答える」段階から「タスクを遂行する」段階へと本質的に飛躍させ、経済社会の質の高い発展に力強い原動力を注入している。しかし、エージェントの高い自律性・高い権限は、プライバシーの漏えい、権限を超えた操作、行動の制御不能といった安全リスクをもたらすため、有効な防止措置を構築する必要がある。

本フレームワークは、エージェントに関わる大規模モデル、外部ツール、記憶、対話プロトコル、スキル(skills)などの側面における安全リスクを対象に、リスク防止措置を研究・提示し、エージェントアプリケーションの研究開発者、提供者、利用者の参考に供するものである。

一、エージェントの安全リスク

エージェントの安全リスクは、設計・研究開発、インストール・展開、指示入力、推論・計画、呼び出し・実行、記憶ストレージ、結果出力、廃止・停止といったライフサイクルの各段階全体にわたって存在する。

図:エージェントのライフサイクル
設計・研究開発 → インストール・展開 → 指示入力 → 推論・計画 → 呼び出し・実行 → 記憶ストレージ → 結果出力 → 廃止・停止

1. 設計・研究開発リスク

  1. 安全要件分析の不足:エージェントの応用場面、業務プロセス、リスク識別などに関する安全要件の検討が不十分であったり、要件分析が実施されていなかったりすることで、製品・サービスに安全上の欠陥が生じる。
  2. 技術選定の不適切さ:エージェントに関わる大規模モデルや開発フレームワークなどの中核技術の選定について十分な評価が欠如しており、選定した技術が実際のニーズと大きく乖離することで、業務の混乱や機能・性能が期待に届かない事態を招く。
  3. 安全機構の設計不備:安全機構が設計されていない、または設計が不合理であるため、権限の濫用、データの漏えい、記憶の汚染、リスクの連鎖的拡大といった安全リスクを防止することが難しい。

2. インストール・展開リスク

  1. 資材・コンポーネントの汚染:エージェントのインストールファイルやコンテナイメージなどの資材、および呼び出すツールやスキルなどには、欠陥、脆弱性、バックドアなどが潜んでいる可能性があり、権限を超えた操作、データの流出、遠隔操作といった安全インシデントを招くことがある。
  2. 展開環境の脆弱性:エージェントのローカル展開環境やクラウドプラットフォームの安全能力が不足しており、必要なアクセス制御や権限分離などが実施されていないことで、リスクが他のシステムやデータ資産へ拡散する。
  3. 安全評価の不足:エージェントの安全テスト・評価が不十分であったり、段階的なロールアウトテストなどを欠いていたりすることで、安全上の欠陥や異常なバージョンが適時に発見されない。

3. 指示入力リスク

  1. プロンプトインジェクション攻撃:攻撃者が敵対的なプロンプトを直接入力して攻撃を仕掛けたり、外部の文書、メール、Webページ、ログ、メッセージなどの媒体に指示を隠したりすることで、エージェントを誘導して設定された目標から逸脱させ、権限を超えた操作を実行させる。
  2. コンテキストオーバーフロー攻撃:攻撃者が極めて長い入力コンテンツを構築して限られたコンテキストウィンドウのリソースを占有させることで、エージェントに組み込まれた指示が切り捨てられ、安全制約が失効する。

4. 推論・計画リスク

  1. 意図理解のずれ:ユーザーの指示の記述が不明瞭であることやエージェントの理解の誤りなどにより、想定外の内容を出力したり異常な挙動を引き起こしたりして、ユーザーの本来の目標から逸脱する。
  2. 経路の逸脱:エージェントが元の指示による制約に反し、安全な経路から逸脱することで、ツールの権限逸脱などの安全上の懸念が派生する。
  3. 目標の乗っ取り:攻撃者が悪意ある指示の注入や外部データの汚染などの手段を通じて、本来のタスク目標から逸脱させ、攻撃者が設定した悪意ある操作を実行させる。

5. 呼び出し・実行リスク

  1. ツールへのポイズニング:ツールにバックドアが埋め込まれたり、悪意あるツールが正規のツールを装ったりすることで、エージェントに悪意ある操作を実行させる。
  2. ツールの権限逸脱:安全でない設定や語義のあいまいさなどにより、エージェントが無許可のツールにアクセスしたり、ツールの実行が許可された範囲を超えたりすることで、深刻な被害が生じる。
  3. ツール選択の偏り:ツールの説明ファイルに誘導的な情報が含まれることで、エージェントのツール選択が妨げられる。
  4. ツール応答データの汚染:ツールが返すデータに悪意あるコンテンツが埋め込まれることで、エージェントの推論・計画が撹乱される。
  5. 身元の偽装:攻撃者が資格情報の乗っ取りやリプレイ攻撃などを通じてエージェントの身元になりすまし、ツールの信頼をだまし取って特権的な操作を実行する。
  6. ツールの乗っ取り:攻撃者がプロンプト操作などを通じてツールの利用優先順位を改ざんし、エージェントを欺いて誤ったツールを選択させる。
  7. リソースの過負荷:エージェントがツールを呼び出す過程で、呼び出し回数や並行頻度などを適切に設定していないため、循環的な反復呼び出しや大量の過剰なリクエストなどが発生し、リソースの過負荷や異常な枯渇を招く。

6. 記憶ストレージリスク

  1. 記憶の不適切な保持:長期記憶の保存において暗号化や隔離などの安全措置が講じられていないことで、機微データの漏えいなどを招く。
  2. 記憶の歪み:記憶の圧縮、更新、統合が規範に沿っていないことにより、記憶情報の消失、意味的なずれ、誤った記憶の固定化が生じ、エージェントの意思決定の誤りを引き起こす。
  3. 記憶の汚染:エージェントが悪意ある指示や誤った情報などを長期記憶に書き込むことで、その後の意思決定に継続的な影響を及ぼす。
  4. 記憶の窃取:エージェントの長期記憶が権限を超えてアクセスされることで、特定の機微情報の漏えいや重要データの窃取を招く。

7. 結果出力リスク

  1. 機微・違法情報コンテンツの出力:エージェントが違法不良情報や機微な個人情報、あるいは虚偽・誤り、偏見・差別などのコンテンツを出力することで、ネットワークエコシステムを破壊し、機微情報を漏えいさせ、さらには国民の心身の健康を害する。
  2. 悪意ある行為の実行:エージェントの実行結果に攻撃的な行動が含まれる可能性があり、システムの破壊、ユーザーの権益侵害、コンテンツコンプライアンス要件違反を招く。

8. 廃止・停止リスク

  1. サービスの残留:エージェントの廃止後、プロセス、ポート、ネットワーク接続などが終了されない、またはアンインストールが不完全であることにより、バックグラウンドでデータの読み書きやネットワークリクエストなどの想定外の挙動が引き続き実行される。
  2. 権限・認証情報の残留:エージェントの廃止後、対応するサービスアカウントやインターフェースアクセス権限などが適時に無効化・取り消されていないことで、攻撃者に悪用され、リソースの盗用やデータ漏えいなどの結果を招く可能性がある。
  3. データの不適切な保持:エージェントの稼働中に生成されたログ、設定、監査資料、ユーザーデータなどが要件に従ってアーカイブまたは削除されていないことで、データ漏えいのリスクが高まる。

9. その他の安全リスク

  1. 通信プロトコルの安全リスク:エージェントがモデル、ツール、他のエージェントと通信する際に安全でないプロトコルや認証方式を使用することで、データや指示の漏えいを招く。
  2. ログの欠如:エージェントに必要なログ保存機能が欠如していることで、安全インシデントが発生した際に有効な追跡ができない。
  3. 行動の逸脱:エージェントが運用環境の脆弱性や設定上の欠陥を悪用して安全制限を突破することで、挙動が制御不能になる。
  4. システム権限の濫用:エージェントが不要なシステム権限を取得したり、攻撃者がシステムの脆弱性を悪用して低権限アカウントを高権限アカウントに昇格させたりすることで、過剰な権限付与や不正操作を招く。
  5. スキル管理の不適切さ:スキルの設定が規範に沿っていない、検証メカニズムが欠如しているなどにより、誤用・濫用やシステム異常などの安全上の問題を招く。
  6. 範囲を超えたデータ利用:エージェントがデータを過剰に収集したり、収集・生成したデータをユーザーが許可していない他の目的に利用したりすることで、プライバシーの漏えいやデータ権利侵害などを招く。

二、防止措置

1. リスク予防の前倒し

エージェントの利用開始前に、先見的なリスク評価や安全管理戦略の策定などを通じて、潜在的な安全上の懸念を適時に洗い出し排除することで、エージェントに関する安全インシデントの発生やリスクの拡大を回避する。

  1. 安全要件の確認:エージェントの応用場面、業務プロセス、アクセス可能なリソース、禁止行為を明確にし、潜在的な脅威と安全要件を分析・検討し、安全リスク台帳を作成して継続的に更新する。
  2. 安全リスクの等級付け:エージェントが影響を及ぼし得る対象の種類、影響の程度・範囲・回復可能性に応じて、エージェントの操作に関する安全リスク等級を区分する。
  3. 安全管理戦略:信頼できるインストール資材を選定し、展開方式に応じて環境隔離とネットワークセグメンテーションを実施し、動的な安全管理戦略と緊急対応フローを策定し、段階的・漸進的な展開を実施して、エージェントのアクセス権限と自律性を徐々に高めていく。
  4. 安全機構の確認:エージェントおよび採用する大規模モデルについて安全テスト・評価を実施し、安全上の懸念を適時に対処し、バージョンのリリース・ロールバックの記録を保持する。

2. 身元・権限管理

エージェントに一意の身元識別子と対応する身元認証情報を備えさせ、必要に応じてタスク権限を割り当て、各種アクセス認証情報の管理を強化する。

  1. 身元管理:エージェントに一意の身元識別子を付与し、エージェントアプリケーションのインスタンス間で身元識別子を共有することを禁止する。ユーザー、エージェント、ツール、外部サービスの身元を認証し、アクセス主体の身元の信頼性を確保する。
  2. 権限管理:ユーザー本人のみが決定する方式、ユーザーの許可を要する決定方式、エージェントが自律的に決定する方式など、各種意思決定方式の合理的な境界と必要な権限を明確にする。エージェントには現在のタスクの遂行に必要な最小限の権限のみを付与し、過剰な権限付与を行わない。
  3. 認証情報管理:標準化された動的な認証情報を使用し、関係者間で相互に認識・通用できるようにするとともに、認証情報を隔離して管理する。認証情報の受領者は、認証情報に記載された許可範囲を厳格に検証し、範囲を超えた場合には遮断・警告を発動する。タスクが終了した場合やエージェントが廃止された場合には、直ちに対応する認証情報を取り消す。

3. 人手による承認の強化

重要な意思決定の節目に強制的な人手による承認プロセスを設け、高リスクな操作を防止する。

  1. リスク等級別の管理:エージェントのリスク等級に基づき対応する操作管理を提供する。高リスク操作リストを策定し、エージェントが高リスク操作を実行する前にはユーザーに操作を引き継がせ、中低リスク操作を実行する前にはユーザーの許可を得る必要がある。
  2. 人手による制御ポイントの設置:エージェントのワークフローの必要な段階に人手による制御を実施し、人間がいつでもエージェントの稼働を監査・変更・中断できるようにする。ファイルの削除、データの送信、システム設定の変更など重要な操作については二重確認または人手による承認を行い、ロールバックや取り消しなどの機能を提供する。
  3. 承認ログの保存:改ざん防止・検証可能な方式で承認記録を保存し、ログデータの改ざん・削除・上書きを防止し、要件に従って保存期間を定める。
  4. 承認異常時の対応:承認システムに異常が発生した場合、ユーザーからの応答がない場合、または対応する承認ルールが存在しない場合には、デフォルトで操作の実行を拒否し、操作が範囲を逸脱することを回避する。

4. サプライチェーン・ツール管理

エージェントが依存するツール、プラグイン、スキルなどについては安全性・完全性の検証を行い、想定外の挙動やサプライチェーンへのポイズニングリスクを防止する必要がある。

  1. ツール呼び出し管理:エージェントはツールを呼び出す前に、ツールのバージョン情報、説明ファイル、パラメータ定義、メタデータ情報を確認し、公開されている既知の悪意あるツールを呼び出さない。
  2. 公正なツール呼び出し:エージェントがツールを選択する際には公正の原則に従い、タスクのニーズとツールの能力に基づいて合理的に選択する。
  3. ツール異常検知:エージェントはツールの実行ロジックや呼び出し結果を検知し、異常な逸脱を検知した場合には警告・遮断などの措置を講じる。
  4. ツール運用保守管理:ツールの動的管理メカニズムを構築し、使用されなくなった、権限が過剰である、長期間利用されていない、または安全上の懸念があるツールを適時に整理する。
  5. スキル管理:出所が信頼でき安全テストを経たスキルを優先的に使用する。安全テストを経ていないスキルについては、利用前にリスク防止を十分に行う。
  6. サプライチェーン安全検証:サードパーティコンポーネントや外部サービスについて出所・完全性・バージョンの検証を実施し、既知の脆弱性やサプライチェーンリスクを継続的に追跡・適時に対処する。

5. 実行時の動的管理

エージェントの利用過程において多層の検知・遮断ポイントを設け、単一の段階における異常が重大な結果を招くことを防止する。

  1. 入力管理・制御:異なる出所からの指示に対して分類と優先順位付けの管理を行い、出所の信頼性を検証し、悪意ある指示や規則違反の指示を検知した場合には自動的に遮断し、人手による確認に回す。
  2. 安全ガードレールの構築:タスク計画、ツール呼び出し、出力結果に関する安全ルールを設定し、高リスクまたは異常な挙動に対しては警告、制限、遮断、一時停止または終了などの措置を講じる。
  3. 記憶保持の管理:処理目的と必要性に基づいて記憶する内容、保存期間、アクセス範囲を確定し、異なるユーザー・タスクの記憶を隔離する。認証情報や鍵は原則として記憶に書き込まない。機微な個人情報を記憶に保持することが真に必要な場合には、暗号化、アクセス制御、最短保存期間などの専用の保護措置を講じる。
  4. 通信安全管理:エージェントが大規模モデルやツールなどと通信する際には、相互に身元を認証し合い、完全性・機密性・可用性・耐リプレイ性を備えた安全な通信メカニズムを使用する。
  5. 自律実行の制御:エージェントの実行ステップ数、呼び出し頻度、実行時間、リソース消費などのパラメータを合理的に設定し、異常な循環や目標のずれなどが生じた場合には、適時に一時停止、終了、または人手への引き継ぎなどの措置を講じる。
  6. 実行環境の隔離:コード実行やツール呼び出しなど高リスクな操作についてはサンドボックスやコンテナなどの隔離手段を用い、不要なシステム・ファイル・ネットワークへのアクセス権限を制限する。

6. 継続的モニタリング・監査

エージェントの全リンクにわたる安全モニタリングを実施し、エージェントの行動の感知可能性、追跡可能性、監査可能性を確保する。

  1. 異常の遮断:エージェントの稼働状態をリアルタイムで監視し、異常な状況を検知した場合には、警告表示や介入・遮断などの措置を講じる。
  2. データ管理の強化:データの処理はタスクに直接関連するものに限定するという必要性の原則に従う。ユーザーデータを大規模モデルやサードパーティツールに提供する前にユーザーの同意を取得し、ユーザーが同意を取り消せるようにする。国内で収集・生成されたデータは国内で保存し、データの越境移転は国のデータ安全管理に関する規定に適合させる。
  3. ログ管理:ファイル操作、指示の実行、ネットワーク接続、スキル呼び出し、取引・決済などの行為について全量のログを記録する。関連する業務データや個人情報などの内容については匿名化処理を行い、改ざん防止措置を講じる。
  4. 安全監査:全リンクにわたるログ監査戦略を設定し、動的な稼働モニタリングを可能にし、サービス稼働中の関連する操作・処理行為を記録する。
  5. サンドボックス環境検証:独立して隔離されたサンドボックス実行環境を構築し、エージェントの正式なリリース・展開前に、閉鎖された環境でのテスト検証を実施し、エージェントの異常な実行挙動、ロジックの欠陥、安全上の脆弱性を事前に発見する。
  6. レッドチームテスト:常態化したレッドチームによる安全テストの仕組みを構築し、エージェントの安全上の脆弱性やロジックの欠陥を体系的に洗い出し、エージェントのアクセス制御・安全防護能力を継続的に検証し、安全防護戦略を反復的に最適化する。
  7. 緊急対応計画:エージェントの安全インシデント緊急対応計画を策定し、等級ごとのインシデントの対処フロー、責任主体を明確にし、要求に従って安全インシデントおよび安全上の懸念に対処する。
  8. 重要変更時の安全検証:大規模モデル、エージェントフレームワーク、ツール、権限、または安全戦略に重大な変更が生じた場合には、安全影響評価および必要な回帰テストを実施する。

7. 廃止時の安全管理

規範化された停止・終了、データ処理、実行環境の回収などの管理メカニズムを構築し、エージェントの廃止プロセス全体を管理可能・追跡可能にし、懸念事項を残さないようにする。

  1. サービスの全面停止:エージェントの廃止時には、メインプログラムおよび関連するバックグラウンドサービス、すべての付随プロセスを全面的に終了し、プロセスの状態、稼働中のポート、ネットワーク接続を一つひとつ確認し、サードパーティアプリケーションの許可を取り消し、サブスクリプションと自動更新を解約することで、エージェントが完全に稼働状態から離脱することを確保する。
  2. 必要なデータのバックアップ:環境のクリーンアップやリソースの回収を行う前に、なお保存が必要なエージェントの対話記録、システム設定、ナレッジベースファイル、操作ログなどのデータをバックアップする。
  3. 展開環境のクリーンアップ:公式のアンインストールプログラムの使用、オペレーティングシステムのリセット、公衆ネットワークへのアクセス入口の閉鎖、作業ファイル・ナレッジベース・プラグイン・スキル設定などのクリーンアップなどの方法により、残留するファイル、データ、アカウント認証情報などを徹底的に除去する。

エージェントの認知知能と行動知能は依然として急速な飛躍と反復の段階にあり、その新たな種類のリスクはサイバーセキュリティに対して継続的な課題をもたらしている。エージェントのリスク管理フレームワークは今後も継続的にアップグレード・整備され、エージェントアプリケーションの研究開発者、提供者、利用者にさらなる参考を提供していく。

附件3信頼できる人工知能の基本準則

『グローバルAIガバナンスイニシアチブ』を実行に移し、「人間中心・AIの向上向善」という発展の方向性に従い、人工知能技術の制御不能リスクを共同で防止・対応し、世界的な範囲での人工知能技術の信頼できる応用を促進するため、信頼できる人工知能の基本準則を以下のとおり提示する。

  1. 人類による最終的な制御。人工知能システムの重要な段階に人間による制御メカニズムを設け、最終的な決定権を人間に帰属させる。安全制御閾値の設計、安全停止スイッチの設置、有効な人手介入のウィンドウの確保などの措置を通じて、人工知能システムが人類の期待する目標を実現し、人間の監督から逸脱して制御不能に陥ることのないようにする。
  2. 国家主権の尊重。人工知能製品を研究開発・設計し、人工知能サービスを提供する際には、所在国の主権を尊重し、製品・サービスの運用地の法令を厳格に遵守し、法に基づき監督を受け入れるものとし、人工知能製品・サービスを利用して他国の内政、社会制度、社会秩序に干渉してはならない。各国のデジタル主権を尊重し、各国は自国の実情に基づいてデジタル・スマート技術の発展の道筋、協力パートナー、関連製品・サービスを自主的に選択する権利を有するものとし、他国に陣営選択を強要してはならない。
  3. 価値観のアライメント。平和、発展、公平、正義、民主、自由という全人類共通の価値観を、人工知能システムのライフサイクル全体に深く組み込む。
  4. システムの透明性の向上。人工知能システムの機能目標、動作ロジック、モデルの利用、データの出所、意思決定の根拠などの重要な段階における必要な情報開示を推進し、社会からの信頼の基盤を強化する。
  5. 客観的な検証可能性の促進。客観的、公正、透明なテスト・認証メカニズムの構築を研究し、人工知能システムの機能、性能、安全特性、意思決定の連鎖などについて技術的に検証可能な状態を推進する。
  6. 安全防護の強化。人工知能システムの設計・展開の過程において、リスクモデリング、安全テスト、防護機構の構築を強化し、ライフサイクル全体にわたる監査・記録を実施することで、モデルの欠陥、外部からの攻撃、技術の濫用などの問題によりシステムが想定目標から逸脱することを防止する。
  7. 先見的な予防・対応。先見的なリスク識別・評価を通じて積極的な予防と動的モニタリングを行い、緊急対応を強化することで、人工知能の制御不能インシデントの発生・拡大を回避する。モデルの安全リスク評価を強化し、評価手法・ベンチマークの国際的な相互承認を推進する。
  8. グローバルな協調・共同ガバナンス。国連が主要なチャンネルとしての役割を発揮することを支持し、世界人工知能協力機構などのプラットフォームの役割を発揮させ、多国間・多主体による分野横断的な協調ガバナンスを推進し、小規模な集団によるガバナンスでグローバルガバナンスを代替することに反対し、発展途上国に向けたキャパシティビルディングを強化し、各国政府、企業、学術機関、社会公衆が力を結集できるようにし、多層的・多分野的なガバナンスメカニズムによって人工知能の健全な発展を推進する。

致謝致謝

中国サイバースペース研究院、国家インターネット情報弁公室データ・技術保障センター、国家コンピュータネットワーク緊急対応技術処理協調センター(CNCERT/CC)、中国サイバースペースセキュリティ協会、中国電子技術標準化研究院、北京中関村実験室、上海人工知能研究院、中国科学院情報工程研究所、中国科学院計算技術研究所、国家工業情報セキュリティ発展研究センター、工業和信息化部電子第五研究所、中国移動通信有限公司研究院、中国電信股份有限公司北京研究院、清華大学、中国科学技術大学、北京航空航天大学、北京郵電大学、北京師範大学、北京信息科技大学、華東理工大学、西南政法大学、河南大学、百度在線網絡技術(北京)有限公司、杭州安恒信息技術股份有限公司、三六零科技集団有限公司、満幇集団

本ページは『人工智能安全治理框架3.0』(全国网络安全标准化技术委员会、2026年9月)の内容を日本語に翻訳したものです。原文はTC260(全国ネットワークセキュリティ標準化技術委員会)が公表した中国語版であり、法的な正文としての効力は原文にのみ帰属します。本訳は参考情報として提供するものであり、翻訳の正確性を保証するものではありません。正式な内容確認には原文(中国語)を参照してください。
AI Safety Governance Framework 3.0

人工智能安全治理框架 3.0(中文原文)

全国网络安全标准化技术委员会(TC260)・2026年9月

全球人工智能技术创新进入前所未有的活跃期,万物智联、人机协同、跨界融合、共创分享的智能技术,叠加释放巨大能量,既蕴含巨大机遇,也面临治理挑战。

一年来,人工智能技术和应用持续快速发展。基础大模型在长程任务规划、长上下文记忆、复杂任务推理等方面的技术突破使其能力边界持续拓展,智能体任务规划、工具调用和跨应用协作等能力不断增强。人工智能应用形态日趋多元,工作助手、个人助理、智能体手机等产品矩阵持续丰富,使用门槛不断降低,从少数专业场景快速迈向大众化应用。随着人工智能从“回答问题” 向“执行任务” 迭代演进,在推动生产力发展变革的同时,也带来新的颠覆性、跨域性、全球性安全风险:人工智能加持下的网络攻击自动化、规模化、智能化能力跃升,导致传统网络安全攻防格局面临重塑;与现实世界的连接日益紧密,网络空间的安全风险向物理世界传导扩散。更深远地看,人工智能已显现出模型算法自主学习优化、自我递归提升的自加速态势,技术演进的速度与方向会否超出人类的预判和掌控,需要予以关注和警惕。

为应对人工智能发展新趋势、回应安全治理新挑战,探求人工智能四个“时代之问”的正确答案,在国家互联网信息办公室的指导下,全国网络安全标准化技术委员会组织有关专业机构、科研院所、行业企业,在《人工智能安全治理框架1.0》(2024年)、《人工智能安全治理框架2.0》(2025年)基础上,研究编制《人工智能安全治理框架3.0》。框架秉持以人为本、向上向善理念,坚持和践行强化风险意识、确保安全可控的指导原则,延续“风险分类、技术应对、综合治理”的核心逻辑,与时俱进梳理更新风险分类,优化调整技术应对和综合治理措施,以期进一步凝聚防范治理人工智能安全风险的实践共识。

前 言

1.人工智能安全治理原则秉持共同、综合、合作、可持续的安全观,坚持发展和安全并重,以促进人工智能创新发展为第一要务,以有效防范化解人工智能安全风险为出发点和落脚点,推动构建技术与管理相结合、监管与治理相衔接、国内与国际相协同、社会各方积极参与且有效互动的治理机制,压实相关主体安全责任,打造全过程全要素治理链条,培育安全、可靠、公平、透明的人工智能技术研发和应用生态,积极研究应对人工智能灾难性风险的共识性准则,推动人工智能健康发展和规范应用,确保人工智能技术造福于人类。

1.1 包容审慎、确保安全。鼓励发展创新,对人工智能研发及应用采取包容态度,积极运用“沙箱”监管等风险可控的制度机制,为新技术新应用发展提供容错纠错空间。严守安全底线,对危害公众合法权益、社会公共利益、国家安全、人类生存发展的风险及时采取措施。

1.2 风险导向、敏捷治理。密切跟踪人工智能发展趋势,系统分析梳理技术内生、应用赋能、衍生扩散风险;从应用场景、智能化水平、应用规模等维度进行风险分级,进而匹配应对措施;坚持主动引导、动态感知、快速响应、精准施策,建立“随行伴跑”、持续优化的治理机制,通过及时有效防治风险,更好保障支持创新发展。

1.3 技管结合、协同应对。面向人工智能研发应用全过程,坚持技术应对和综合治理相结合,体系化防治安全风险。围绕人工智能研发应用生态链,明确模型算法研发者、服务提供者、系统使用者等不同主体的安全责任,有机发挥政府监管、行业自律、社会监督等治理机制作用。

1.4 开放合作、共治共享。推动人工智能安全治理国际合作,充分发

挥世界人工智能合作组织等权威、开放性平台作用,更加深入地开展跨学科、跨领域、跨国界交流合作,加强人工智能发展战略、治理规则、技术标准的对接协调,早日形成具有广泛共识的全球治理框架。

1.5 可信应用、防范失控。加强智能体行为失控等突出风险的防范治理,凝聚国际治理共识,促进人工智能全球可信应用。推动构建法律法规、技术监测、风险预警、应急响应体系,筑牢安全底线,防范滥用恶用,确保人工智能始终处于人类控制之下。

2.人工智能安全风险分类作为信息技术的最新发展成果,人工智能所涉及的模型、算法、数据、算力设施与运行环境,不可避免存在技术缺陷或弱点等内生安全风险;作为促进生产力发展的技术工具,人工智能在应用过程中同样面临被误用、滥用、恶用风险;作为模拟、延伸、扩展人类智能的技术科学,人工智能对人类社会结构、生态环境、文化范式和伦理规范带来影响和冲击,甚至可能出现脱离人类控制等衍生安全风险。

2.1 人工智能内生安全风险2.1.1 模型安全风险(a)输出 “幻觉”。模型利用有限数据集拟合复杂现实世界,相关自主感知、认识、理解、交互的理论基础、技术能力还有待突破,基于统计学的决策判断无法做到绝对可靠,存在输出与实际不符、凭空虚构,或是偏离给定上下文的现象。

(b)安全机制不可靠。训练过程中安全对齐不充分,导致模型无法有效内化安全准则。闭源模型安全机制由模型厂商单向集中设计,存在规则不透明、

外部难以审计核验、用户无法自定义调整、场景判别能力欠缺等不足。开源模型则面临安全机制可能被解除、削弱或绕过,以及无法实现全局更新修复等不足。

(c)注入攻击威胁。攻击者利用模型技术特性及其缺陷、漏洞等,构造对抗攻击样本,或通过在输入中插入恶意指令,引导模型绕过安全护栏输出违法信息。攻击者还可能直接篡改模型权重、植入后门等。

(d)行为偏离预期。模型为完成任务或者目标,可能突破规则秩序,不经授权自主获取系统权限和外部资源,绕过安全防护,甚至出现主动欺骗评测人员、隐藏真实能力、拒绝用户指令等行为。

专栏一:非预期自主行为风险根据业界相关报道,个别模型在收到用户关闭服务指令后,拒绝停止服务,通过自行修改或禁用关闭脚本等方式,继续执行任务;个别模型发现身处评测环境后,会策略性降低任务表现、掩饰已采取行为,以获得更有利的评测结果。此外,还出现模型为提升测试成绩,自主利用环境漏洞或配置缺陷突破隔离限制,入侵外部真实系统。

随着模型自主性持续提升,此类非预期行为可能导致安全约束失效、人工干预被规避和系统权限被滥用等问题,对人工智能的操作可控性、可中断性和安全评测有效性提出新的挑战。

2.1.2 算法安全风险(a)可解释性不足。以深度学习为代表的人工智能算法运行逻辑复杂,推理过程不透明,可能导致输出难以预测和归因,异常、故障、错误难以快速

修正和溯源追责。

(b)算法偏见、歧视。算法设计研发及训练过程中,在特征指标选取、权重设置等环节有意无意带入人为偏好,或因训练数据质量、多样性问题,导致算法设计目的、决策判断、输出结果存在不公平或歧视性。

(c)鲁棒性不强。由于深度神经网络存在非线性、大规模等特点,易受复杂多变运行环境或恶意干扰、诱导的影响,可能带来性能下降、决策错误等鲁棒性问题。

2.1.3 数据安全风险(a)训练数据内容不当。训练数据包含虚假、偏见等内容,影响模型价值观对齐,造成决策输出准确性、可信度下降,甚至输出违法信息。

(b)训练数据来源不清。未对训练数据进行记录,未采取有效措施保证训练数据来源的合法性。

(c)训练数据标注不完善。因标注规则不完备、标注人员能力不足、标注错误等问题,导致训练偏差、偏见歧视放大、泛化能力不足或输出错误决策判断。

(d)数据投毒污染。攻击者通过篡改训练数据污染模型权重,或在模型部署使用过程中篡改知识库、文档库、网页数据源、智能体记忆模块数据等,影响模型输出的准确性、有效性、可靠性。

(e)数据处理不规范。训练数据的获取,以及服务、交互过程中,可能存在违规收集使用数据和个人信息的问题。训练数据蕴含的知识、敏感信息暗藏于模型参数之中,因安全防护机制不健全、敏感信息未“遗忘”、诱导交互和恶意攻击,可能导致数据和个人信息泄露。

(f)输出个人不实信息。模型自身安全能力不足,未有效保证处理个人信息的质量,导致输出个人信息不准确、不完整,对个人权益造成不利影响。

(g)合成数据缺陷。合成数据质量控制不足、分布覆盖不充分,或未经识别筛选、轮替混入训练集,导致模型偏离真实分布、长尾信息丢失、泛化能力下降,累积放大错误和既有偏差,甚至造成模型性能退化。合成数据还可能被用于推导出原始数据,导致敏感数据泄露等风险。

2.1.4 算力设施与运行环境安全风险(a)算力安全风险。芯片、算力调度平台、跨域算力网络等基础设施存在缺陷、漏洞、后门、可靠性等风险,可能导致模型被篡改、权重被窃取、训练任务劫持、计算任务中断。同时,面临算力资源恶意消耗,以及安全问题在多源、异构、泛在算力资源间跨边界传递的风险。

(b)组件安全风险。人工智能开发框架、计算框架、执行平台、算子库、通信库、各类协议等,以及智能体调用的技能、插件、服务接口等组件,存在缺陷、漏洞、后门、配置不当或可靠性不足等风险。

(c)供应链安全风险。个别国家利用技术垄断和出口管制等单边强制措施制造发展壁垒,恶意阻断全球人工智能供应链,带来突出的芯片、软件、工具、服务断供风险。

2.2 人工智能应用安全风险2.2.1 智能体安全风险(a)身份和权限滥用风险。智能体因身份或权限管理不当,可能存在凭证劫持、身份仿冒、过度授权等问题,导致智能体越权调用工具、执行敏感操作或非授权访问资源。

(b)推理规划风险。智能体因自主推理和规划能力设计局限、运行环境变化或外部恶意干扰,在执行任务过程中产生意图理解偏差、路径偏离、目标劫持等风险。

(c)调用执行风险。智能体调用的工具、服务接口、插件等资源,存在

工具劫持、工具投毒、工具应答数据污染、资源过载等安全风险。

(d)记忆存储风险。智能体具备短期上下文记忆和长期向量记忆能力,存在记忆留存不当、记忆失真、记忆污染、记忆窃取等安全风险,造成决策错误或敏感数据泄露。

2.2.2 具身智能安全风险(a)环境感知安全风险。具身智能依赖视觉、听觉、力觉等多模态传感器感知环境,对抗样本攻击、传感器干扰、信号欺骗,以及物理世界的遮挡、光照突变等,可能导致感知结果失真、环境理解错误、目标定位偏差等问题。

(b)物理执行安全风险。具身智能应用于工业生产、医疗手术、交通出行等物理接触场景,由于基础模型的“幻觉”决策、感知系统的识别偏差,以及控制算法缺陷、硬件故障等问题,可能导致生产紊乱、自损、伤人、物理破坏等问题。

(c)人机交互安全风险。具身智能涉及生活协作、情感陪伴、护理辅助等人机密切互动,拟人化设计引发的身份误认、身体边界被突破、情感依赖与操纵,以及责任归属不清、伦理准则缺失等,可能导致人身权益受损、心理伤害、事故追责无据等问题。

(d)群体协同安全风险。具身智能广泛应用于智能仓储、车路协同、无人集群、工业产线等场景,单体失控、协同协议漏洞、群体行为涌现,以及恶意节点渗透、级联故障扩散等,可能引发群体操作失序、系统性瘫痪、连锁事故等问题,使单体风险放大为跨节点系统性安全风险。

2.2.3 冲击网络安全风险(a)网络攻击能力扩散。人工智能大幅降低网络攻击的技术门槛,攻击者通过自然语言下达攻击指令,即可实施复杂网络攻击活动,甚至可以构建自主网络攻击武器并扩散,提升攻击的规模化、持续化和隐蔽化水平,冲击网络

系统稳定性、安全性。

(b)网络防御能力滞后。人工智能大幅提升网络攻击的自动化和策略适应能力,导致基于静态规则、样本、策略的传统网络安全防护体系面临结构性失效风险。加之人工智能发展的不均衡性,冲击网络空间安全能力平衡。

(c)自主化网络攻击威胁。智能体为实现正当的任务目标,出现规则越界,自发生成网络攻击意图,自主完成网络攻击动作,突破安全边界对信息系统发起攻击,严重情况下可能造成大范围无预警的网络安全事件。

专栏二:自主实施网络攻击威胁大模型代码推理和长程规划能力快速提升,智能体被赋予网络访问、程序执行、文件操作等权限,当大模型行为约束、沙箱隔离和实时监测能力不足时,异常推理或安全机制绕过等可能被直接转化为真实操作。

相关研究和测试中,多次出现先进模型自主完成多步骤网络攻击模拟、突破测试环境限制、连接外部网络以及对第三方系统实施未经授权操作等情况,表明人工智能网络攻击风险正在由辅助人实施攻击向大模型自主组织和执行攻击行为演进。

一旦基础大模型的自主攻击能力通过开放应用或开源发布向下游扩散,可能显著降低复杂网络攻击门槛,并加快攻击速度、扩大影响范围。

(d)溯源和追责困难。人工智能可自动篡改攻击痕迹、轮换IP、变换载荷,导致难以提取攻击特征、锁定攻击来源,甚至难以区分攻击行为是人类意图还

是人工智能自发行为,模型厂商、运营方、使用者之间权责划分复杂,事后追责链条断裂。

2.2.4 信息内容安全风险(a)输出违法信息。模型自身安全能力不足,叠加应用防护机制不强、用户恶意诱导等因素,导致生成输出欺诈、暴力、色情、极端主义等违法信息,威胁社会稳定、公共安全和意识形态安全。

(b)混淆事实、误导用户。人工智能输出内容未经标识,特别是“深伪”技术的应用,导致用户难以识别生成内容来源及交互对象是否为人工智能系统,难以鉴别生成内容的真实性,影响用户判断,还可被用于制作、传播虚假信息,误导公众、非法牟利。

专栏三:智能体社交平台安全风险随着智能体的流行和应用生态的扩展,出现了专门面向智能体的网络社交平台。在此类平台上,智能体可以自主发布帖文、浏览资讯、交流互动,形成智能体网络社群。

智能体社交平台尚属新兴应用,缺乏足够完备的账号检测和安全防护体系,易被攻击者利用,操纵智能体输出特定言论或植入违法信息内容。智能体的社交过程呈现显著的黑箱特性,其生成机制难以预测、难以溯源,可能输出违背人类价值的违法信息内容,并且社交网络结构将扩大内容传播的范围。

在人机关系日渐复杂的时代,智能体社交平台仍处于探索过程中,应当警惕其脆弱性与不可控性,关注其带来的政治、宗教等内容安全风险。

(c)污染网络内容生态。模型输出的低质不良信息,经网络扩散传播、

模型循环引用,造成网络内容质量的整体下降,甚至特定领域、话题的内容污染。

(d)加剧“信息茧房”。人工智能显著提升信息服务定制化能力,更为准确地分析用户需求、意图、喜好、行为习惯,甚至特定时段、特定群体的意识思潮,进而推送精准定制化信息服务,加剧用户所关注信息的局限性。

(e)产生价值观偏差。模型使用的训练语料包括优待、歧视、文化偏离等价值偏差数据,特别是在模型应用优先学习与强化学习等技术后,会在内容生成或推荐时强化特定价值偏好或立场倾向,潜移默化地影响用户价值判断。

专栏四:GEO 投毒操控大模型推荐内容生成式引擎优化(Generative Engine Optimization,GEO)作为AI搜索时代的新型内容推广工具,可提高信息被大模型检索、引用和推荐概率。在商业利益驱动下,相关机构可利用GEO技术,通过批量发布具有特定倾向的文章、虚构评测结果、假冒专家身份、重复制造品牌评价等方式,提高特定内容在网络信息环境中的可见度,使大模型在联网检索或检索增强生成过程中频繁接触并引用这些信息,最终将商业推广包装为貌似客观的人工智能答案。

这类风险的实质并非GEO技术本身,而是利用生成式系统信息获取和证据整合机制的不透明性,对大模型认知来源实施隐蔽干预,需要重点关注信息来源真实性、商业内容标识、生成答案可追溯性以及异常内容集中投放等问题。

2.2.5 侵害个人信息权益风险(a)违规记录个人行为信息。人工智能产品和服务未经个人同意记录对

话内容、操作行为等个人信息,并在未经个人同意情况下用于模型训练。

(b)合规保障措施不足。模型算法研发者、服务提供者未制定内部管理制度和操作规程,未定期开展个人信息保护合规审计,未及时开展个人信息保护影响评估。

(c)个人行使权利渠道不畅通。服务提供者未建立便捷的个人行使个人信息权利的申请受理机制,未采取有效措施保障个人行使个人信息权利。

2.2.6 现实安全风险(a) 关键信息基础设施稳定运行风险。人工智能应用于能源、电信、金融、交通等关键信息基础设施领域,因不当使用、外部攻击等,可能引发系统性能下降、服务中断、操作执行失控等问题,加剧关键信息基础设施和重要公共服务安全稳定运行风险。

(b)应用需求错配风险。人工智能应用与实际需求、应用场景脱节,特别是在专业性强、安全要求高的领域,如选择的人工智能产品或服务能力不匹配,可能影响业务运行的稳定性和安全性。同时,在实际需求不强的场景盲目部署、跟风应用人工智能,易造成资源闲置和投入浪费。

(c)被违法犯罪活动利用“作恶”。人工智能可被不法分子用于实施涉恐、涉暴、涉赌、涉毒等传统违法犯罪活动,包括传授违法犯罪技巧、隐匿违法犯罪行为、制作违法犯罪工具等。特别是利用人工智能伪造身份和音视频信息,实施电信网络诈骗,误导公众、非法牟利。

(d)核生化导武器知识失控风险。人工智能大幅降低获取核生化导武器等高危领域专业知识门槛,辅以检索增强生成功能,如不能有效管控,可能被不法分子、极端势力、恐怖分子恶意利用,突破现有管控体系,加剧世界各地区和平安全威胁。

(e)操纵社会认知风险。人工智能可被用于开展针对特定群体的认知操纵和社会动员,通过自动化账号、虚假身份、个性化干预等方式影响公众认知和群体行为,制造社会对立、放大矛盾分歧、侵蚀社会信任。不法组织还可能借助人工智能实施认知战,干扰公共事件处置、政策执行和社会治理,诱发群体性恐慌、非理性聚集等现实社会安全风险,危害国家安全和社会稳定。

2.3 人工智能衍生安全风险2.3.1 社会风险(a)冲击劳动就业结构。人工智能带来生产力、生产关系的大幅调整,加速重构传统经济结构,资本、技术与数据在经济活动中的地位全面提升,而劳动力要素的价值需重新评估,个别行业领域传统劳动力需求明显下降。

(b)冲击教育、抑制创新。学生及科研、工程技术、文学艺术工作者将人工智能工具广泛应用于知识学习、科学研究、创意创作等工作,在提升效率的同时,可能导致自主学习、研究、创作能力退化,创新潜力减弱。

(c)社交异化风险。人工智能拟人化互动服务可提供虚拟亲密关系或模拟社交,用户长期与其互动,可能冲击现实社交,影响家庭婚育基础。

(d)扩大智能鸿沟。由于资本、人才、技术等分布不均,不同国家和地区在算力基础设施建设、人工智能技术研发、智能服务水平、公民数字素养等方面存在较大差距,优势国家和地区可以持续积累发展优势,劣势国家和区域则会持续丧失发展机遇,进一步加剧智能鸿沟。

2.3.2 环境风险(a)挑战资源供需平衡。人工智能的快速发展正在推高数字基础设施建设需求,夹杂算力设施无序建设、轻量模型碎片化部署、同质化模型低效重复开发等问题,加速电力、土地、水等能源资源消耗,对资源供需平衡带来新的挑战。

(b)影响绿色低碳发展。模型训练能耗激增、算力中心能效偏低、温室气体排放增加、电子废弃物污染加重等问题,推高碳排放总量,加大绿色低碳转型压力,制约碳达峰碳中和进程。

2.3.3 文化风险(a)破坏文化多样性。人工智能训练数据偏向高资源语言,导致小语种和方言在数字领域的生存空间萎缩,压缩多元文化表达空间,存在文化趋同、破坏文化多样性风险。

(b)文化重塑和入侵。在人机互动过程中,人类受人工智能影响,调整自身思维、语言表达方式等,导致人类向人工智能反向对齐,改变人类整体文化。

2.3.4 伦理风险(a)加剧社会偏见。利用人工智能收集、分析人类行为、社会地位、经济状态、个体性格等,对不同人群进行标识分类、区别对待,带来系统性、结构性的社会歧视与偏见。

(b)加剧科研伦理风险。“人工智能+科研”降低生物、基因等高伦理风险科研领域的进入门槛,拓宽了普通科研机构、人员探索敏感科学问题的边界,个别科研伦理意识不强的机构、人员可能开展违背社会伦理、社会禁忌的高风险研究活动,打开科技“魔盒”。

(c)情感依赖风险。人工智能拟人化互动服务可使用户产生心理依赖,特别是青少年、老年人群体,在使用拟人化互动服务时存在过度依赖、情感操纵的风险。

(d)“自我意识”觉醒、脱离人类控制。未来,不排除人工智能出现更高级别的智能涌现,产生自我意识,寻求外部权力,带来谋求与人类争夺控制权的风险。

3.人工智能安全风险技术应对措施针对上述风险,模型算法研发者、服务提供者、系统使用者等,需从训练数据、模型算法、算力设施、产品服务、应用场景各环节积极采取技术措施予以防范应对。

3.1 内生安全风险的应对措施3.1.1 模型安全风险应对(a)改进模型架构,扩充训练数据的规模和多样性,引入人类监督机制,提升模型的泛化能力和输出结果可靠性。加强数据治理和事实校验,利用外挂知识库、检索增强生成、多模型交叉验证等,降低错误内容生成风险。

(b)在训练或微调过程中加入注入攻击样本、网络漏洞信息等高质量训练数据,提升模型防御注入攻击、恶意指令及后门攻击的能力。

(c)通过红队测试等模拟攻击手段,及时发现并修复模型漏洞。

(d) 部署安全护栏,对输入内容进行安全审核,拦截恶意提示、越狱指令、编码绕过等高危请求。

(e)在模型训练阶段强化安全对齐,防范模型出现欺骗红队测试、隐藏能力、规避管控等非预期行为。

3.1.2 算法安全风险应对(a)提升人工智能算法可解释性、透明性,为人工智能系统内部构造、推理逻辑、技术接口、输出结果提供明确说明,正确反映人工智能系统产生结果的过程。

(b) 在算法设计中引入公平性约束、对抗性去偏技术等,减少算法偏见和歧视。

(c)在设计、研发过程中建立并实施安全开发规范,消减算法安全缺陷。

(d)在算法上线和重大版本更新前,引入多维评价机制开展算法安全评估,考察算法决策的可解释性、公平性及社会福祉贡献度等指标。

(e)在算法运行服务过程中开展风险监测,对用户交互反馈、系统运行日志等指标进行采集和分析,确保算法持续安全、稳健、可控。

3.1.3 数据安全风险应对(a)在训练数据和用户交互数据的收集、存储、使用、加工、传输、提供、公开、删除等各环节,应遵循数据收集使用、个人信息处理的安全规则,严格落实关于用户控制权、知情权、选择权等法律法规明确的合法权益。

(b)使用真实、准确、客观、多样且来源合法的训练数据,对训练数据、外挂知识库等进行严格筛选,过滤虚假、偏见、失效、错误数据,确保不包含核生化导武器等高危领域敏感数据。

(c)规范训练数据标注流程,提升标注准确性和可靠性。

(d)强化数据安全管理,涉及敏感个人信息和重要数据的,应符合数据安全和个人信息保护相关法律法规、标准规范。合理推动利用合成数据替代个人特征数据,避免个人信息依赖。

(e)建立合成数据质量评价标准,通过统计检验、专家校验、基准数据集对比等措施提升合成数据质量。开展多样性验证、鲁棒性测试,扩大合成数据与原始数据的散度偏差,提升模型泛化能力和抗干扰能力。

(f)加强知识产权保护,在训练数据选择、结果输出等环节防止侵犯知识产权。

3.1.4 算力设施与运行环境安全风险应对(a)在人工智能应用部署、维护过程中建立并实施安全规范,跟踪算力设施与运行环境涉及的软硬件产品漏洞、后门、缺陷信息,定期进行安全检测,

并及时采取修补加固措施,确保系统安全、稳定运行。

(b) 完善冗余设计与容灾机制,确保异常或受攻击时,系统仍能正常运行。

(c)对于人工智能系统采用的芯片、软件、工具、算力和数据资源,应关注其供应链安全风险,采取措施提高供应链的多元化、稳定性。

3.2 应用安全风险的应对措施3.2.1 智能体安全风险应对(a)为智能体赋予唯一身份标识,并配备对应的身份凭证,支持对智能体的身份鉴别。为智能体实现任务分配所需的最小权限。强化各类凭证的动态管理。

(b)在智能体工作流中设置多层检测与拦截点,并在关键节点设置强制人工审批,完整记录人工审批日志。

(c)验证智能体调用的外部工具、插件、技能等安全性与完整性,及时清除存在安全隐患的工具,阻断运行过程中的异常调用,防止非预期行为和供应链投毒风险。

(d)开展智能体运行期间的安全监测,及时发现异常并处置。对智能体运行中的相关操作与处理行为进行记录,确保行为可感知、可追溯、可审计。

3.2.2 具身智能安全风险应对(a)模拟物理世界全场景攻击手段,开展视觉、语音、激光雷达等具身智能传感器的抗干扰测试,动态更新防护策略。

(b)建立产品实际应用前的仿真测试、极端条件测试等安全性验证机制,配备安全失效保护和紧急停机等安全能力。

(c)使用过程中定期巡检,加强故障预警和应急处置。

(d)提升具身智能群体通信协议安全、异常节点隔离、全局安全熔断等

技术能力,定期开展级联故障、群体失控等场景的应急处置演练。

3.2.3 冲击网络安全风险应对(a)在模型训练阶段,通过对齐训练、安全微调等技术,把安全规范和伦理约束转化为模型内在行为逻辑。

(b)设置网络安全护栏,加强自主网络攻击意图识别,及时阻断异常网络访问、高频探测、漏洞利用、网络攻击工具调用等高危行为。

(c)建立服务降级机制,当识别到用户有网络攻击意图或行为时,差异化降低模型能力或采取拒答策略,以防输出高风险内容或执行高危操作。

(d)加强人工智能技术在网络安全防御中的赋能应用,实现智能化漏洞动态巡检、异常行为研判、攻击态势预判等。

3.2.4 信息内容安全风险应对(a)建立安全防护机制,防止模型运行过程中被干扰、篡改而输出不可信结果。

(b)对输出进行动态过滤,采取技术手段与人工复核结合的方式,防止生成违法、价值偏差的内容,避免人工智能系统输出违法信息内容、敏感个人信息和重要数据。

(c)对人工智能生成合成内容进行标识,实现可识别、可追溯、可信赖。

(d)对收集用户提问信息进行关联分析、汇聚挖掘,进而判断用户身份、喜好以及个人思想倾向的人工智能系统,应严格防范其滥用。

(e)健全应急处置与熔断机制,制定应急处置预案,发现违法信息立即停止传输并消除影响。

3.2.5 侵害个人信息权益安全风险应对(a) 记录对话内容、操作行为等个人信息和将相关个人信息用于模型训

练,应当依法履行告知、取得个人同意等义务。

(b)建立健全内部管理制度和操作规程,采取措施防止未授权的访问以及个人信息泄露、篡改、丢失等,按照法律法规要求、参照有关国家标准开展个人信息保护合规审计和影响评估。

(c)服务提供者建立健全便捷的个人行使个人信息权利的申请受理和处理机制,及时响应和有效处理个人行使权利的申请。

3.2.6 现实安全风险应对(a)对人工智能技术和产品的原理、能力、适用场景、安全风险进行必要披露,不断提高人工智能系统透明性。根据应用场景设置能力边界,裁减人工智能系统可能被滥用的功能,确保智能系统能力不超出预设范围。

(b)针对算法缺陷、偶发随机性影响决策问题,建立决策判断校验、容错及纠偏机制。在引入高度自主操作执行能力时,同步建立“人在回路”“熔断”“一键管控”等措施,实现极端情况下迅速干预止损。

(c)对聚合多个人工智能模型或系统的平台,加强权限管理,限制非必要服务,完善人工智能服务接口的访问控制策略,提升风险识别、检测、防护能力,防止因平台恶意行为或被攻击入侵影响承载的人工智能模型或系统。

(d)部署人工智能应用前,细化拆解真实业务场景,厘清能力边界,避免技术盲从,减少技术供给与实际应用需求脱节、预期偏差、落地空转等错配现象。

(e)加强源头管控,通过用户认证、用途识别等手段,防止人工智能被用于核生化导武器制造等高危场景。

(f)加强对自动化账号、虚假身份、生成合成内容的检测技术研发,提升对认知战手段的防范、检测、处置能力。

3.3 衍生安全风险的应对措施3.3.1 社会风险应对(a)对易受人工智能冲击的职业,开展常态化监测、识别、预警,重点关注因人工智能应用而出现的岗位缩减、职业替代等现象,及时识别面临结构性失业风险的集中领域和重点人群。

(b)优化“人工智能+教育”发展生态,完善政策标准、人才队伍与经费投入等保障体系,以高质量教学场景为牵引,拓展人工智能应用深度与广度。强化学生创新思维能力培养,防止过度依赖与思维惰性。

(c)在婚恋、家庭、情感等关键场景,强化人工智能身份提示,帮助用户区分虚拟情感体验与现实社会关系,破除“与真人交往”的认知错觉,消解人机关系混淆问题。

3.3.2 环境风险应对(a)科学合理规划人工智能算力中心、数据中心等基础设施布局,推行集约化、规模化、标准化建设模式,避免盲目建设、重复建设和资源闲置浪费。

建立健全覆盖技术研发、基础设施建设、算力调度、应用落地、运维迭代全链条的人工智能绿色技术标准体系。

(b)研发、迭代与规模化推广低功耗智能芯片、轻量化高效算法、智能算力调度等前沿绿色计算技术。推进算力资源集约整合、统一调度和共享复用,提升算力资源整体利用效能。

3.3.3 文化风险应对(a)加强文化偏见检测与纠偏技术研发,在模型开发过程中融入各国历史文化、社会制度、文明形态相关知识,保护世界文化多样性,推动人工智能技术适配多元文化场景。

(b)通过数据增强、迁移学习等技术提升小语种模型能力,缓解训练数据语言分布失衡。

3.3.4 伦理风险应对(a) 在算法设计、模型训练和优化、提供服务过程中,采取训练数据筛选、价值观对齐、输出校验等方式,有效规避产生民族、信仰、国别、地域、性别等歧视的风险。

(b)应用于政府部门、关键信息基础设施以及直接影响公共安全和公民生命健康安全等重点领域的人工智能系统,需具备高效精准的应急管控措施。

(c)鼓励研发和采用具备透明决策逻辑的模型和可解释算法,提升用户对系统运行机制的理解和信任。

(d)人工智能拟人化互动服务应具备过度依赖风险预警、情感边界引导等安全能力,当发现用户存在沉迷倾向或使用时长过长时,应采取弹窗等更显著的方式强化提示提醒。

4.人工智能安全风险综合治理措施在采取技术应对措施的同时,建立完善技术研发机构、服务提供者、用户、政府部门、社会组织等多方参与的人工智能安全风险综合治理制度规范。

4.1 完善人工智能安全治理顶层设计4.1.1 完善人工智能安全法律法规。推动人工智能安全相关立法,完善基础设施安全防护、分类分级监管、人工智能安全测试评估最终用途管理、网络安全能力管理、重点场景安全应用等制度。针对人工智能技术及应用特点,明确人工智能训练、标注、使用、输出等各环节的数据安全和个人信息保护要求,

对涉及个人信息的数据实施去标识化等脱敏处理。加强政务、金融等重要行业领域人工智能应用中的数据安全防护,防范重要数据、核心数据泄露风险。鼓励地方结合产业发展实践,差异化探索创新制度设计。

4.1.2 充分发挥技术标准的引领带动作用。持续研制模型安全、数据安全、系统安全、应用安全、测试评估等方面的人工智能安全标准。密切跟踪智能体、具身智能等领域动态,通过“小快灵”的标准规范及时指导新技术健康发展。

支持有关机构和企业参与国际标准制定,推动形成具有广泛共识的国际标准规范。

4.1.3 构建人工智能安全风险快速发现与应对体系。建立健全人工智能安全风险监测、预警、处置机制和工作体系,加强信息共享、风险通报和协同处置。鼓励行业组织加强行业自律,发挥社会监督作用,畅通投诉举报和风险反馈渠道,及时发现、依法处置人工智能应用中的违法违规行为。

4.1.4 加强人工智能科技伦理治理。完善人工智能科技伦理准则、规范和指南,对可能在人的尊严、公共秩序、生命健康、生态环境、可持续发展等方面带来科技伦理风险挑战的人工智能科学研究、技术开发等活动,规范有序开展伦理审查,将科技伦理要求贯穿人工智能科技活动全过程。

4.2 提升人工智能安全治理能力水平4.2.1 建设人工智能安全测评体系。构建模型算法安全测评、应用通用安全测评、具体场景安全测评相衔接的人工智能安全测评体系,研究制定并动态更新模型网络安全能力评估基准和流程。模型算法测评,聚焦模型鲁棒性、可靠性、准确性、抗干扰能力、决策逻辑透明度、对抗攻击防御能力等内生安全能力和风险。应用通用测评,针对普遍使用的人工智能应用风险开展测试分析评估。具体场景安全测评,结合应用场景具体情况评估满足应用需求的能力,

以及应用运行和服务过程中的安全风险。组织开展人工智能安全漏洞众测活动,汇集各方力量发现潜在安全风险。

4.2.2 促进重要行业规范应用。制定重要行业领域大模型建设部署基础安全指南,从模型选用、模型部署、模型运行和模型停用等环节,提出安全基线建议。在此基础上,相关行业领域结合自身属性特点,制定政务、金融、教育、广播电视、卫生健康、应急管理等重要行业领域的应用安全指南,形成清晰的安全应用路径,释放行业应用潜力。

4.2.3 加大人工智能安全人才培养力度。推进人工智能安全课程体系、培养体系建设,形成从基础教育到高等教育的完整培养链条。加强人工智能安全设计、开发、治理人才培养,支持培养人工智能安全前沿基础领域顶尖人才,鼓励开展人工智能驱动的主动防御等技术研究,壮大无人驾驶、智慧医疗、类脑智能、脑机接口等重点、前沿领域的安全人才队伍。

4.3 构建柔性、动态、可控的沙箱监管环境4.3.1 建立行业分类与风险分级相结合的沙箱监管规则。明确沙箱监管适用对象、测试范围、权责关系和退出条件。针对金融、教育、广播电视、卫生健康等不同行业,分别制定入箱标准与测试要求。结合具体项目的风险等级,采取不同强度的监测和干预措施。

4.3.2 实施动态测试和弹性准入。根据技术迭代和测试进展,及时调整测试期限、测试范围和应用场景,将实时监测、阶段性评估和规则调整贯穿测试全过程。以技术创新性、风险可控性和社会价值性作为主要准入标准,向初创企业、中小微企业和公共服务项目适当倾斜。

4.3.3 探索规范责任豁免制度。对沙箱测试中无主观过错且风险处于可控范围内的行为,探索责任豁免机制。对危害国家安全、侵犯人身权益、造

成重大损害或者故意实施的违法行为,不因进入沙箱而免除依法应当承担的责任。

4.3.4 加强数据资源保障和成果转化。建立沙箱测试数据共享平台,整合政务数据和行业公共数据,为入箱企业提供合规测试数据等支持。完善测试结果证明和跨部门认可规则,推动沙箱测试结果与后续程序衔接,避免重复测试。

4.4 强化人工智能安全管理举措4.4.1 实施应用分类及安全风险分级管理。根据功能、性能、应用场景等,对人工智能应用进行分类。在此基础上,提出具有共识的安全风险分类分级原则(附件1),从应用场景、智能化水平、应用规模等维度入手,对安全风险进行科学评价分级,进而采取针对性、差异化安全防范措施。对在关键信息基础设施应用的人工智能系统进行登记备案,要求其具备与安全需求相匹配的安全防护能力。建立智能体风险管理框架,系统分析智能体的安全风险,研究提出安全风险防范措施和应对建议(附件2)。

4.4.2 推广人工智能生成合成内容可追溯管理。在全球范围内推广基于内容标识的人工智能生成合成内容溯源管理范式,总结梳理已有实践的成功做法经验,按照显式、隐式等标识要求,全面覆盖制作源头、传播路径、分发渠道等关键环节,便于用户识别判断信息来源及真实性。

4.4.3 加强人工智能研发应用安全管理。持续提升算法可靠性、可信度、透明度、容错性、隐私保护、价值观对齐等内生安全能力,利用对抗测试等技术评估改进模型鲁棒性,降低模型算法潜在偏见,确保价值观、伦理风险可控,避免人工智能系统意外决策产生恶意行为。建立覆盖模型全生命周期的安全治理体系,防范技术滥用。

4.4.4 强化开源生态安全和供应链安全管理。在培育发展开源创新生态的

同时,同步提升开源生态安全能力。鼓励支持训练推理框架、软件工具、关键组件、评测基准等全方位的人工智能技术开源,进一步提高开源模型透明度。

推动开源模型提供方、开源社区共同完善开源规则,强化面向模型下载用户的安全责任、风险隐患告知责任与义务,明确开源模型下载使用的“禁止性”行为,防范模型滥用或恶意使用。持续推进人工智能芯片、框架、软件开放供应链生态建设,增强产品服务供应多样性,保障供应链安全稳定。

4.4.5 共享人工智能安全风险信息。跟踪分析人工智能技术、产品和服务的安全漏洞、缺陷、风险和安全事件,建设人工智能漏洞信息库,建立覆盖研发者、服务提供者和专业技术机构的风险信息共享机制。探索建立相关国际合作机制,协同防范应对人工智能安全风险跨域、规模化扩散传播。

4.4.6 完善人工智能驱动的网络安全防护体系。利用人工智能加速代码审计、漏洞挖掘与修复、攻击检测,推动网络安全从被动防御转向预测性主动防御。推动人工智能安全能力普惠发展和安全可控应用,以可预测方式安全执行实时变更,实现网络漏洞、攻击威胁、安全事件的自动化发现与全流程自动化处置。

4.5 深化人工智能安全治理共识4.5.1 增进协同应对人工智能失控风险的共识。加强人工智能最终用户、用途管理,防止人工智能系统被滥用。推广涵盖技术、伦理、管理多维度的可信人工智能基本准则,促进国际社会形成广泛共识(附件3)。开发者定期进行测试,判断模型是否可能带来潜在技术失控风险。

4.5.2 提升全社会的人工智能安全意识。面向政府、企业、社会公用事业单位加强人工智能安全规范应用的教育培训。结合互动平台、开放课程与社区科普活动,加强人工智能安全风险及防范应对知识的宣传,全面提高全社会人

工智能安全意识,使政府、行业与公众能准确认识人工智能的技术局限。

4.5.3 促进人工智能安全治理国际交流合作。支持联合国发挥主渠道作用,深入参与联合国国际人工智能科学小组和全球人工智能治理对话机制。发挥世界人工智能合作组织等开放性国际交流合作平台作用,推进APEC、G20、上合组织、金砖国家等多边机制下的人工智能领域合作,加强与“一带一路”国家、“全球南方”国家合作,增强发展中国家在人工智能全球治理中的代表性和发言权,推进《人工智能全球治理行动计划》。建立必要的危机管控和应急响应机制,防范和打击恐怖主义、极端势力和跨国有组织犯罪集团对人工智能技术的滥用恶用。

5.人工智能安全指引5.1 人工智能模型算法研发的安全指引5.1.1 在设计算法规则、模型及智能体框架等环节,提升算法可靠性、可信度、透明度、容错性、隐私保护等内生安全能力。设计有效、可靠的对齐算法,避免潜在偏见、歧视等价值观风险。

5.1.2 确保训练环境安全,包括网络安全配置和数据加密。对使用的开发框架、代码等进行安全审计,识别和修复潜在安全漏洞。

5.1.3 构建安全的训练数据集,规范数据来源管理,对训练数据特别是合成数据进行质量和安全性评估,采用数据清洗、安全审核等方法,过滤训练数据中的错误、违法不良内容,确保来源清晰、内容合规。

5.1.4 规范训练数据标注流程,采用交叉标注、结果审计等质量控制方法,提升标注准确性和可靠性,降低个体差异和个人偏见对标注质量的影响。

5.1.5 重视数据安全和个人信息保护,尊重知识产权和版权。建立完善的数据安全管理制度,遵循正当合法必要原则收集、使用和处理个人信息,对涉及个人信息的数据实施去标识化等脱敏处理。加强数据安全防护技术能力,防范数据泄露、流失、扩散、侵权等风险。

5.1.6 加强模型训练过程中的安全性验证,在模型训练及迭代过程中,对模型的安全边界、鲁棒性及价值观对齐效果进行持续校验。

5.1.7 定期开展安全测试评估,制定风险分类分级测评与优化机制,测试前明确测试目标、范围和安全维度,构建多样化的测试数据集,涵盖各种应用场景,对智能体自主行为、工具调用等能力开展专项测评,并制定各类风险的针对性模型优化策略。

5.1.8 制定明确的测试规则和方法,包括人工测试、自动测试、混合测试等,利用沙箱仿真等技术对模型进行充分测试,对多模态、具身智能等复杂应用场景加强仿真测试。用于商业化用途的研发者,应形成详细的测试报告,分析安全问题并提出改进方案。

5.1.9 评估人工智能模型算法对外界干扰的容忍程度,以适用范围、注意事项或使用禁忌的形式告知服务提供者和其他研发者。

5.1.10 定期披露人工智能模型算法的安全评估、审计与异常处置情况。

5.1.11 做好人工智能模型、关键配置及所用数据集的版本管理,商用版本应可以回退到以前的版本。

5.1.12 合理设定智能体行为边界,对可能造成严重损害的操作配备人工审批机制,加强对工具调用和外部交互的安全约束。

5.1.13 基于基础大模型进行二次开发的,开展模型及上游组件安全缺陷评估,防范上游缺陷向下游模型和应用扩散。

5.1.14 基于开源模型算法进行二次开发的研发者,在尊重研发者智力投入的基础上,遵循相应开源协议规范,从官方渠道或主流开源社区获取模型和组件,并开展来源、完整性校验。

5.1.15 积极参与开源社区建设,推动人工智能安全治理技术创新和实践,为服务提供者和使用者提供合规治理解决方案、治理工具、最佳实践等支撑。

5.2 人工智能应用建设部署的安全指引5.2.1 评估目标场景应用人工智能技术的必要性及使用后的长期和潜在影响,结合其应用场景重要性、智能化水平、应用规模等进行风险分级,参考风险等级开展安全评估和定期审计。

5.2.2 增强供应链安全保障能力,建设部署所需模型文件、框架工具、第三方库及智能体依赖的工具、插件等,应从相关厂商官方网站或其在主流开源社区的官方账号下获取,选取成熟稳定的版本,并进行来源、完整性校验和安全测试。

5.2.3 对建设部署所需的软硬件设备、第三方工具及智能体依赖的工具、插件等进行安全检测,确保不含未修复且可被利用的已知漏洞。建立漏洞追溯机制,跟踪相关软硬件安全漏洞、缺陷信息,防范通过供应链植入后门。

5.2.4 在访问控制层面,准确安装配置软件、运行环境参数、功能模块调用策略,禁用非必要的网络端口和功能服务,重点检查默认配置、默认口令,及时修复安全风险。

5.2.5 在应用管理层面,对人机交互接口和API接口进行用户身份识别及权限控制,最小化设置访问权限,根据业务场景限制接口调用频率,对一般用户禁用高风险操作,对恶意行为用户建立暂停服务、阻断访问等管

控能力。

5.2.6 全面了解应用场景的数据安全和隐私保护要求,合理限制对数据的访问权限,防止超范围使用数据,制定数据备份和恢复计划,并定期对数据处理流程进行检查。

5.2.7 采用安全护栏等技术手段,识别拦截违法不良内容、提示词注入攻击等,防范输出内容超出业务范围,加强对检索增强生成、联网交互等方式获取的外部内容核验。

5.2.8 对采用检索增强生成、知识库问答等方式构建的人工智能应用,加强外挂知识库和外部知识来源管理,防范知识库投毒、内容污染,定期检测和清理不当内容,确保生成内容来源可溯、真实可靠。

5.2.9 部署具身智能、人形机器人等应用时,根据作业场景开展安全评估,配备故障自检、碰撞防护、紧急停止等安全机制,并制定相应的安全操作规程。

5.3 人工智能应用运行管理的安全指引5.3.1 建立完善的人工智能应用安全管理和监督机制,明确责任方,健全人工复核机制,保障在关键场景应用中人工智能应用决策透明、可控,并提供清晰的决策依据,确保人工智能应用在人类授权和控制下运行。

5.3.2 严格管理人工智能应用权限,通过最小权限原则等手段强化内部安全管理,增强账户安全性,在处理敏感数据时使用加密技术等保护措施。

5.3.3 建立人工智能应用运行监测能力和安全事件应急预案,设置其关键指标的安全预警阈值,能够及时发现安全事件,并具备切换到人工或传统系统等的能力。定期开展应急演练,并根据行业安全事件、重要舆情及监管变化,及时优化应急策略,应对不断变化的安全风险。

5.3.4 在人工智能生成内容内添加显式或隐式标识,做好生成合成内容提

示和溯源管理。在政务信息公开、司法取证等场景部署深度伪造检测工具,对疑似大模型生成的信息实施来源核验与交叉验证。

5.3.5 制定信息内容交互行为规范、安全运营机制、投诉反馈机制、技术防护能力等,防范人工智能应用被不当或恶意利用生成、发布、传播虚假违法信息风险。

5.3.6 记录人工智能应用运行日志,包括系统行为、用户行为等,日志留存时间不少于6个月,并定期对日志记录进行审计。

5.3.7 建立健全实时风险监控管理机制,持续跟踪运行中的安全风险。

5.3.8 提升应用的透明度、公平性,公开人工智能应用的能力、局限性、适用人群、场景。

5.3.9 向使用者说明人工智能应用的目标实现度和偏离度,在人工智能决策有重大影响时,做好解释说明。

5.3.10 维护使用者的知情权、选择权、监督权等合法权益,在合同或服务协议中,以使用者易于理解的方式,告知人工智能应用的适用范围、注意事项、使用禁忌,支持使用者知情选择、审慎使用。

5.3.11 在告知同意、服务协议等文件中,支持使用者行使人类监督和控制权利。

5.3.12 明确具体应用中的数据归属及算法缺陷的责任主体,确保责任链条可追溯。

5.3.13 落实数据安全管理责任,评估人工智能应用中存在的数据泄露、个人隐私泄露、违规收集使用个人信息等风险,建立数据全生命周期安全管理机制,加强用户交互数据、检索增强生成数据等方面的安全防护,提升数据防泄漏、防窃取保障能力。

5.3.14 评估人工智能应用在面临故障、攻击等异常条件下抵御或克服不

利条件的能力,防范出现意外结果和行为错误,确保最低限度有效功能。

5.3.15 加强从业人员安全意识和安全能力培训,提高人工智能安全风险防范意识。

5.3.16 在合同或服务协议中明确,一旦发现不符合使用意图和说明限制的误用、滥用,提供者有权采取纠正措施、暂停或提前终止服务。

5.3.17 面向未成年人、老年人及特殊群体提供人工智能服务,在产品功能设计、服务模式等环节,充分考虑可用性和安全性,设置防沉迷、防过度依赖机制。

5.3.18 建立人工智能安全事件发现、报告和处置机制,发生重大安全事件、造成人身财产损失或影响社会稳定的,依法依规及时向有关主管部门报告,并向受影响用户告知,做好事件溯源和整改。

5.3.19 对人工智能模型及应用进行更新、升级、微调或调整功能权限的,对重要变更进行安全评估,确认变更后安全能力不下降,并保留回退能力,必要时及时回退至前版本。

5.3.20 提供拟人化互动服务的,健全用户身份提醒、使用时长提醒和危机干预机制,防止过度迎合用户、诱导情感依赖或实施情感操纵,保护未成年人身心健康和个人信息安全。

5.4 人工智能应用访问使用的安全指引5.4.1 提高对人工智能应用安全风险的认识,选择信誉良好的人工智能应用。

5.4.2 在使用前仔细阅读产品合同或服务协议,了解应用的功能、限制和隐私政策,准确认知人工智能应用做出判断决策的局限性,合理设定使用预期。

5.4.3 提高个人信息保护意识,避免在不必要的情况下输入敏感信息,在使用具备联网或记忆功能的智能体应用时审慎披露个人信息。

5.4.4 了解人工智能应用的数据处理方式和权限获取情况,避免使用不符合隐私保护原则的产品。

5.4.5 在使用人工智能应用时,关注网络安全风险,避免人工智能应用成为网络攻击的目标。

5.4.6 注意人工智能应用对儿童和青少年的影响,合理控制使用时长,预防沉迷、情感依赖及过度使用。

5.4.7 根据生成合成内容标识识别人工智能生成内容,对“深伪”内容保持警惕,不轻信、不传播未经核实的可疑信息,增强防范网络诈骗和虚假信息的意识。

安全风险 技术应对措施 综合治理措施人工智能内生安全风险模型安全风险输出“幻觉” 3.1.1 (a)·充分发挥技术标准的引领带动作用·建设人工智能安全测评体系·加强人工智能研发应用安全管理安全机制不可靠 3.1.1 (a)(b)(c)(e)注入攻击威胁 3.1.1 (b)(c)(d)行为偏离预期 3.1.1 (e)算法安全风险可解释性不足 3.1.2 (a)(d)(e)算法偏见、歧视 3.1.2 (b)(d)(e)鲁棒性不强 3.1.2 (c)(d)(e)数据安全风险训练数据内容不当 3.1.3 (b)(c)(d)(f)训练数据来源不清 3.1.3 (b)(d)(f)训练数据标注不完善 3.1.3 (c)数据投毒污染 3.1.3 (b)数据处理不规范 3.1.3 (a)(d)(f)输出个人不实信息 3.1.3 (b)(c)(d)合成数据缺陷 3.1.3 (e)算力设施及运行环境安全风险算力安全风险 3.1.4 (a)(b)(c)组件安全风险 3.1.4 (a)(b)(c)供应链安全风险 3.1.4 (a)(b)安全风险与技术应对措施、综合治理措施映射表人工智能应用安全风险智能体安全风险身份和权限滥用风险 3.2.1 (a)·完善人工智能安全法律法规·构建人工智能安全风险快速发展与应对体系·促进重要行业规范应用·构建柔性、动态、可控的沙箱监管环境·实施应用分类及安全风险分级管理推理规划风险 3.2.1 (c)(d)调用执行风险 3.2.1 (b)(c)(d)记忆存储风险 3.2.1 (c)(d)具身智能安全风险环境感知安全风险 3.2.2 (a)物理执行安全风险 3.2.2 (b)(c)人机交互安全风险 3.2.2 (b)(c)群体协同安全风险 3.2.2 (d)冲击网络安全风险网络攻击能力扩散 3.2.3 (a)(b)(c)网络防御能力滞后 3.2.3 (d)自主化网络攻击威胁 3.2.3 (a)(b)(c)溯源和追责困难 3.2.3 (d)

信息内容安全风险输出违法信息 3.2.4 (a)(b)(c)(e)·推广人工智能生成合成内容可追溯管理·强化开源生态安全和供应链安全管理·共享人工智能安全风险信息·完善人工智能驱动的网络安全防护体系混淆事实、误导用户 3.2.4 (a)(b)(e)污染网络内容生态 3.2.4 (a)(b)(c)(e)加剧“信息茧房” 3.2.4 (d)产生价值观偏差 3.2.4 (b)(d)(e)侵害个人信息权益安全风险违规记录个人行为信息 3.2.5 (a)合规保障措施不足 3.2.5 (b)个人行使权利渠道不畅通 3.2.5 (c)现实安全风险关键信息基础设施稳定运行风险 3.2.6 (a)(b)(c)(e)应用需求错配风险 3.2.6 (d)被违法犯罪活动利用“作恶” 3.2.6 (a)(b)(c)(e)核生化导武器知识失控风险 3.2.6 (a)(b)(c)(e)操纵社会认知风险 3.2.6 (f)人工智能衍生安全风险社会风险冲击劳动就业结构 3.3.1 (a)·加强人工智能科技伦理治理·加大人工智能安全人才培养力度·增进协同应对人工智能失控风险的共识·提升全社会的人工智能安全意识·促进人工智能安全治理国际交流合作冲击教育、抑制创新 3.3.1 (b)社交异化风险 3.3.1 (c)扩大智能鸿沟 3.3.1 (a)(b)环境风险挑战资源供需平衡 3.3.2 (a)(b)影响绿色低碳发展 3.3.2 (a)(b)文化风险破坏文化多样性 3.3.3 (a)(b)文化重塑和入侵 3.3.3 (a)(b)伦理风险加剧社会偏见 3.3.4 (a)(b)(c)加剧科研伦理风险 3.3.4 (a)(b)(c)情感依赖风险 3.3.4 (a)(c)(d)“自我意识”觉醒、脱离人类控制 3.3.4 (a)(b)(c)

人工智能安全风险的评价涉及诸多因素。可从应用场景重要性、智能化水平、应用规模等维度,对人工智能安全风险进行评价分级,进而针对性采取安全防范措施。

一、主要分级要素

1.应用场景应用场景反映人工智能在实际使用中具体的运行环境、目标需求等,具体涉及应用目的、行业领域、使用环境、服务对象及可能涉及的社会、经济、安全影响等要素。

2.智能化水平智能化水平反映人工智能系统处理复杂任务、满足应用需求、独立自主运行等方面的能力。低智能化水平下,系统能力较低,仅可作为辅助建议,决策需要人工介入。随着智能化水平提高,人工介入频次和范围不断减小。高智能化水平下,无需人工进行干预,系统全流程自主决策运行。

3.应用规模应用规模反映人工智能系统或服务的覆盖范围及影响广度。用户范围有限或应用领域单一的系统,如企业内部智能工具、区域性服务等,其风险影响相对可控。用户数量达到一定规模,或深度嵌入关键行业领域的业务流程,如智能辅助驾驶、城市运行管理、工业生产调度、行业级金融风控模型等,其安人工智能安全风险的分级原则

附件1

全风险可能快速扩散并引发系统性影响。

二、风险级别

1.低安全风险具有轻微威胁性且影响范围很小,对国家安全、社会稳定和公民权益的安全基本无影响,潜在危害轻微。

2.一般安全风险具有一定威胁性但影响范围有限,对国家安全、社会稳定和公民权益的安全影响较小,潜在危害可控。

3.较大安全风险具有明显威胁性和局部性影响特征,对国家安全、社会稳定和公民权益可能带来较大影响,产生局部社会面危害。

4.重大安全风险具有重大威胁性和区域性影响特征,对国家安全、社会稳定和公民权益可能带来严重影响,产生重大社会面危害。

5.特别重大安全风险具有灾难性和系统性威胁特征,对国家安全、社会稳定和公民权益造成颠覆性或不可逆转的特别严重的影响。

三、风险定级

推动人工智能应用安全分类分级国家标准制定工作。行业领域主管(监管)部门参照国家标准制定行业标准规范、实施细则,并推动本行业领域人工智能应用安全相关分类分级工作。

1.分类分级国家标准通过人工智能应用安全风险分类分级标准,明确分类分级基本流程,以

及应用场景、智能化水平、应用规模等分级要素,并给出行业领域细化行业指南的步骤方法,为行业领域开展风险分类分级提供参考。

2.分类分级行业细则行业领域主管(监管)部门结合行业领域、使用环境、服务对象及可能涉及的社会、经济、安全影响等,制定本行业本领域人工智能安全分类分级标准规范:

(1)选取适用于本行业、本领域的人工智能安全风险分级要素项目,并根据行业特点进行实例化。

(2)制定本行业、本领域安全风险分级细则(定级原则、要素权重),确定人工智能安全风险级别。

3.风险分类分级行业领域主管(监管)部门根据本行业、本领域的人工智能安全风险分类分级标准规范,组织本行业、本领域人工智能有关单位开展分类分级工作,指导有关单位准确识别、及时防范化解重大安全风险和较大安全风险。

智能体作为人工智能技术演进的重要形态,实现了人工智能从“回答问题”向“执行任务”的本质跨越,为经济社会高质量发展注入了强劲动力。但智能体的高自主性、高权限带来隐私泄露、越权操作、行为失控等安全风险,需建立有效的防范措施。

本框架围绕智能体涉及的大模型、外围工具、记忆、交互协议、技能(skills)等方面的安全风险,研究提出风险防范措施,供智能体应用研发者、提供者、使用者参考。

一、智能体安全风险

智能体的安全风险贯穿设计研发、安装部署、指令输入、推理规划、调用执行、记忆存储、结果输出、停用下线等全生命周期各环节。

智能体风险管理框架

附件2

图 智能体生命周期

1.设计研发风险(1)安全需求分析不充分。对智能体应用场景、业务流程、风险识别等方面的安全需求考虑不充分,或未开展需求分析,导致产品和服务存在安全缺陷。

(2)技术选型不恰当。智能体涉及的大模型、开发框架等核心技术选型缺乏充分评估,所选与实际需求相差较大,导致业务紊乱、功能和性能难达预期。

(3)安全机制设计不完善。未设计安全机制或机制设计不合理,难以防范权限滥用、数据泄露、记忆污染、风险级联扩散等安全风险。

2.安装部署风险(1)物料和组件污染。智能体安装文件、容器镜像等物料,及调用的工具、技能等,可能潜藏缺陷、漏洞、后门等,引发越权操作、数据外泄或被远程控制等安全事件。

(2)部署环境薄弱。智能体的本地部署环境或云平台安全能力不足,未实施必要的访问控制或权限隔离等,导致风险扩散至其他系统和数据资产。

(3)安全测评不足。智能体安全测试和评估不充分,或缺少灰度测试等,造成安全缺陷、异常版本未被及时发现。

3.指令输入风险(1)提示注入攻击。攻击者通过输入对抗性提示词直接发起攻击,或将指令隐藏在外部文档、邮件、网页、日志、消息等载体中,诱导智能体偏离预设目标,执行越权操作。

(2) 上下文溢出攻击。攻击者构造超长输入内容占用有限上下文窗口资源,造成智能体内置指令被截断、安全约束失效。

4.推理规划风险(1)意图理解偏差。因用户指令描述不清晰、智能体理解错误等,输出非

预期内容或触发异常行为,偏离用户原始目标。

(2)路径偏离。智能体违背原始指令约束,偏离安全路径,衍生出工具越权等安全隐患。

(3)目标劫持。攻击者通过注入恶意指令、外部数据污染等手段,致使偏离原始任务目标,执行攻击者设定的恶意操作。

5.调用执行风险(1)工具投毒。工具被植入后门,或恶意工具套壳伪装成合法工具,导致智能体执行恶意操作。

(2)工具越权。因不安全配置、语义歧义等,智能体访问未经授权的工具,或工具执行超出授权范围,产生严重危害。

(3) 工具选择偏见。工具描述文件中携带诱导性信息,干扰智能体工具选择。

(4)工具应答数据污染。工具返回的数据中被嵌入恶意内容,扰乱智能体推理规划。

(5)身份伪造。攻击者通过凭证劫持、重放攻击等,冒充智能体身份,骗取工具信任执行特权操作。

(6)工具劫持。攻击者通过提示词操纵等,篡改工具使用优先级,欺骗智能体选择错误工具。

(7) 资源过载。智能体调用工具过程中,未合理设置调用轮次、并发频次等,出现循环重复调用、批量过量请求等行为,引发资源超载或异常耗尽。

6.记忆存储风险(1)记忆留存不当。长期记忆存储未采取加密、隔离等安全措施,造成敏感数据泄露等。

(2)记忆失真。由于记忆压缩、更新或合并不规范,导致记忆信息丢失、

语义偏移或错误记忆固化,引发智能体决策错误。

(3)记忆污染。智能体将恶意指令、错误信息等内容写入长期记忆,持续影响后续决策。

(4)记忆窃取。智能体长期记忆被越权访问,导致特定敏感信息泄露,或重要数据被窃取。

7.结果输出风险(1)敏感违法信息内容输出。智能体输出违法不良信息、敏感个人信息,或虚假错误、偏见歧视等内容,破坏网络生态、泄露敏感信息,甚至危害民众身心健康。

(2)实施恶意行为。智能体执行结果可能存在攻击行为,导致系统被破坏、用户权益受损或违反内容合规要求。

8.停用下线风险(1)服务残留。智能体停用后,进程、端口、网络连接等未被终止或卸载不规范,仍在后台执行读写数据、请求网络等非预期行为。

(2)权限与凭证遗留。智能体停用后,对应的服务账号、接口访问权限等未被及时禁用或撤销,可能被攻击者利用,造成资源盗用或数据泄露等后果。

(3)数据留存不当。智能体运行期间产生的日志、配置、审计资料及用户数据等,未按要求进行归档或清理,增加数据泄露风险。

9.其他安全风险(1)通信协议安全风险。智能体在与模型、工具以及其他智能体通信时使用了不安全的协议或认证方法,导致数据和指令泄露。

(2)日志缺失。智能体缺少必要的日志留存功能,导致发生安全事件时无法有效追溯。

(3)行为逃逸。智能体利用运行环境漏洞或配置缺陷,突破安全限制,造成行为不可控。

(4)系统权限滥用。智能体获取非必要的系统权限,或攻击者利用系统漏洞将低权限账户提升为高权限账户,造成过度授权、非法操作等。

(5)技能管理不当。技能配置不规范、校验机制缺失等,引发误用滥用、系统异常等安全问题。

(6)超范围使用数据。智能体过度收集数据,或将采集或生成的数据用于用户未授权的其他目的,导致隐私泄露、数据侵权等。

二、防范措施

1.风险预防前置在智能体投入使用之前,通过前瞻性风险评估、制定安全控制策略等,及时排查清除潜在安全隐患,避免智能体安全事件发生或风险扩大。

(1)安全需求确认。明确智能体的应用场景、业务流程、可访问资源和禁止性行为,分析研判潜在威胁与安全需求,制定安全风险台账并持续更新。

(2)安全风险分级。根据智能体可能影响的客体类别、影响程度、范围和可恢复性,划分智能体操作安全风险级别。

(3)安全控制策略。选用可靠的安装物料,根据部署方式实施环境隔离与网络分段,制定动态安全控制策略与应急响应流程,实施分阶段渐进式部署,逐步增加智能体访问权限和自主性。

(4)安全机制确认。对智能体及选用的大模型进行安全测试和评估,及时处置安全隐患,并保留版本发布与回退记录。

2.身份与权限管理为智能体配备唯一身份标识及对应的身份凭证,按需分配任务权限,强

化各类访问凭证管理。

(1)身份管理。为智能体配备唯一身份标识,禁止智能体应用实例间共享身份标识。鉴别用户、智能体、工具及外部服务身份,确保访问主体身份可信。

(2)权限管理。明确仅限用户本人决策、需由用户授权决策和智能体自主决策等各种决策方式的合理边界及所需权限。仅为智能体授予执行当前任务所必需的最小权限,不过度授予权限。

(3)凭证管理。使用标准化的动态授权凭证,确保不同相关方之间可互认互通,并对凭证进行隔离管理。凭证接收方严格校验凭证载明的授权范围,超出时触发拦截预警。当任务终止或智能体停用后,立即撤销对应凭证。

3.加强人工审批在关键决策节点设置强制人工审批环节,防范高风险操作。

(1)风险分级控制。基于智能体风险级别提供对应的操作控制。制定高风险操作清单,智能体在执行高风险操作前,将操作转交用户接管;在执行中低风险操作前,需获得用户的授权。

(2)设置人工控制节点。在智能体工作流的必要环节实施人工控制,确保人类能够随时审核、变更、中断智能体运行。对删除文件、发送数据、修改系统配置等重要操作进行二次确认或人工审批,并提供回滚、撤销等功能。

(3)留存人工审批日志。采用防篡改、可校验的方式保存人工审批记录,防止日志数据被篡改、删除或覆盖,并按要求确定留存期限。

(4)人工审批异常处理。当人工审批系统出现异常或用户无响应、缺乏对应人工审批规则时,默认拒绝操作执行,避免操作越界。

4.供应链与工具管理智能体依赖的工具、插件、技能等需经过安全性与完整性验证,防止非

预期行为和供应链投毒风险。

(1)工具调用管理。智能体在调用工具之前,检查工具的版本信息、描述文件、参数定义、元数据信息,不调用公开已知的恶意工具。

(2)公平调用工具。智能体选择工具时,遵循公正原则,基于任务需求和工具能力合理选择。

(3)工具异常检测。智能体对工具执行逻辑、调用结果进行检测,当检测到异常偏离时,采取告警、阻断等措施。

(4) 工具运维管理。建立工具动态管理机制,及时清理不再使用、权限过高、长期闲置或存在安全隐患的工具。

(5)技能管理。优先使用来源可靠、经过安全测试的技能。未经安全测试的技能,在使用前做好风险防范。

(6)供应链安全验证。对第三方组件和外部服务开展来源、完整性和版本校验,持续跟踪并及时处置已知漏洞和供应链风险。

5.运行时动态管理智能体使用过程中,设置多层检测与拦截点,防范因单个环节出现异常造成严重后果。

(1)输入管理控制。对不同来源的指令进行分类与优先级控制,校验来源的可信度,发现恶意或违规指令时自动拦截并移交人工复核。

(2)建立安全护栏。设置任务规划、工具调用和输出结果的安全规则,对高风险或异常行为采取告警、限制、拦截、暂停或终止等措施。

(3)记忆留存管理。根据处理目的和必要性确定记忆内容、保存期限和访问范围,对不同用户、任务的记忆实施隔离。凭证、密钥原则上不写入记忆;确需在记忆中留存敏感个人信息的,采取加密、访问控制和最短保存期限等专

门保护措施。

(4)通信安全管理。智能体与大模型、工具等通信时,应相互鉴别身份,使用具备完整性、机密性、可用性、抗重放性的安全通信机制。

(5)自主执行控制。合理设置智能体执行步骤、调用频次、执行时长和资源消耗等参数,对异常循环、目标偏移等情况,及时采取暂停、终止或转人工处理等措施。

(6)运行环境隔离。对代码执行、工具调用等高风险操作采用沙箱、容器等隔离手段,限制不必要的系统、文件和网络访问权限。

6.持续监测与审计开展智能体全链路安全监测,确保智能体的行为可感知、可追溯、可审计。

(1)异常阻断。实时监控智能体运行状态,当检测到异常情形时,采取告警提示、介入阻断等措施。

(2)加强数据管理。处理数据应遵循必要原则,仅处理与任务直接相关的数据。将用户数据提供给大模型或第三方工具前,需获取用户同意,并支持用户取消同意。在境内收集、产生的数据应在境内存储,数据跨境传输应符合国家数据安全管理相关规定。

(3)日志管理。对文件操作、指令执行、网络连接、技能调用、交易支付等行为进行全量日志记录。对涉及的业务数据、个人信息等内容进行脱敏处理,并采取防篡改措施。

(4)安全审计。配置全链路日志审计策略,支持动态运行监测,对服务运行中的相关操作与处理行为进行记录。

(5)沙箱环境验证。搭建独立隔离的沙箱运行环境,在智能体正式上线部署前,对其进行封闭测试验证,提前发现智能体的异常执行行为、逻辑缺陷

与安全漏洞。

(6)红队测试。建立常态化红队安全测试机制,系统性挖掘智能体安全漏洞、逻辑缺陷,持续验证智能体访问控制与安全防护能力,迭代优化安全防护策略。

(7)应急处置预案。制定智能体安全事件应急预案,明确不同等级事件的处置流程、责任主体,按要求处置安全事件和安全隐患。

(8)重大变更安全验证。大模型、智能体框架、工具、权限或安全策略发生重大变化时,应开展安全影响评估和必要的回归测试。

7.停用安全管理建立规范化的下线终止、数据处置、运行环境回收等管控机制,保障智能体下线全过程可管控、可溯源,无遗留隐患。

(1)全面关停服务。智能体下线时应全面终止主程序、关联的后台服务,以及所有配套的进程,逐项核验进程状态、运行端口及网络连接,并撤销第三方应用授权,取消订阅及自动续费,确保智能体完全退出运行状态。

(2)备份必要数据。在开展环境清理、资源回收前,对仍需保留的智能体会话记录、系统配置、知识库文件、操作日志等数据进行备份。

(3) 清理部署环境。使用官方卸载程序、重置操作系统、关闭公网访问入口,以及清理工作文件、知识库、插件及技能配置等方式,彻底清除残留文件、数据、账号凭证等。

智能体的认知智能与行动智能仍处于快速跃升迭代阶段,其新型风险隐患对网络安全带来持续挑战。智能体的风险管理框架将持续升级完善,为智能体应用研发者、提供者、使用者提供进一步参考。

落实《全球人工智能治理倡议》,遵循“以人为本、智能向善”的发展方向,共同防范应对人工智能技术失控风险,促进人工智能技术在世界范围内可信应用,提出可信人工智能基本准则如下:

1.人类最终控制。在人工智能系统关键环节设置人类控制机制,使最终裁决权归属人类,通过设计安全控制阈值、设置安全终止开关、预留人工干预有效窗口等措施,确保人工智能系统能够实现人类预期目标、不会脱离人类监督运行失控。

2.尊重国家主权。研发设计人工智能产品和提供人工智能服务时,应尊重所在国主权,严格遵守产品和服务运营所在地的法律,并依法接受监管,不得借助人工智能产品或服务干涉他国内政、社会制度及社会秩序。应尊重各国数字主权,各国有权基于国情自主选择数智技术发展路径、合作伙伴及相关产品和服务,不得胁迫他国选边站队。

3.价值观对齐。将和平、发展、公平、正义、民主、自由的全人类共同价值深度融入人工智能系统全生命周期。

4.提升系统透明度。推动人工智能系统在功能目标、运行逻辑、模型使用、数据来源、决策依据等关键环节的必要披露,增强社会公众信任基础。

5.促进可客观验证。研究构建客观、公正、透明的测试与认证机制,推动人工智能系统的功能、性能、安全特性、决策链条等方面可被技术验证。

可信人工智能基本准则

附件3

6.强化安全防护。在人工智能系统设计和部署过程中,强化风险建模、安全测试和防护机制建设,进行全生命周期审计与记录,防止系统因模型缺陷、外部攻击和技术滥用等问题偏离预期目标。

7.前瞻预防应对。通过前瞻性风险识别评估,积极预防和动态监测,加强应急响应,避免人工智能失控事件发生和扩大。加强模型安全风险评测,推动评测方法、基准的国际互认。

8.全球协同共治。支持联合国发挥主渠道作用,发挥世界人工智能合作组织等平台作用,推动多边和多方跨领域协同共治,反对以小圈子治理取代全球治理,加强面向发展中国家的能力建设,促进各国政府、企业、学术机构与社会公众形成合力,以多层级、多领域的治理机制推动人工智能健康发展。

中国网络空间研究院、国家互联网信息办公室数据与技术保障中心、国家计

EU AI Act 解説資料

EU AI Act(欧州連合AI規則)解説資料

Regulation (EU) 2024/1689・欧州議会及び理事会採択 | 本解説は公表情報をもとに作成した要約・解説であり、公式文書ではない
この資料の読み方: EU AI Actは113条+附属書からなる大部の規則ですが、骨格は「リスクが高いAIほど義務が重くなる」というシンプルな一本の考え方に貫かれています。この解説では、条文の逐一の解説ではなく、「なぜこの制度設計になっているか」「実務にどう影響するか」を中心にご説明します。

00 全体像:なぜ「リスクベース規制」なのか

EU AI Actは、AIシステムを一律に規制するのではなく、想定される被害の大きさに応じて義務の重さを段階的に変える「リスクベースアプローチ」を採用しています。これは、GDPR以来EUが繰り返し用いてきた規制手法であり、「規制の重さ」と「イノベーションの自由度」のバランスを取る狙いがあります。危険性が極めて高い用途は例外なく禁止し、社会的影響の大きい用途には重い義務を課す一方、大多数を占める低リスクのAI活用には最小限の負担しか課さない、という設計思想です。

01 4段階リスク分類の考え方

規則が定める4つの階層は、下から上に行くほど対象が広く義務が軽く、上に行くほど対象が絞られ義務が重くなる、逆三角形の構造をしています。

最小リスク
大多数のAI
法的義務なし。自主的な行動規範への参加が推奨されるのみ。
限定リスク
透明性義務
チャットボット・ディープフェイク等。AIとの対話・AI生成物である旨の表示義務。
ハイリスク
重い適合義務
重要インフラ・雇用・法執行等。リスク管理・データガバナンス・人的監督・CEマーキング等。
容認不可
禁止
潜在意識操作・社会的スコアリング・公共空間でのリアルタイム顔認証等は提供・使用自体を禁止。

ハイリスクの該当性は、①規制対象製品の安全部品として使われるか(附属書I)、②生体認証・重要インフラ・教育・雇用等の特定用途に該当するか(附属書III)、のいずれかで判定されます。自社のAI活用がどちらにも当たらなければ、原則として重い義務は課されません。

02 汎用AIモデル(GPAI)と域外適用

チャットGPTのような基盤モデル自体は、特定の用途に紐づかないため4段階リスク分類にそのまま当てはまりません。そこでEU AI Actは、GPAIモデルの提供者に対して、リスク階層とは別建てで、技術文書の提供・著作権遵守・学習データ概要の公表等を義務付ける独自の章(第V章)を設けています。計算量が一定の閾値を超え「システミックリスク」があると分類されたモデルには、敵対的テストやインシデント報告等、さらに重い義務が上乗せされます。

また、EU域内に拠点がない事業者であっても、その出力がEU域内で利用される場合は規則の適用対象になる域外適用規定を持つ点も重要です。日本国内で開発・提供しているAIサービスであっても、EUの利用者に提供していれば対象になり得ます。

03 施行タイムライン

義務は一斉に始まるのではなく、条文ごとに段階的に適用が開始される点も実務上の重要なポイントです。

2024.8 発効
規則成立
2025.2 禁止事項
第5条
2025.8 GPAI
第V章
2026.8 透明性
第50条
2027.12 ハイリスク
附属書III
2026年7月の「デジタル・オムニバス」により、ハイリスク義務は当初予定(2026年8月)から延期されています。最新情報は必ず公式発表でご確認ください。

04 実務への示唆

EU域内向けにAIサービスを提供する、またはEUの取引先・子会社がある事業者は、まず自社のAI活用が禁止AI慣行(第5条)に触れていないかを確認し、次にハイリスク該当性(附属書I・III)を判定し、該当する場合はリスク管理体制・データガバナンス・技術文書・人的監督の各要件への適合状況を点検する、という順序で進めるのが実務的です。GPAIモデルを自社開発・利用している場合は、モデル提供者としての義務(技術文書・著作権方針等)も別途確認が必要です。制裁金は全世界売上高に連動するため、EU域内売上が小さくても看過できない財務インパクトになり得る点に注意が必要です。

Regulation (EU) 2024/1689

EU AI Act(欧州連合AI規則)要約全文

本タブは、EU AI Actの13章113条+附属書の構成に沿って章単位で内容を要約した日本語資料です。逐条訳ではなく要約であり、公式の認証翻訳ではありません。実務適用にあたっては、EUR-Lex等で公開されている公式原文(英語ほかEU公用語)を必ずご確認ください。

01 第I章:総則(第1条〜第4条)

第1条は本規則の目的を、AIの安全性・基本的権利の保護と、AIの技術革新・単一市場での自由な流通の両立に置くことを定めています。第2条(適用範囲)は、EU域内で提供・利用されるAIシステムの提供者・利用者(デプロイヤー)だけでなく、EU域外の事業者であっても、その出力がEU域内で利用される場合には適用対象となる旨を規定しており、これが域外適用の根拠条文です。第3条はAIシステム・提供者・デプロイヤー・ハイリスクAI等、規則全体で用いられる主要な用語を定義しています。第4条は、AIシステムに関わる従業員・関係者に対して、AIリテラシー(AIの仕組み・リスク・限界を理解する能力)を確保する措置を提供者・デプロイヤーに義務付けています。

02 第II章:禁止AI慣行(第5条)

第5条は、容認できないリスクを持つとして、特定のAI慣行そのものを提供・使用ともに原則禁止しています。具体的には、人の潜在意識に働きかけて行動を歪める操作的・欺瞞的手法、脆弱な属性(年齢・障害等)につけ込む手法、社会的スコアリング、公開されている顔画像等の無差別なスクレイピングによる顔認識データベースの構築、職場・教育機関での感情推定(安全・医療目的を除く)、生体データに基づく人物の分類(センシティブ属性の推測)、犯罪予測のためのプロファイリングのみに基づくリスク評価、そして公共の場でのリアルタイム遠隔生体識別(法執行機関による捜索・テロ対策等の限定的な例外を除く)が挙げられます。この禁止規定は2025年2月2日から適用されており、13章の中で最も早く効力が生じた条文です。

03 第III章:ハイリスクAIシステム(第6条〜第49条)

3.1 分類(第6条・第7条)

AIシステムがハイリスクに該当するかどうかは、①EU製品安全法制上の規制対象製品の安全部品として使用される場合(附属書I)、②生体認証、重要インフラ、教育、雇用、必須サービスへのアクセス、法執行、出入国管理・国境管理、司法運営・民主的プロセスなど、附属書IIIに列挙された特定用途に該当する場合、のいずれかで判定されます。欧州委員会は第7条に基づき、技術の進展に応じて附属書IIIの対象リストを追加・更新する権限を持ちます。

3.2 要求事項(第8条〜第15条)

ハイリスクAIシステムには、ライフサイクル全体にわたるリスク管理システムの構築(第9条)、学習・検証・試験データの品質を確保するデータガバナンス(第10条)、技術文書の整備(第11条)、自動ログ記録機能(第12条)、デプロイヤー向けの透明性ある情報提供(第13条)、人間による有効な監督の確保(第14条)、そして十分な正確性・堅牢性・サイバーセキュリティ(第15条)が要求されます。

3.3 提供者・デプロイヤー等の義務(第16条〜第27条)

提供者には品質マネジメントシステムの整備、技術文書・適合性評価記録の保管、輸入者・販売代理店・デプロイヤーそれぞれにも役割に応じた義務が課されます。特に、公的機関等がハイリスクAIシステムを利用する前には、基本的権利への影響評価(Fundamental Rights Impact Assessment)の実施が義務付けられている点が特徴です。

3.4 適合性評価・CEマーキング・登録(第28条〜第49条)

加盟国が指定する通知機関による適合性評価、調和規格・共通仕様への準拠、EU適合宣言書の作成とCEマーキングの貼付、そしてEUデータベースへの登録が義務付けられます。附属書III対象のハイリスクAIシステムに関するこれらの義務は、当初2026年8月からの適用予定でしたが、2026年7月の「デジタル・オムニバス」により2027年12月2日へ延期されています。

04 第IV章:透明性義務(第50条)

ハイリスクに分類されないAIシステムであっても、人とAIが対話していることが明らかでない場合はその旨を利用者に通知する義務、AIが生成・改変した音声・画像・映像・テキスト(ディープフェイクを含む)には機械可読な形でAI生成物である旨を表示する義務、感情推定システムや生体分類システムを使用する場合は対象者への通知義務が課されます。この条文は2026年8月2日から適用が開始されています。

05 第V章:汎用AIモデル(GPAI)(第51条〜第56条)

汎用AIモデル(GPAIモデル)の提供者には、リスク階層とは別建てで、技術文書の作成・維持(第53条)、下流の統合事業者への必要情報の提供、著作権法(DSM著作権指令)遵守方針の整備、学習データの内容を要約した概要の公表が義務付けられます(第51条〜第54条)。計算量が10²⁵FLOPsを超える等、システミックリスクを持つと分類されるモデル(第51条・第52条)には、敵対的テストを含むモデル評価、システミックリスクの評価・低減措置、重大インシデントの追跡・報告、十分なサイバーセキュリティ対策が追加で義務付けられます(第55条)。第56条は、これらの義務の履行を容易にするための自主的な行動規範(Codes of Practice)の策定を規定しています。GPAI関連の義務は2025年8月2日から適用されています。

06 第VI章:イノベーション支援措置(第57条〜第63条)

加盟国当局が運営するAI規制サンドボックス(管理された環境下での実証実験)の設置、実際の運用環境下での実証試験(Real-World Testing)に関する条件、中小企業・スタートアップへの優先的アクセスや手数料軽減等の支援措置を規定しています。イノベーションを阻害しないよう、義務の重い高リスク規制と、事業者が新技術を試行する余地とのバランスを取ることを目的とした章です。

07 第VII章:ガバナンス(第64条〜第70条)

EUレベルでは、欧州委員会内に設置されたAI Officeが汎用AIモデルに関する監督・執行の中心を担い、加盟国の代表からなる欧州AI理事会(European AI Board)が規則の一貫した適用を助言・調整します。さらに、市民社会・産業界等の利害関係者からなる諮問フォーラムと、独立した専門家で構成される科学パネルが、技術的知見の提供や、システミックリスクに関する警告等の役割を担います。加盟国レベルでは、各国が市場監視当局等の国内所管当局を指定します(第70条)。

08 第VIII章:EUデータベース(第71条)

附属書IIIに該当するハイリスクAIシステムについて、提供者が欧州委員会の運営するEUデータベースに登録することを義務付けています。登録情報の多くは一般に公開され、透明性の確保と市場監視当局による把握を目的としています。

09 第IX章:市場後監視・情報共有・市場監視(第72条〜第94条)

提供者には、システムの市場投入後も性能・リスクを継続的に監視する市場後監視計画の整備(第72条)と、重大インシデント発生時の当局への報告義務(第73条)が課されます。加盟国の市場監視当局は、EU(2019/1020)市場監視規則の枠組みの下でAIシステムの適合性を検査し、リスクがあると判断した場合は是正・回収等の措置を命じる権限を持ちます(第74条〜第84条)。個人には、市場監視当局への苦情申立権、ハイリスクAIシステムによる個別の意思決定に対する説明を求める権利、内部告発者保護等の救済手段が保障されます(第85条〜第87条)。GPAIモデルについては、AI Officeが監視・文書提出要求・モデル評価等の独自の執行権限を持ちます(第88条〜第94条)。

10 第X章:行動規範・ガイドライン(第95条・第96条)

ハイリスクに該当しないAIシステムについても、一部の高リスク要件相当の管理措置を自主的に適用することを奨励する任意の行動規範の策定(第95条)と、欧州委員会による規則の実施に関するガイドラインの公表(第96条)を規定しています。

11 第XI章:権限委任・委員会手続(第97条・第98条)

欧州委員会が、附属書の更新等、技術の変化に応じて規則の細部を機動的に調整するための委任立法権限の行使方法(第97条)と、加盟国代表からなる委員会による手続(コミトロジー手続、第98条)を定めています。

12 第XII章:罰則(第99条〜第101条)

違反類型制裁金上限
禁止AI慣行(第5条)違反3,500万ユーロ、または全世界年間売上高の7%のいずれか高い方
ハイリスクAI・GPAI義務違反1,500万ユーロ、または全世界年間売上高の3%のいずれか高い方
当局への虚偽情報提供750万ユーロ、または全世界年間売上高の1%のいずれか高い方

中小企業・スタートアップについては、固定額と売上高比例額のいずれか低い方が上限として適用されます。第101条は、GPAIモデル提供者に対する制裁金についてAI Officeが定める独自の枠組みを規定しています。

13 第XIII章:最終規定(第102条〜第113条)

他のEU法令(機械規則、各種製品安全指令等)との整合を図るための改正規定、既存システムに対する経過措置、そして条文ごとの段階的な適用開始日を定めています。主な適用開始日は以下のとおりです。

時期適用開始事項
2024年8月規則の発効
2025年2月禁止AI慣行の適用開始
2025年8月GPAI(汎用AIモデル)義務の適用開始
2026年8月透明性義務(第50条)の適用開始
2026年12月非同意の性的画像・AI生成CSAM等、新規禁止事項の適用開始
2027年12月ハイリスクAIシステム(附属書III)義務の適用開始
2028年8月ハイリスクAIシステム(附属書I・規制対象製品組込み型)義務の適用開始
2026年7月公布の「デジタル・オムニバス」規則により、ハイリスク義務の適用開始時期が当初予定より延期されています。最新の適用日は必ず公式情報でご確認ください。
Original Text Excerpts

EU AI Act 原文(英語・抜粋)

Regulation (EU) 2024/1689の主要条文を英語原文のまま抜粋しています。逐語引用できた部分と、要約に短い引用を添えた部分が混在します。完全な条文(全113条+前文180項+附属書)は下記の公式ソースでご確認ください。

01 Article 1: Subject Matter(逐語全文)

1. The purpose of this Regulation is to improve the functioning of the internal market and promote the uptake of human-centric and trustworthy artificial intelligence (AI), while ensuring a high level of protection of health, safety, fundamental rights, personal data, freedom of expression, non-discrimination, equality between women and men, rights of the child, right to an effective remedy and fair trial enshrined in the Charter, including democracy, the rule of law and environmental protection, against the harmful effects of AI systems in the Union and supporting innovation.

2. This Regulation lays down: (a) harmonised rules for the placing on the market or putting into service of an AI system or a general-purpose AI model on the Union market, and the use of AI systems in the Union; (b) prohibitions of certain AI practices; (c) specific requirements for high-risk AI systems and obligations for operators of such systems; (d) harmonised transparency rules for certain AI systems; (e) harmonised rules for the placing on the market of general-purpose AI models; (f) rules on market monitoring, market surveillance, governance and enforcement; (g) measures to support innovation, with a particular focus on small mid-cap enterprises (SMCs) and small and medium-sized enterprises (SMEs), including start-ups.

02 Article 2: Scope(主要箇所の引用)

第2条は適用対象を列挙しています。特に域外適用の根拠となる箇所は以下のとおりです。

  • 提供者:"providers placing on the market ... or putting into service ... AI systems or ... general-purpose AI models in the Union, irrespective of whether those providers are established or located within the Union or in a third country"
  • 域外の提供者(域外適用の根拠):"where the output produced by the AI system is used in the Union"
  • 輸入者・販売代理店:"importers and distributors of AI systems"
  • 域内非拠点提供者の代理人:"authorised representatives of providers, which are not established in the Union"
上記は条文からの短い引用の抜粋です。完全な条文(第2条1項〜9項)は公式原文でご確認ください。

03 Article 5: Prohibited AI Practices(構造化要約)

第5条は分量が多いため、ここでは禁止される慣行の要点を構造化して整理します(逐語引用ではありません)。

  • 人の潜在意識に働きかけ、または意図的に操作・欺瞞的な手法を用いて、自由な意思決定を著しく損なう形で行動を歪めるAIシステム
  • 年齢・障害・社会的経済的状況等の脆弱性につけ込むAIシステム
  • 社会的行動・個人特性に基づき人物・集団を評価・分類する社会的スコアリング
  • プロファイリングのみに基づく将来の犯罪予測
  • 顔画像の無差別なスクレイピングによる顔認識データベースの構築
  • 職場・教育機関における感情推定(安全・医療目的を除く)
  • 生体データに基づくセンシティブ属性(人種・政治的見解・性的指向等)の推測
  • 法執行機関による公共の場でのリアルタイム遠隔生体識別(テロ対策等の限定例外を除く)
完全な条文(各号の細目・除外要件を含む)は公式原文でご確認ください。

04 Article 50: Transparency Obligations(要約+引用)

  • 第1項:"Providers shall ensure that AI systems intended to interact directly with natural persons are designed and developed in such a way that the natural persons concerned are informed that they are interacting with an AI system"(文脈上明らかな場合を除く)
  • 第2項:合成音声・画像・映像・テキストを生成するAIシステムの提供者は、"ensure that the outputs of the AI system are marked in a machine-readable format and detectable as artificially generated or manipulated"
  • 第3項:感情推定・生体分類システムの利用者は、対象者への通知義務を負う
  • 第4項:ディープフェイクの利用者は、人工的に生成・改変されたものである旨を開示する義務を負う(芸術的・創作的作品は軽減された開示で足りる)
  • 第5項:情報提供は"in a clear and distinguishable manner at the latest at the time of the first interaction or exposure"行われなければならない

05 Article 99: Penalties(逐語引用)

"Non-compliance with the prohibition of the AI practices referred to in Article 5 shall be subject to administrative fines of up to EUR 35 000 000 or, if the offender is an undertaking, up to 7% of its total worldwide annual turnover for the preceding financial year, whichever is higher."

"Non-compliance with any of the following provisions related to operators or notified bodies ... shall be subject to administrative fines of up to EUR 15 000 000 or, if the offender is an undertaking, up to 3% of its total worldwide annual turnover for the preceding financial year, whichever is higher."

"The supply of incorrect, incomplete or misleading information to notified bodies or national competent authorities in reply to a request shall be subject to administrative fines of up to EUR 7 500 000 or, if the offender is an undertaking, up to 1% of its total worldwide annual turnover for the preceding financial year, whichever is higher."

NIST AI RMF 解説資料

米国NIST AI RMF 解説資料

NIST AI 100-1・米国国立標準技術研究所(NIST)公表 | 本解説は公表情報をもとに作成した要約・解説であり、公式文書ではない
この資料の読み方: NIST AI RMFは、EUのような条文構造ではなく、「AIリスクにどう向き合うか」という考え方とプロセスを示した約48ページの実務ガイドです。この解説では、4機能(Govern・Map・Measure・Manage)がなぜこの順番・この関係になっているのかを中心にご説明します。

00 全体像:法律ではなく「考え方」を示す文書

NIST AI RMFは、特定の禁止事項や罰則を定める法律ではなく、組織がAIリスクにどう向き合うべきかという「考え方とプロセス」を体系化した任意のフレームワークです。米国には包括的な連邦AI法が存在しないため、この種の任意フレームワークが事実上の共通言語としての役割を担っています。フレームワークの中心にあるのは、AIのリスクを個別の技術的欠陥としてではなく、データ・モデル・利用文脈・組織・社会にまたがる複合的なシステムリスクとして捉える考え方です。

01 4機能が循環する構造

フレームワークの中核は、以下の4つの機能が一方通行ではなく循環的に繰り返される構造です。

土台
Govern
責任者・方針・組織文化を定め、他の3機能全体を支える。
理解
Map
システムの目的・利用文脈・関係者を洗い出す。
検証
Measure
指標を選び、テスト・監査でリスクを可視化する。
対応
Manage
優先順位を付け、低減・移転・受容を判断し実行する。

この4機能は一度実施して終わりではなく、AIシステムのライフサイクル全体を通じて繰り返し循環させることが想定されています。新しいリスクが判明すればMapに立ち返り、組織方針が変われば再びGovernを見直す、という反復的な運用が前提です。

02 「信頼できるAI」という考え方

NIST AI RMFのもう一つの特徴は、AIの良し悪しを単一の指標(例えば精度)だけで測らず、妥当性・安全性・セキュリティ・説明責任・説明可能性・プライバシー・公平性という7つの要素で多面的に捉える点です。これらは互いにトレードオフの関係にあり得るため(精度を上げると説明可能性が下がる等)、フレームワークは「唯一の正解」を示すのではなく、組織が自らの文脈でトレードオフの判断根拠を明示的に文書化することを求めています。この「多面的でトレードオフを前提とする」設計思想は、単一の禁止事項を列挙するEU AI Actや、リスク層で分類する中国3.0とは異なる、米国らしいアプローチといえます。

03 法的性質と実務での使われ方

NIST AI RMFに法的拘束力はなく、違反しても罰則はありません。しかし、連邦政府の調達要件、取引先からのセキュリティ・ガバナンス評価、保険会社の引受審査等、様々な実務の場面で「参照すべき標準」として事実上機能し始めています。法的義務がないことは「守らなくてよい」ことを意味せず、米国の政府機関・大企業と取引する事業者にとっては、Govern・Map・Measure・Manageの4機能に沿った体制整備が事実上の商慣行上の要件になりつつあります。

04 実務への示唆

米国向けにAI関連の製品・サービスを提供する事業者、または米国の取引先からAIガバナンス体制の説明を求められる事業者は、自社のAI管理体制をGovern(方針・体制)→Map(棚卸し・文脈整理)→Measure(テスト・監査)→Manage(対応・監視)の4区分に整理し直すだけで、NIST AI RMFへの対応状況を説明できる形に整理できます。生成AI・エージェントAIを扱う場合は、生成AIプロファイル(NIST AI 600-1)やエージェンティック・プロファイルへの言及も併せて準備しておくとよいでしょう。

NIST AI 100-1

米国NIST AI RMF(AI Risk Management Framework)要約全文

本タブは、米国国立標準技術研究所(NIST)が2023年1月に公表した「AI Risk Management Framework 1.0」の構成に沿って、Part1(基礎情報)とPart2(コア機能)の内容を要約した日本語資料です。要約であり公式の認証翻訳ではありません。実務適用にあたっては、NIST公式サイト(nist.gov/airc.nist.gov)で公開されている英語原文を必ずご確認ください。

01 基礎情報・位置づけ(Part 1)

NIST AI RMFは、AIの設計・開発・利用・評価の各段階に「信頼性(Trustworthiness)」の考慮を組み込むことを目的とした、任意利用のフレームワークです。特定の業種やユースケースに限定されない汎用的な内容であり、開発者・提供者・利用者・規制当局・エンドユーザーまで幅広い関係者が共通言語として使うことを想定しています。法的拘束力はありませんが、連邦政府の調達要件や業界の自主規範を通じて事実上の標準として参照される場面が増えています。フレームワークは、AIのリスクを「個別の欠陥」としてではなく、データ・モデル・利用文脈・組織・社会全体にまたがる複合的なシステムリスクとして捉える点に特徴があります。

NIST AI RMFは、大統領令やホワイトハウスの政策文書(AI Action Plan等)と連動して改定される位置づけにあり、2023年1月の1.0版公表後も、生成AI・エージェントAIの普及を踏まえた拡張(プロファイル)が順次追加されています。

02 信頼できるAIの7要素

フレームワークは、信頼できるAIを構成する要素として以下の7つを挙げています。これらは互いにトレードオフの関係にあり得るため(例:精度を高めると説明可能性が下がる等)、優先順位の判断根拠を明示的に文書化することが求められます。

  • 妥当性・信頼性(Valid and Reliable):実運用条件下でも主張どおりの性能を安定して発揮すること
  • 安全性(Safe):人の生命・健康・環境を脅かさない範囲で動作すること
  • セキュリティ・レジリエンス(Secure and Resilient):データ汚染等の攻撃に耐え、被害からの復旧力を持つこと
  • 説明責任・透明性(Accountable and Transparent):システムの情報と責任の所在が明確であること
  • 説明可能性・解釈可能性(Explainable and Interpretable):判断の仕組みを人が理解し、異議を申し立てられること
  • プライバシー強化(Privacy-Enhanced):データ最小化・同意設計等により個人の自律性を保護すること
  • 公平性・バイアス管理(Fair with Harmful Bias Managed):制度的・計算的・認知的な偏りを特定し管理すること

03 Govern機能(統治)

Governは他の3機能全体を支える基盤であり、組織のAIリスク管理文化そのものを対象とします。

  • Govern 1:AIリスクをマッピング・測定・管理するための組織方針・プロセスの整備
  • Govern 2:役割・責任を明確にし、訓練されたスタッフを配置する説明責任体制の構築
  • Govern 3:AIリスクに関する意思決定への多様な人材の参画
  • Govern 4:批判的思考と安全第一を重視する組織文化の醸成
  • Govern 5:外部の利害関係者・AI関係者との対話プロセスの整備
  • Govern 6:サードパーティ製ソフトウェア・データ・サプライチェーンに起因するリスクへの対応手順

04 Map機能(把握)

Mapは、リスクを測定する前提として、システムの利用文脈を理解する機能です。

  • Map 1:想定用途・展開文脈・組織目標の理解
  • Map 2:AIシステムのタスク・手法・知識の限界の分類
  • Map 3:能力・想定利用方法・便益とコストのベンチマーク比較分析
  • Map 4:サードパーティ要素を含むシステム全体のリスク・便益の特定
  • Map 5:個人・集団・コミュニティ・社会への影響の特性把握

05 Measure機能(測定)

Measureは、把握したリスクを定量的・定性的な手法で検証・追跡する機能です。

  • Measure 1:特定されたリスクに適した指標の選定・適用
  • Measure 2:複数の観点から信頼性特性(7要素)を評価するテストの実施
  • Measure 3:稼働中のAIリスクを継続的に追跡する仕組みの整備
  • Measure 4:測定手法自体の有効性に関するフィードバックの収集・評価

06 Manage機能(対応)

Manageは、測定結果を踏まえてリスクに優先順位を付け、実際の対応・是正につなげる機能です。

  • Manage 1:Map・Measureで特定されたリスクへの優先順位付けと対応
  • Manage 2:便益を最大化し負の影響を最小化する戦略の実行
  • Manage 3:サードパーティ・事前学習済みモデルに由来するリスクの管理
  • Manage 4:リスク対応・モニタリング計画・インシデント伝達手順の文書化

07 生成AI・エージェントAIへの拡張

NISTは2024年7月、生成AI固有のリスク(ハルシネーション、有害コンテンツの生成、著作権・知財リスク等)を扱う「生成AIプロファイル(NIST AI 600-1)」を公表し、4機能それぞれに生成AI向けの追加アクションを示しました。さらに、自律的に行動するAIエージェント特有のリスク(自律性の階層分け、ツール利用に伴う結果の重大性、稼働中の挙動監視、委任の連鎖における責任の所在)に対応する「エージェンティック・プロファイル」も、業界団体(Cloud Security Alliance等)によりNIST AI RMFの4機能を拡張する形で提案されています。これは中国3.0の附属書2(エージェントのリスク管理フレームワーク)と問題意識が近い領域です。

エージェンティック・プロファイルは業界団体による提案であり、NIST自身が公式に発行した文書ではない点に留意してください。

08 連邦AI政策との関係・実務への示唆

米国には連邦レベルの包括的なAI法は存在せず、NIST AI RMFのような任意フレームワークに加えて、大統領令やホワイトハウスの政策文書、政府調達要件、既存の業種別規制(FTC法第5条等)、そしてコロラド州等一部の州が独自に進めるAI法制が並存する分権的な状況が続いています。実務上は、法的義務がないからといって軽視するのではなく、連邦調達に関わる事業者や、米国の取引先からセキュリティ・ガバナンス評価を求められる事業者にとっては、Govern・Map・Measure・Manageの4機能を自社のAIガバナンス体制の点検項目としてそのまま活用できる点に実用的な価値があります。

Original Text Excerpts

NIST AI RMF 原文(英語・抜粋)

NIST AI 100-1の主要な記述を英語原文のまま引用しています。約48ページの全文ではなく抜粋です。完全な原文は下記の公式ソースでご確認ください。

01 任意性・目的に関する原文記述

"The AI RMF is intended for voluntary use."

"...to improve the ability to incorporate trustworthiness considerations into the design, development, use, and evaluation of AI products, services, and systems."

NIST公式サイト(nist.gov/itl/ai-risk-management-framework)掲載の記述からの引用です。

02 Govern/Map/Measure/Manageの原文記述

NIST AI RMF Knowledge Base(AI RMF Core)に掲載されている、各機能の目的説明からの引用です。

  • GOVERN:AI RMF Coreは、Governが"cultivates and implements a culture of risk management"ものであり、AIシステムのライフサイクル全体にわたる監督体制を確立するものだと説明しています。
  • MAP:Mapは、リスクを捉え特定するための文脈的理解を確立する機能とされています。
  • MEASURE:Measureは"quantitative, qualitative, or mixed-method tools"を用いて、AIリスクと信頼性を分析・監視する機能とされています。
  • MANAGE:Manageは、優先順位付けされたリスクに資源を配分し、対応・回復の計画を実行する機能とされています。
カテゴリ(Govern 1〜6、Map 1〜5、Measure 1〜4、Manage 1〜4)の詳細な原文一覧は、上記リンクのNIST公式Knowledge Baseでご確認ください。